代替プロテイン

動物肉と同等価格の植物肉が生産可能な自動化技術をシアトルの企業が開発

 

シアトルに拠点を置く植物肉のスタートアップ企業Rebellyous Foodsは、従来の動物肉と同等の価格で植物肉を生産できる、特許出願中の新しい生産システムのプロトタイプを開発したと発表した。

Rebellyous Foodsでは、「Mock 1S」と呼ばれる新しいシステムにより、自動化による人員削減やエネルギー消費の削減、廃棄物の90%削減、その他の改善などを組み合わせることで、植物肉の製造コストを最終的に95%削減できると主張している。

従来の植物肉製造よりも効率的な製造設備を開発

出典:Rebellyous Foods

同社のCEOであるChristie Lagally氏によると、従来の植物肉メーカーは、植物肉製造に適した設計になっていない食品加工設備を利用しているが、Rebellyous Foodsのシステムは植物肉を作るためにカスタムされた設計となっているという。

Lagally氏によると、現在の植物肉工場では、チョッパー(食肉細断装置)とタンブラー、コンベアベルトを使い、乾燥タンパク質に食感を加え、オイル、水、デンプンを乳化させ、最終的にすべてを混合する工程となっている。

一方Mock 1Sでは、ベルトコンベアや無駄な工程を省き、「ジャストインタイムの水和」「乳化」「混合」を、適温かつ1つの自動化されたプロセスで行うことができるという。(ジャストインタイムとは必要なモノを、必要な時に、必要な量だけ供給することを言う)。

長期的には、同社が開発したシステムにより、従来の工場で飼育された動物肉よりもはるかに安価に生産できるようになるとLagally氏は考えている。まずはこの技術で、コスト競争力のある植物性鶏肉を作りスケール化していく予定だという。

植物肉の価格が下がれば市場の売上は急増する

出典:Rebellyous Foods

カーニーのレポートは、植物肉が動物肉と同等の価格になれば植物肉の売上は急増する、と結論付けている。同レポートでは、価格が1%下がるごとに、植物性食品の市場シェアが3%増加することが示唆されている。

「Rebellyous は、現在の植物肉製造に内在する大きな課題である品質、一貫性、そして価格を解決するために設立された。私たちは、Mock 1Sがすべての機能テストに合格したことに感激している」と、Lagally氏は声明で述べている。

さらに、「私たちは現在、Rebellyous製のナゲット、パテ、テンダーズ(鶏肉に衣をつけて揚げたもの)を従来よりも95%低い製造コストで生産し、動物性鶏肉を打ち負かすような次の製造機開発に取り組んでいる」と発言している。

独自の製造技術で5つの特許を出願中

出典:Rebellyous Foods

Rebellyous Foodsは現在、独自の自動化技術で5つの特許を出願している。

自動化に頼ることで、労働力を90%削減できたという。さらに、冷蔵環境を必要としないため、エネルギーコストが10%削減され、生産に必要なスペースも3分の1に縮小された。また連続生産により、材料廃棄物を90%削減できるという。

同社製品は現在、シアトルを中心に約600の小売店に導入されており、Mock 1Sによる生産で、今後はさらにコスト競争力を高めていくと予想される。

 

参考記事

Rebellyous Develops Patent-Pending Production System That Puts Plant-Based Meat at Price Parity With Animal Meat

Rebellyous Foods Produces World’s First Plant-Based Nuggets at Cost Parity with Chicken

アイキャッチ画像の出典:Rebellyous Foods

 

関連記事

  1. 米イート・ジャスト、年内または2022年に30億ドルのIPOを目…
  2. BioCraft Pet Nutrition、社名変更とともに培…
  3. フードテックで注目|精密発酵セミナー開催のお知らせ
  4. 世界の精密発酵タンパク質の認可状況まとめ【2024年11月】|F…
  5. オーストラリアのVow、香港で培養肉販売認可を取得|シンガポール…
  6. オランダ政府が細胞農業に約82億円の出資を発表、国の成長計画とし…
  7. 培養肉スーパーミートと欧州大手養鶏企業PHW、培養肉の欧州導入で…
  8. 3Dプリンターを活用する上海企業CellXが培養豚肉のサンプルを…

おすすめ記事

エンドウ豆由来の代替ミルクを展開する米Ripple Foodsが約72億円を調達

黄エンドウ豆由来の代替ミルクを開発・販売する米Ripple Foodsが4,92…

UPSIDE Foodsが米レストランで培養鶏肉の販売を実現

UPSIDE Foodsは今月1日、アメリカ、サンフランシスコのレストラン「Ba…

乳製品生産の再考|牛に頼らず細胞培養でミルクを開発するドイツ企業Senara

ドイツのスタートアップ企業Senaraは先月、細胞培養によるミルクを低コストで生…

BiomeMega、革新的な細菌由来のオメガ3と持続可能な脂肪酸で2027年までに米国市場への進出を計画

写真はイメージ2022年に設立されたオーストラリアのスタートアップ企業BiomeMegaは、食品…

米MycoTechnologyが約105億円を調達、菌糸体発酵プラットフォームの海外展開を加速

菌糸体で食品業界の課題解決に挑むアメリカ、コロラドを拠点とするMycoTechn…

スーパーミート、来年アメリカに培養肉工場建設を計画

細胞培養による培養肉を開発するイスラエルのスーパーミートは、2023年後半にアメ…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

リアルセミナー@東京のお知らせ【2025/6/18】

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(05/29 15:12時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(05/30 01:07時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,940円(05/30 05:05時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
2,156円(05/29 21:13時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,980円(05/30 13:17時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(05/30 00:19時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP