代替プロテイン

代替エビを開発するNew Wave Foodsが約18億円を調達、3月末までに飲食店で提供予定

 

植物ベースの代替魚開発に取り組むNew Wave Foodsが、シリーズAラウンドで1800万ドル(約18億円)を資金調達した。

今回のラウンドには、New Enterprise Associates、Evolution VC Partnersなどが参加した。

調達した資金は、量産販売・マーケティングの拡大チーム拡充新しい製品開発にあてるとしている。

100%ヴィーガンな代替エビを開発したNew Wave Foods

出典:New Wave Foods

New Wave Foodsは海藻と植物を原料に代替エビを開発するニューヨークを拠点とするスタートアップ企業。

2015年から代替水産物の開発に取り組み始め、昨年は、代替エビの全国販売に向けて準備を進めてきた。New Wave Foodsは、まずレストランなど外食産業へ代替エビを提供することを考えており、今月後半にも卸売業者へ最初の出荷をする予定

今年第1四半期には飲食店のメニューに表示されるという。

同社が開発するエビは、海藻・植物を原料とする。

グルテン、大豆、小麦などのアレルギーになる素材は使わず、遺伝子組換え原料も含んでいない。100%ヴィーガンな代替エビだ。

アメリカのエビ消費の8割が外食産業

ウルフ氏は植物ベースのエビには「絶好のチャンス」があると考えている。

CTOのミシェル・ウルフ氏(Michelle Wolf ) 出典:New Wave Foods

 

「2015年に会社を設立したとき、ビヨンドミートやインポッシブルフーズは市場で大きな注目を集めていましたが、水産物に目を向けるプレーヤーはいませんでした。これは大きなチャンスでした」(CTOのミシェル・ウルフ氏)

 

同社によると、アメリカでは年間15億ポンドのエビが消費されており、その80%はレストランなど外食で消費されている。

エビ、カニなどの甲殻類はアメリカで最も消費される水産物とされる。

ウルフ氏によると、アメリカのエビの90%が東南アジアの海岸近くのエビ養殖場から輸入されている

エビの生産には持続可能でないという問題がある。消費される8割のエビを代替エビに置き換えることができれば、環境に対する負担が減る。

エビ養殖がもたらすマングローブの破壊

出典:New Wave Foods

エビ養殖のために、多くのマングローブが伐採されてエビ養殖場にされている。

国立環境研究所の報告によると、タイでは過去20~30年でマングローブの半分近くがエビ養殖場になっている。

マングローブは海からの風や波から陸地を守り、陸からは土砂や汚染が海へ流れ出るのを防ぐ緩衝場の役割を持つ。マングローブが減ると、台風の高波が直に影響を及ぼしたり、海水が内陸まで広く押し寄せたりして、生活・農作業に悪影響を及ぼす

また、多様な生態系が暮らす場所でもあるため、マングローブの減少は、直接的・間接的に地球の生態系に長期的な影響をもたらす。

国によっては、病気を予防するための抗生物質を使用するエビ養殖場もあり、残留する抗生物質も問題とされる。

New Wave Foodsは「味・食感で本物のエビとほぼ区別できない」製品を提供して、エビの養殖や乱獲に伴う環境問題の解決を目指している

年末までに味付けしたタイプをリリース予定

出典:New Wave Foods

New Wave Foodsはレストランなど飲食店のメニューに使われる形で提供される。

価格については「若干高く感じるかもしれませんが、お客さんは最終的にメインディッシュや料理全体を注文します。ですから、食事をするお店に期待する価格に見合うものになるでしょう」と語っている。

FOODDIVEの報道によると、最初の商品はプレーンな代替エビだが、年末までにパン粉をまぶした揚げ物ソースで味付けしたバージョンを市場に出す予定だという。

今回調達した資金で、ロブスター、カニ、ホタテも開発するとしている。

同社によると、チェーン店も含め、アメリカのいくつかのレストランが同社の代替エビの導入に関心を寄せている

New Wave Foodsはタイソンフーズからも非公開の出資を受けており、クランチベースによるとこれまでに調達した資金は総額2030万ドル(約21億円)となる。

ウルフ氏は次のように語り、意気込みを見せる。

「当社にとって、2021年はエビの年。エビに全力コミットします」(ウルフ氏)

 

参考記事

New Wave Foods nets $18M and plans foodservice launch in Q1

New Wave Foods Raises $18M for Plant-Based Seafood

Shrimp alternative company ‘snaps’ into foodservice

国環研ニュース26巻:マングローブと環境問題

 

関連記事

 

アイキャッチ画像の出典:New Wave Foods

 

関連記事

  1. ビヨンドミートが中国で豚ひき肉Beyond Porkを期間限定で…
  2. 精密発酵企業Formoがバイオテック企業Brain Biotec…
  3. 世界初!動物肉を使わないバーガーキングの店舗がドイツにこの夏オー…
  4. 米The Every Company、精密発酵で作られた史上初の…
  5. BlueNaluがアジアへの培養魚販売に向けて三菱商事、タイ・ユ…
  6. GOOD Meatが培養肉生産に無血清培地を使用する認可をシンガ…
  7. 微生物発酵でサステイナブルな着色料を開発するデンマーク企業Chr…
  8. ネスレが精密発酵によるミルク「Cowabunga」の試験販売を開…

おすすめ記事

国内初|グリーンカルチャーが植物性ゆで卵の開発に成功

植物肉Green Meatで知られる日本のスタートアップ企業グリーンカルチャーが…

Steakholder Foodsが3Dプリンティングによる培養霜降り牛肉を発表

イスラエルの培養肉企業Steakholder Foods(旧称MeaTech)は…

3Dプリンターを活用した培養肉の自動生産を目指して大阪大学・島津製作所が協業

大阪大学、島津製作所、シグマクシスは「3Dバイオプリント技術の社会実装」に向けた…

独自ヘムを開発する豪代替肉v2foodが約58億円を調達、中国・欧州進出を目指す

オーストラリアの主要代替肉プレーヤーv2foodがシリーズBで7200万豪ドル(…

米Aqua Cultured Foodsがシカゴで生産施設の建設を開始、今年前半に上市を計画

バイオマス発酵で代替シーフードを開発する米Aqua Cultured Foods…

フランス・パリにPazziによるピザロボットレストランがオープン!

フランスを拠点とする食品スタートアップのPazziが、フランス、パリにピザロボッ…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(03/28 14:53時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(03/29 00:40時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(03/28 04:34時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(03/28 20:51時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(03/28 13:00時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(03/28 23:53時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP