代替プロテイン

イスラエルの微細藻類スタートアップBrevel、シードラウンド拡張で約7.4億円を調達

 

微細藻類由来のタンパク質を開発するイスラエル企業Brevelがシードラウンドの追加拡張投資により500万ドル(約7億4,700万円)を調達し、シードラウンド全体で2,500万ドル(約37億円)を調達したと発表した

これは2023年7月の1850万ドル(当時約25億円)の資金調達に続くもので、クランチベースによると、同社の調達総額は2660万ドル(約39億円)となった。

今回のラウンドには欧州イノベーション評議会のEICファンドも参加している。

Brevelは調達した資金で、食品・飲料用途向けに微細藻類タンパク質の開発・市場投入を加速する考えだ。

このニュースは、今年2月に発表されたイスラエルの大手飲料メーカーThe Central Bottling CompanyCBC Group)との10年間にわたる長期購入契約締結に続くものとなる。BrevelはCBC Groupと協力し、微細藻類由来のタンパク質・油脂を含む機能性ドリンクや代替乳製品を開発すると発表した

光を活用した微細藻類培養

出典:Brevel

2017年設立のBrevelは、屋内バイオリアクターで光と糖を組み合わせた発酵プロセスを採用しており、遺伝子組換えを行わずに栄養価の高い微細藻類を生産している。

従来の発酵は暗所で行われるため、コスト面や収量では優位でも、光合成によって生成される栄養素や機能性成分が乏しく、商品価値が限定されていたとBrevelは指摘する

Brevelは発酵に光を取り入れた世界初の企業だとしており、高収量・低コストを維持しつつ、栄養価を兼ね備えた微細藻類の生産を行っている。

Brevelの微細藻類由来タンパク質は、白色でニュートラルな風味であることが特徴だ。粉末状で、乳化性、ゲル化性、発泡性に優れた機能性をもち、代替肉や代替乳製品など幅広い用途に利用できる。

同社は昨年6月、5,000Lのバイオリアクターを設置した商用工場をイスラエルに開設した。ここでは数百トンの微細藻類タンパク質が生産可能となる

広範な製品ポートフォリオで収益性向上

Aviram Waldman氏提供 

Brevelのビジネスモデルは大豆タンパクに近く、タンパク質以外の副産物も収益源として活用する点が特徴だ。微細藻類にはタンパク質のほか、脂質、食物繊維、抗酸化物質といった多様な成分が含まれており、これらすべてがBrevelの製品ポートフォリオに組み込まれている。

共同創業者のYonatan Golan氏は、「当社独自の技術に含まれる光の活用により、タンパク質に加えて強力な乳化性を持つ機能性油脂、栄養補助食品として有用な抗酸化物質、食品用途向けの食物繊維なども生産でき、全体として収益性を高めることができます」と述べている。

「この広範な製品ポートフォリオにより、当社の高品質なタンパク質および各副産物において、価格競争力を実現できます。今年の夏には、次の製品群の市場投入も予定しています」と続けた

フォトバイオリアクターで微細藻類を培養する他社

出典:Brevel

Brevelのように、光を利用した微細藻類培養を実用化しようとする企業は他にも存在する。

2023年設立のオーストラリアのAlgenieは、LEDを内蔵した特許取得済みのらせん状の薄層フォトバイオリアクターで微細藻類を高効率に光合成培養しており、1キロあたり1ドルを目標にしている

2021年設立のデンマーク企業Algiecelは、標準的な輸送コンテナに収まるモジュール型フォトバイオリアクターを使用し、再生可能な電力で駆動するLED照明と産業由来の二酸化炭素を利用することで、微細藻類バイオマスを生産している。​バイオリアクターは移動可能で、二酸化炭素が排出される場所に直接配置できる

Algiecelは2022年にデンマーク技術研究所(Danish Technological Institute)にパイロットスケールのフォトバイオリアクターを設置している。昨年10月には5,000万デンマーククローネ(約10億円)を調達し、今年第3四半期にはカルンボーにあるNovonesisで最初のフルスケールのデモ機設置を予定している

 

参考記事

Brevel Expands Seed Round to US$25 Million Through Warrant Exercise(プレスリリース)

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Brevel

 

関連記事

  1. シンガポール・イスラーム評議会、特定条件下で培養肉をハラールと認…
  2. 米Superbrewed Food、腸内細菌由来のタンパク質につ…
  3. 米The Every Company、精密発酵で作られた史上初の…
  4. 米Mozza Foods、大豆による植物分子農業で味・品質に妥協…
  5. バイオ3Dプリンティング技術で培養肉を開発するTissenBio…
  6. イスラエルの培養肉・代替肉企業6社まとめ
  7. イスラエルの培養肉企業Steakholder Foodsが日本で…
  8. お多福醸造・オタフクソースがマイコプロテイン事業に参入

おすすめ記事

菌糸体由来のブロック肉を開発するMeati FoodsがD2C販売をスタート、24時間で完売に

菌糸体由来のブロック肉を開発するアメリカ企業Meati Foodsは14日、自社…

GOOD Meatがシンガポールで培養鶏肉の販売を一時停止、再開に向けて準備中

世界で最初に培養肉を販売したイート・ジャストの培養肉部門GOOD Meatが、シ…

【世界初】Shiok Meatsが試食会で培養カニ肉料理を発表

培養シーフードを開発するシンガポール企業Shiok Meatsが、培養カニ肉の試…

【現地レポ】精密発酵CDMOのScaleUp Bioが最初のクライアント企業を発表、食品特化の施設でスケールアップを支援

食品に特化した精密発酵・液中発酵施設を開設して、スタートアップ企業の支援を目指す…

2020年の代替タンパク質投資額は31億ドルとGFIが報告、過去10年の投資額の半分が2020年に集中

GFIは、2020年は植物ベースの肉、卵、乳製品など動物性食品に代わる代替品を開…

米Ayana Bio、植物細胞培養でカカオなどの生理活性物質の開発を加速

アメリカ、ボストンを拠点とするAyana Bioは、カカオ、レモンバーム、エキナ…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(08/08 15:33時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(08/08 01:41時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(08/08 05:33時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(08/08 21:37時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(08/08 13:35時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(08/08 00:45時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP