二酸化炭素から作ったタンパク質で動物飼料を生産するDeep Branchが220万ユーロ(約2億6000万円)の資金調達に成功した。
Deep Branchの主力技術は、単細胞タンパク質(single-cell protein)。
単細胞タンパク質とは、酵母や細菌など単細胞微生物のタンパク質のこと。原料に糖類、デンプン、メタンなどを使い、微生物を培養して増殖させた細胞を、飼料として利用する。
Deep Branchの単細胞タンパク質Protonは、原料にメタンや糖類ではなく、二酸化炭素を使う。
簡単にいうと、「空気」から作ったタンパク質だ。
二酸化炭素から作るタンパク質は良いこと尽くしだ。
原料が産業排出された二酸化炭素であるため、投入コストをかなり抑えることができる。また、同社Protonから作られる動物飼料は、魚粉飼料に匹敵する栄養があり、カーボンフットプリントを90%以上節約できるという。
しかも、産業排出される二酸化炭素を原料とするため年間を通じて原料調達が可能だ。つまり、季節的な価格変動や供給変動がない。
Deep Branchは調達した資金を、オランダを拠点とするBrightlands Chemelot Campusの生産施設建設に使う予定。2021年第二四半期までに稼働を開始したいという。
今回の資金調達の3ヶ月前には、総額2400万ユーロ(約29億円)の出資を受ける9のプロジェクトをイギリスが発表していた。これはゼロエミッション農業とイギリスの食産業を支援するもので、このプロジェクトの1つにREACT-FIRSTがある。
REACT-FIRST は2020年7月に始まったDeep Branchが主導するプロジェクトで、10のコンソーシアムが参加。
Protonのコスト、栄養価、カーボンフットプリント、消化性に関するデータを収集し、気候危機に取り組み、Net Zero(温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすること)の達成を目指す。
「ヨーロッパでは、家禽や養殖魚には魚粉と大豆を飼料としていますが、これらは主に南アメリカから輸入され、環境に与える影響が小さくありません。当社は二酸化炭素排出量を90%以上削減できる、新しい、サステイナブルな動物飼料を開発しています」
とDeep BranchのCEO Peter Roweが語るように、魚粉代替飼料原料の開発が求められている。
主な理由は、
●魚粉生産量が減少していること
●世界最大の魚粉輸出国ペルーが資源保護と価格安定のために漁獲調整しており、魚粉の増産は期待できないこと
●魚粉が1トンあたり1200~1500ドルと高価であることなどがある。
Deep Branchは2018年創業の、イギリス・ノッティンガムを拠点とするスタートアップ。今回の出資者はEuropean Innovation Council。
イギリスで制定された2050年までに二酸化炭素排出をゼロにする法律の実現に大きく貢献する技術になるだろう。
参考記事
Deep Branch Secures €2.5M to Scale Up Production of Novel Protein Using CO2 Inputs
Animal feed made from recycled carbon secures £2.2 million funding
レポート|養魚飼料原料の多様化が創出する新たな事業機会と課題
アイキャッチ画像の出典:Deep Branch