精密発酵で卵白タンパク質を開発する米The Every Companyが、鶏に依存せずに精密発酵で開発した初の液状卵EVERY Eggを開発した。
9年かけて、シェフとテストを繰り返して開発されたEVERY Eggが、ミシュラン三ツ星レストランであるEleven Madison Parkのイベントで提供されることが発表された。自社リンクトインでの発表と共に、Fast Companyが報じた。
公式サイトによると、EVERY Eggは精密発酵で生成した卵タンパク質に植物成分を加えて生成されたものとなる。
精密発酵で作られた史上初の液状卵EVERY Egg
The Every Companyは2年前、ドリンクやアルコールに添加しても色や味に影響を与えない精密発酵で生成された世界初の卵白タンパク質粉末EVERY Protein(当時ClearEgg)を発表。
2022年3月には製菓業界向けに卵白のように泡立ち、ゲル化する特性を備えた粉末EggWhiteを発売し、EggWhiteを使用したマカロンを期間限定で発売した。これら2製品はいずれも粉末の形態となる。
今回発表されたEVERY Eggがこれまでの製品と異なるのは、EVERY Eggはスクランブルエッグ、オムレツ、クリームブリュレ、ケーキなどに使用できる、精密発酵技術を使用して作られた初の液状卵であることだ。
植物性の液状卵で有名なJUST Eggの精密発酵版が市場に出たイメージといえばわかりやすいかもしれない。
飽和脂肪酸とコレステロールを含まないEVERY Eggは「鶏卵と同様の味、栄養プロファイル、機能をもたらす驚異の料理」であり、シェフに「鶏卵の供給と性能の不一致に対するソリューションを提供する」と同社は述べている。
精密発酵を活用して、より環境に優しい方法で開発されたEVERY Eggは、価格の高騰、供給不足、鳥インフルエンザによる殺処分といった現状の課題を解決する可能性を秘めている。
2024年にレストランで提供へ
The Every Companyによると、同社は1960年代にカリフォルニアのブラックオークの木で発見された特別な酵母を使用し、バイオリアクターの中で砂糖、水と混合させている。
この酵母は動物タンパク質を作るよう遺伝子が挿入されているため、バイオリアクターの中で発酵プロセスによりビールを生成する代わりに、卵タンパク質を生成する。酵母を分離すると、本物の卵タンパク質が豊富に含まれた培養液が残る。その後、卵タンパク質に「有益な植物性成分」を加えて、EVERY Eggを生成している。
精密発酵では、プロセスで遺伝子組換え微生物を使用するが、最終産物からは遺伝子組換え微生物は除去され、本物と同等のタンパク質が得られる。この手法は1980年代のジェネンテックによるヒトインスリン開発のブレイクスルーから始まり、チーズの製造で使用されるレンネット(キモシン)から酵素の開発まで、私たちの身近で使われている技術だ。
同社によると、EVERY Eggの販売はすでに認められており、2024年のレストランでの提供に向けて、一部のレストランと協力しているという。
創業者兼CEO(最高経営責任者)のArturo Elizondo氏は、「EVERY Eggは、精密発酵と料理のイノベーションの重要な分岐点を表しています。鶏卵と区別できない非動物性卵を世界が見たのはこれが初めてです」と述べている。
精密発酵による卵タンパク質では、The Every CompanyのほかにフィンランドのOnego Bio、イスラエルのEggmented Reality、ベルギーのOTROなどが確認されている。液状卵のEVERY Eggが発表されたことで、精密発酵による卵タンパク質の開発がさらに前進を遂げた。今後、どのような規模で市場投入が進んでいくか注目したい。
参考記事
This egg was made without chickens—and it’s launching at Eleven Madison Park
EVERY® UNVEILS WORLD’S FIRST LIQUID EGG MADE WITHOUT A HEN AT ELEVEN MADISON PARK
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アイキャッチ画像の出典:The Every Company