代替プロテイン

オランダ、培養肉の承認前試食の実施を認める 年内に試食会実施へ

 

オランダ政府は今月5日、限られた条件下において、培養肉・培養シーフードの試食がまもなく可能になることを発表した

オランダは培養肉の先駆的地域でありながら、欧州における新規食品規制により現在も培養肉の販売・消費は禁止されている。この規制は培養肉の試食にも適用されてきた。

オランダを代表する培養肉企業Meatableモサミートは、オランダ政府、業界の代表HollandBIOと共に培養肉の試食を可能にするための行動規範を作成した。国家成長基金計画を実施するために設立されたCellular Agriculture Netherlandsが、行動規範の実施に責任を負う。

モサミートは自社のリンクトインで、政府と培養肉業界が培養肉試食の実施方法について、合意を締結したことを発表した

この合意により、オランダは欧州で初めて培養肉の承認前試食を認めた国となった。rtlnieuwsの報道によると、今年秋にも最初の試食会が実施される予定だという。

これは、オランダ政府が昨年5月、細胞農業エコシステムの構築を支援するために6000万ユーロ(当時約82億円)の国家成長基金を投じたニュースに続くものとなる。

培養肉発祥の地オランダ

出典:Mosa Meat

オランダにおける培養肉の歴史は1950年代にさかのぼる。

研究者のWillem van Eelen氏は1950年代、体外で肉を培養するというアイディアを思いつき、1997年に特許を出願し、培養肉開発の先駆者となった。Eelen氏はその後、オランダにおける政府後援のコンソーシアムを通じて、培養肉生産の実現可能性を明らかにするチームを結成した。チームにはモサミートのPeter Verstate氏マーク・ポスト教授が含まれていた。

同コンソーシアムへの公的資金は2009年に打ち切られたが、Verstate氏とポスト教授はグーグル共同創業者から資金援助を受け、2013年に世界に向けて培養肉バーガーを発表した。

昨年3月、オランダの第二院(オランダの国会における下院)は、培養肉試供品を合法化するための動議を可決した。D66党(民主66党)とVVD党(自由民主党)による動議は、管理された条件下で培養肉の承認前試食を可能とするため、オランダ政府に培養肉企業と協議を開始するよう求めていた。この動議は17政党のうち14政党の支持により可決された。

大きな前進

出典:Meatable

現在、オランダではマーストリヒト(モサミート)、デルフト(Meatable)の2箇所で培養肉が製造されている。培養肉の試食が認められたことで、研究者だけでなく一般の消費者も培養肉を試食できるようになる。

モサミートCEO(最高経営責任者)のMaarten Bosch氏は、「これはオランダ政府にとって素晴らしい成果であり、オランダが農業と食品のイノベーションにおいて世界のリーダーであることを示した新たな証拠です」と述べている。

培養肉の試食が認められたことはオランダの培養肉業界にとって大きな前進だが、欧州で培養肉が販売されるのはまだ先になる。

欧州で培養肉を販売するには、欧州食品安全機関(EFSA)の承認が必要だが、今年5月時点ではいずれの培養肉企業も欧州当局に申請をおこなっていない

欧州での承認プロセスは最低約18ヵ月かかると予想されるため、モサミート・Meatableは欧州よりもシンガポールで先に認可を取得する可能性が高い

アメリカでは先月初めて培養肉の販売が承認され、Upside FoodsGOOD Meatが最初の販売を実現した。

 

参考記事

Tasting Cultivated Meat in The Netherlands

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Mosa Meat

 

関連記事

  1. Shiruと味の素、AIを活用した未発見の甘味タンパク質の発見・…
  2. UPSIDE Foodsが米レストランで培養鶏肉の販売を実現
  3. イスラエルの精密発酵企業Imagindairyが米国でGRAS自…
  4. ソーラーフーズ、微生物タンパク質を使用したアイスクリームをシンガ…
  5. インテグリカルチャーが培養フォアグラの開発に成功、試食を実施
  6. 中国代替肉企業Hey MaetがプレシリーズAで数百万ドルを資金…
  7. ユニリーバ傘下の代替肉ブランドThe Vegetarian Bu…
  8. Mycorena、マイコプロテイン由来のバター試作品を発表

おすすめ記事

二酸化炭素、水素、微生物からタンパク質を作る米NovoNutrientsが約5.1億円を調達

工業的に排出された二酸化炭素、水素、微生物を活用して代替タンパク質を開発するNo…

分子農業パイオニアの英Moolec Science、SPAC経由の上場を計画

植物を活用して動物由来と同等のタンパク質を開発するイギリスの分子農業スタートアッ…

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ(2025年1月-8月の動向を対象)

2025年以降の動きをまとめた精密発酵ミニレポートを発売します。本レポー…

英当局、培養肉の規制サンドボックスプログラムを始動-安全性とイノベーションの両立へ

2025年3月22日更新:当初掲載していた記事後半のスライドで、培養肉が実際に提供された地域に”香港…

コンビニで出来立てチャーハン|ローソン、TechMagicの炒め調理ロボット「I-Robo 2」を初導入【現地レポート】

2025年7月22日、炒め調理ロボット「I-Robo 2」がついにコンビニに登場…

ウキクサから2つのタンパク質|Aspyre Foodsが植物分子農業でカゼイン・ルビスコを開発

出典:Aspyre Foods多くの植物分子農業スタートアップが登場する中、ウキクサからルビスコ…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(10/08 16:04時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(10/09 02:29時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(10/09 06:07時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(10/08 22:04時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,980円(10/09 14:04時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(10/09 01:21時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP