3Dプリンター

培養肉企業MeaTechがベルギーに培養脂肪のパイロット工場を建設することを発表

 

イスラエルの培養肉スタートアップMeaTech培養脂肪のパイロット工場を建設予定であることを発表した。

パイロット工場は2022年に建設、操業の予定で、プレスリリースによるとベルギーに建設される。

植物肉をアップデートさせる培養脂肪

出典:MeaTech

MeaTechは3Dプリンターを活用して培養肉を開発するスタートアップ。

2018年に設立された同社は、培養肉を作るための独自のバイオ3Dプリンターを開発している。

2019年にテルアビブ証券取引所に上場し、世界で最初に上場した培養肉企業となった。今年3月にはNasdaq上場により、米国で上場した世界初の培養肉企業となった。

MeaTechはパイロット工場で2020年12月に買収したベルギーのPeace of Meatの培養脂肪を生産するとしている。

プレスリリースによると、培養脂肪の使用により、使用する原料を減らせるだけでなく、「植物肉の風味、食感、口当たりを著しく高められる可能性」がある。

培養脂肪を組み込んだ「ハイブリッド商品」は、100%植物性の代替肉と比べ、「より肉らしく」なるという。

出典:MeaTech

MeaTechはパイロット工場によって、潜在的なクライアントに同社の生産能力を示したいと考えている。

同社は、細胞、バイオプロセスを含めた培養脂肪の生産技術を他社にB2Bで提供するビジネスモデルを想定している。

さらに、培養脂肪技術の強化と並行して、バイオ3Dプリンターを活用してステーキや鶏むね肉など培養ブロック肉の開発も進めていく予定。

最終的に、パイロット工場に3Dプリンティング技術を組み込み、培養肉を生産したいと考えている。

畜産の限界を打開する培養肉

MeaTechはバイオリアクターで細胞を筋肉細胞、脂肪細胞へ分化させたものを独自の足場材料と合わせて「フードインク」とする。

次いで、バイオ3Dプリンターでフードインクを本物の肉構造のように積層させる。最後に、3Dプリントされた構造物をインキュベーターに設置して成熟させて組織を形成させる。

現在の食品が工場で効率的に生産されるように、培養肉も手法が確立されたのちは生産の場は実験室ではなく、工場になる。

出典:MeaTech

従来の畜産肉と比較して、使用する土地、水ははるかに少なくすむほか、培養肉の生産では排出される温室効果ガスを92%減らせることが報告されている。

家畜のための農業用地を確保するための森林伐採も不要となる。集約畜産、飼育過程での抗生物質の乱用、感染症による大量の殺処分という現状を変える選択肢になりうる。

CEOのSharon Fima氏はプレスリリースで次のようにコメントしている。

「当社の培養脂肪は植物肉の味、食感、口当たりを改善する可能性のある非常に有望な成分であり、市場の成長をさらに促進できると信じています。

培養肉業界が直面する重要な課題は、費用対効果の高い生産です。

このパイロット工場の設立と細胞農業技術のスケールアップは、従来の肉と同等価格を実現し、(略)当社の「未来の工場」というビジョンを実現するための重要な一歩になります」(Sharon Fima氏)

今後10年以内に培養肉は大衆化する?

3Dプリンター×培養肉をかけあわせる企業にはMeaTechのほかに、同じくイスラエルのアレフファームズがいる。

アレフファームズは今年2月に3Dプリンターによる培養リブロース肉の開発に成功したことを発表した。

アレフファームズはブラジル日本への培養肉導入を進めており、日本で食べられる最初の培養肉になる可能性が高い企業といえる。

出典:MeaTech

5年以内に培養肉が畜産肉と同等価格になるとみる見解もあれば、2030年までに畜産肉と同等価格になると予想する研究もあり、培養肉が食卓に並ぶタイムラインにはさまざまな議論があるが、おおむね10年以内と予想される。

それを裏付けるように、先週、イスラエルの培養肉スタートアップFuture Meat培養鶏肉110gあたりの生産コストを4ドルにまでさらに削減したことを発表した。

Future Meatは今後1年~1年半で2ドルにまで削減できるとコメントしており、培養肉がスーパーに並ぶ日は着実に近づいている。

 

参考記事

MeaTech Announces Intention to Establish and Operate a Pilot Plant in 2022

MeaTech 3D Will Produce Cultivated Fat, Whole Steaks at Its Forthcoming Pilot Facility

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:MeaTech

 

関連記事

  1. 香港培養肉スタートアップAvant Meatsが約3億2千万円を…
  2. Remilkの精密発酵乳タンパク質がシンガポール当局の認可を取得…
  3. 2020年の代替タンパク質投資額は31億ドルとGFIが報告、過去…
  4. イスラエルの精密発酵企業Remilk、アメリカで上市を実現
  5. バイオミメティクスに着想を得た代替肉企業Plantedが約19億…
  6. 培養ロブスターを開発する米Cultured Decadenceが…
  7. 精密発酵で食用コラーゲンを開発するスタートアップ企業3社
  8. イスラエルのChickPがひよこ豆由来のビーガンマヨネーズを開発…

おすすめ記事

イスラエルのSuperMeat、培養肉の生産コスト削減を発表-100gあたり約400円で商用化に一歩前進

イスラエルの培養肉企業スーパーミート(SuperMeat)は今月、アニマルフリー…

精密発酵でヘムを開発するPaleoが約17億円を調達、植物性食品に「本物の肉の味」を提供

精密発酵でヘムを開発するベルギー企業Paleoは今月、シリーズAラウンドで120…

【現地レポ】精密発酵CDMOのScaleUp Bioが最初のクライアント企業を発表、食品特化の施設でスケールアップを支援

食品に特化した精密発酵・液中発酵施設を開設して、スタートアップ企業の支援を目指す…

ドイツの培養脂肪Cultimate Foodsが約1億円を調達、植物肉用の脂肪提供を目指す

ドイツを拠点とする培養脂肪スタートアップのCultimate Foodsがプレシ…

キッチンOSのサイドシェフ|買出しレシピサービスでウォルマートと連携

キッチンOSの主力スタートアップサイドシェフ(SideChef)とウォルマートと…

2023年精密発酵業界の全貌:認可企業の動向、2024年予測、CDMO企業の動向|Foovoレポート

2024年9月24日更新100億円を超える資金調達が目立った2021年-…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoセミナー開催のお知らせ

Foovo Deepのご案内

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(01/25 14:31時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(01/26 00:12時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(01/26 04:03時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(01/25 20:28時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(01/25 12:42時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(01/25 23:27時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP