アメリカのバイオテック企業Checkerspotは微細藻類の発酵により、ヒト乳脂肪を模倣した成分開発における「画期的な成果」を「Frontiers in Nutrition」に発表した。
論文は、「微細藻類の発酵によるヒト乳脂肪類似体の開発と大量生産(Development and large-scale production of human milk fat analog by fermentation of microalgae)」というタイトルで発表された。
Checkerspotが開発したのは、OPO(1,3-ジオレオイル-2-パルミトイルグリセロール)というヒト乳脂肪に存在する重要なトリアシルグリセロールの類似体だ。これを、独自に開発した微細藻類株で生成することに成功した。
Checkerspotの研究成果を理解する前に、まず脂肪であるトリアシルグリセロール(TAG)と母乳におけるTAGの独自構造について見てみよう。
ヒト乳脂肪の構造の再現が難しい理由:sn-2
TAGはシンプルにいうと脂肪だ。体脂肪の主成分であり、エネルギー貯蔵や、体温の維持、外部からの衝撃に対し体を守る役割を果たしている。
TAGはもちろん母乳中にも存在し、トリグリセリド、トリアシルグリセロールとも呼ばれる。
TAGは、グリセロールという化合物に3つの脂肪酸が結合した構造をとっている。3つの脂肪酸が結合する場所は下記の通り、sn-1(α位)、sn-2(β位)、sn-3(α位)と呼ばれる。
今回のニュースのポイントは、β位(sn-2)だ。
私たちの生体内には、脂肪酸が結合するα位(sn-1、sn-3)、β位(sn-2)を区別する働きがある。例えば、α位に結合している脂肪酸は吸収されにくいのに対し、β位(sn-2)に結合している脂肪酸は吸収されやすいというように。つまり生体には、TAGに結合する脂肪酸の位置を区別して、一部の脂肪酸のみを分解するという特徴がある。
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アイキャッチ画像の出典:Checkerspot