アグテック

ドバイが次のフードテックハブになる?UAEがドバイにフードテックバレーを設置

 

フードテックに国をあげて力を入れている代表例はシンガポールだが、今後はこのリストにアラブ首長国連邦(UAE)も加わるかもしれない。

UAEは最近、食料生産を3倍にすることを目指す取り組みとして、フードテックバレーをドバイに立ち上げた。

この施設には、研究所、研究センター、試作段階の農業システムが含まれ、すべて1つの敷地内にあり、戦略的に大学、アカデミック機関の近くに設置された。

これは、UAEが掲げる国家食料安全保障戦略2051を達成するためのもの。

この戦略には、自給自足の強化、持続可能な食料生産システムの構築、飢餓ゼロの達成、栄養改善に関する法規制の導入、廃棄量削減に関する法規制の導入、2051年までに国際食料安全保障指針(Global Food Security Index)で1位になることなどが含まれる。

UAEの副大統領兼首相でドバイ首長であるシェイク・ムハンマド・ビン・ラシッド・アル・マクトゥーム氏は、5月1日にフードテックバレー立ち上げを発表した。

出典:Food Tech Valley

このフードテックバレーは次の4つのエリアから構成される。

  • 農業技術とバイオエンジニアリングのエリア:年間を通じて農作物を栽培するための垂直農業、ロボット工学、AI、自動化に関するプロジェクトが含まれる。
  • 有望なフードテックに取り組むスタートアップや事業のインキュベーターとなる食品イノベーションセンター:ここには新しい食品を生産するための専用食品工場や次世代レストラン(レストラン2.0)が設けられる予定。
  • 収穫を最大限にする農業ロボット、干ばつ耐性のある作物を研究する世界レベルの研究開発施設:藻類培養における3Dプリンティング技術の応用、代替タンパク質の生産、農作物モニタリングにおけるAIの活用などのプロジェクトも含まれる。
  • スマート物流ハブ:食品の分類、輸送、流通にブロックチェーン、ビッグデータなどの技術を活用し、食品の貯蔵、販売、輸送の効率化を図る。

このフードテックバレーは、室内農場、垂直農場を含めた先進農業のインキュベーターにもなっている。

プロジェクトの60%以上のスペースがこれらの活動に割り当てられており、フードテックバレーは、食料安全保障に関する国家目標を達成するための取り組みの一部となっている。

UAEは国際食料安全保障指針(Global Food Security Index)で現在、113位中42位

この指標は、食品価格の手頃さ、食品の入手可能性、食品の質・安全性、自然資源と柔軟性の4点で総合的に評価されるもの。UAEの課題には「農業研究と開発」があげられている。

UAEの国家食料安全保障戦略2051で示されるとおり、UAEは2051年までに1位になることを目標としている。

(これに対し、フードテックが盛んなシンガポールは113位中19位で、日本は9位となっている)。

食糧安全保障大臣であるAl Mheri氏は世界のアグテック市場が今後4年で135億ドルから220億ドルに成長すると予測されることに言及したうえで、自給自足を達成し、資源を節約するために、フードテックバレーは重要であるとしている。

UAEではすでにイスラエルのVertical Field垂直農場を試験導入したり、政府系のアブダビ投資会社がアグテック企業に投資したりするなど農業への取り組みを強化している。フードテックバレー立ち上げにより、今後はさらに多くの地元・海外企業が参加していくことが予想される。

 

参考記事

UAE: The Next Big Food Tech Hub?

Sheikh Mohammed launches Food Tech Valley in Dubai

アイキャッチ画像の出典:Food Tech Valley

 

関連記事

  1. ビーガンチーズを開発するMiyoko’s Creameryが約5…
  2. ゲノム編集で食・農業の変革を目指す米Pairwiseが新たな戦略…
  3. 米Optimized Foods、食品廃棄物と菌糸体を活用した持…
  4. インテグリカルチャー、培養肉用資材のB2Bマーケットプレイス「勝…
  5. 「麹菌で日本発のマイコプロテインブランドをつくる」|筑波大学・萩…
  6. MISOLA FOODS、日本初のオーツミルク専門メーカーとして…
  7. 培養肉のコスト削減を目指すProfuse Technologyが…
  8. ChickPがひよこ豆由来のクリームチーズ、チェダーチーズを開発…

おすすめ記事

ユニリーバ傘下の代替肉ブランドThe Vegetarian Butcherが、精密発酵由来の卵白タンパク質の使用で米The EVERY Companyと提携

グローバルな代替肉ブランドであり、ユニリーバが2018年に買収したThe Veg…

培養肉でメキシコ初のスタートアップMicro Meatは量産化段階にはいる

細胞農業の進歩により培養肉がスーパーの棚に並ぶ日も近いのかもしれない。M…

米Brown Foodsが培養全乳「UnReal Milk」を発表|研究室での生成に成功

2025年3月7日更新2021年に創業したボストンに拠点を置くスタートア…

大手食品メーカーの精密発酵食品への参入・販売状況【Foovo独自】

ダノンは今月、ミシュランら3社と協力して、フランスに精密発酵のスケールアップを加…

カクテルに3DプリントするPrint a Drink、企業向けの小型3Dプリンターを開発

フード3Dプリンターという言葉を聞いたことある人は少なくないだろう。工業…

Change Foodsが約13億円を調達、精密発酵の市場投入を加速するパートナーシップを締結

精密発酵によりチーズを開発するChange Foodsは、シードラウンドで追加の…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(04/16 15:00時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(04/17 00:47時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(04/16 04:45時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(04/16 21:00時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(04/16 13:05時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(04/17 00:01時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP