食品に特化した精密発酵・液中発酵施設を開設して、スタートアップ企業の支援を目指すシンガポールのScaleUp Bioは先月31日、同社施設を使用する最初のクライアント企業を発表した。
Foovoに送られたプレスリリースによると、精密発酵で脂肪を開発するオーストラリア企業Nourish Ingredientsが、ScaleUp Bioと契約締結したことが発表された。
このほか、代替パーム油を開発する米C16 Biosciences、マイコプロテイン肉を開発するマレーシアのUltimeat、藻類・菌糸体から機能性成分を開発するシンガポール企業Allium Bioが基本合意書(LOI)を締結した。
同社はまた、シンガポールで開催されたAgri-Food Tech Expo Asiaにあわせ、3日間にわたる施設視察ツアーを開催した。
スケールアップのギャップを埋める
ScaleUp Bioはフードテック企業に対し、ベンチスケールからパイロット・スケールの商用生産へとスケールアップを支援し、アジア市場や他の市場への参入を支援することを目指して昨年設立された。
ADMとテマセクの合弁会社である同社は、世界の革新的なフードテック企業が直面するスケールアップのギャップを埋めることを使命としている。
CEO(最高経営責任者)を務めるFrancisco Codoñer氏は、「微生物による精密発酵で食の未来を築くために参加してくれた最初の顧客パートナーを発表できることを嬉しく思います」と述べている。
最初のクライアント企業は精密発酵脂肪のNourish Ingredients
最初のクライアント企業となるNourish Ingredientsは、2019年にオーストラリアに設立された。同社は従来のパーム油、ココナッツオイルに代わる持続可能な油脂として、精密発酵により動物のような風味を持つ脂肪を開発している。
先月にはシドニーで開催されたイベントで、アニマルフリー脂肪「Tastilux」を発表した。
Nourish Ingredientsは戦略的なアジアの拠点としてシンガポールを選んだ。ScaleUp Bioの施設が本格稼働すると、ここを利用し、食品・素材メーカーに向けた精密発酵脂肪の生産を拡大できるようになる。
Codoñer氏は以前のインタビュー時に、ほかにも本契約に至った企業がいることを述べており、実際はより多くの企業と本契約やIOLを交わしていると思われる。
来年始めに施設を本格稼働
ScaleUp Bioは最大100リットルのバイオリアクターを備えた研究開発施設と、最大10,000リットルのバイオリアクターを備えた施設をまもなく開設する。現在、稼働前の試験段階にあり、来年始めに本格稼働を予定しているという。
2施設は、研究開発とパイロット生産という、異なる成長ステージに対応すべく設計された。
1つ目の施設は、食品グレードの発酵に特化した最先端設備を備えており、スタートアップ企業がアイディアを探求できる場となる。
2つ目の施設は、パイロット生産のために10,000リットルのバイオリアクターを備えた、食品グレードに特化した発酵施設となる。シンガポールでは初の施設で、国際的にも同様の施設は多くない。ScaleUp Bioの本社も兼ねており、シンガポール西部のトゥアス地区にある。
同社は10月31日から11月2日まで開催されたAgri-Food Tech Expo Asiaに合わせ、トゥアス施設の視察ツアーを開催した。
ScaleUp Bioによると、ツアーには98の企業・団体から140名以上が参加したという。Foovoもツアーに参加した。トゥアスの施設には、10,000Lのバイオリアクターが2基あり、1,000Lのバイオリアクターも複数基設置されていた。
シンガポールはアメリカに次いで精密発酵食品が流通している地域といえる。スケールアップのギャップを埋めるScaleUp Bioの施設が本格稼働すると、より多くの企業がシンガポールをハブに選ぶようになるだろう。
視察に参加した企業にはFormo、TurtleTree、Those Vegan Cowboys、Melt&Marbleなどの精密発酵企業が多くいたことからも、ScaleUp Bio施設への関心の高さがうかがえた。
参考記事
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アイキャッチ画像の出典:ScaleUp Bio