デリバリー

ニューヨーク発・シェフと消費者をつなぐCookUnity|パーソナライズされた定期デリバリー

 

コロナウイルスの発生で、外食の機会が減り、ウーバーイーツなどデリバリーを取る機会が増えた。

デリバリーは便利だ。レストランの料理を自宅まで配達してくれるのだから。しかし、デリバリーが続くと、次第に食事に対する不満が生じるのは私だけだろうか。レストランの食事なのに、どうも満足できない。

そんな、もう少しアップグレードしたものを自宅で食べたいという欲求を見事にくみ取ったサービスがある。

アメリカ・ニューヨーク発のCookUnityは、トップクラス・将来性のあるシェフの料理を、自宅に届けるサービスを提供する。

週毎の食のサブスクサービスで、1食あたりの価格は約10ドル(約1000円)だ。

コロナ前に始まった食のサブスクデリバリーCookUnity

出典:CookUnity

シェフと消費者をつなぐ面白いサブスクリプションサービスを提供するCookUnityは、ニューヨーク・ブルックリンを拠点とするスタートアップ企業。

コロナ後の社会に極めてマッチしたサービスのため、コロナウイルス後に設立されたと思う人もいるだろう。

CookUnityは2018年に設立された。

創業の背景には2つの想いがあったという。

-消費者にシェフが作った料理を自宅で楽しんでもらいたい

-独立しているシェフに、レストランを超えて、想いや料理をシェアする機会を作ってあげたい

 

食を通じて人々と地域社会をつなげる何かを作りたい、シェフや農家と一緒にそれぞれの地域を特徴づけるような食を提供したいという想いからCookUnityは生まれた。

そして今、CookUnityは地元シェフが作った食事を個人宅に届けるプラットフォームを構築している。

シェフの中には、ミシュランの星付きレストランで働くシェフから将来有望なシェフまでさまざま。

CookUnityは週毎のサブスクリプションとなっており、ユーザーは地元シェフが作った300のメニューから好きなものを選ぶ。食事制限や栄養素など、幅広いラインナップの食事が用意されている。

出典:CookUnity

1食あたり10.49ドル(約1087円)で、食事はすぐに食べられる状態で届く。受け取ったら、指示通りに温めるだけ。

ユーザーは自宅にいながら、レストランで食べるような質の高い食事を簡単に楽しめる。

パーソナライズされた食のデリバリーを実現

CookUnityはシェフと消費者をつなぐだけではない。

一律的なメニューではなく、個人の好みに合わせたメニューを提供してくれるのも特徴だ。個々の好みをデータとして蓄積し、シェフや料理とマッチングして個別化されたメニューを提供してくれる。

出典:CookUnity

毎週、パーソナライズされたメニューをアプリが提案。気に入らなければ、ほかのメニューから選べばよい。

配達の3日前・午前9時までに、おすすめのメニューがテキストメッセージで届く。その日の17時までならメニューの変更やスキップが可能。毎週、食事が届く設定となっている。

配達の自動化を希望しない人は、毎週土曜日に2週間分のメニューがアプリに掲載されるので、ここから好きなものを選ぶ。

各料理は冷蔵庫で4-7日間保存できる。包装にはマップ包装(MAP包装/ガス置換包装)を採用している。

マップ包装とは、容器内の空気をその食品の保存に適したガスに置換し、包装する方法をいう。

ガスには、酸化を防ぎ、色や香りを自然な状態に保つ窒素ガスや、色や鮮度を保つ酸素ガス、細菌やカビの繁殖を抑制する炭酸ガスが使われる。

 

シェフ向けの「ストックビジネス」

コロナウイルスの感染拡大が収束しない中、ロックダウンによりレストランの運営が大きく制限された都市では、CookUnityのサービスは失業したシェフを「再起」させる役割を果たす

レストランを運営するコストは非常に高い。

CookUnityのプラットフォームがあれば、レストランがなくても自分の料理を多くの人にふるまうことができる。店舗を賃貸するなど、初期費用をかけずにビジネスをスタートさせることができる。地理的な制限なく、幅広い消費者にリーチできるというメリットもある。

シェフの収入はより見通しのあるものとなり、利益も高いという。最も人気のあるシェフは、年間50万ドル(約5100万円)の売上を出しているという。

シェフの経歴、提供する料理、料理への評価などはすべて可視化されており、固定ファンが増えれば、注文も増える。シェフにとってストック性のあるビジネスといえる。

出典:CookUnity

消費者にとってもメリットがある。

レストランへ行きづらい状況でも、ミシュランの星付きレストランの食事を自宅で手軽に食べられる。自宅勤務、オンライン授業の導入が進むなか、自宅にいる時間が長くなった人々にとって、CookUnityは非常に便利なサービスであり、シェフ、消費者双方にとってwinwinのビジネスモデルといえる。

現に、コロナウイルスの影響を受け前年比5倍に成長。成長の背景には、注文数の増加と、登録シェフの増加があるという。

シリーズAで約16億円を調達

CookUnityはこのほどシリーズAで1550万ドル(約16億円)を資金調達した。

ラウンドはFuel Venture Capitalが主導し、シードラウンドを主導したIDC Venturesなどが参加した。CookUnityがこれまでに調達した資金総額は2340万ドル(約24億円)となる。

今回の資金で北アメリカに拡大し、ロサンゼルスとテキサスに新しいキッチンを構えるとしている。

CookUnityに登録しているシェフは現在32名。2022年中頃までに150名まで増やしたいとしている。

出典:CookUnity

シェフと消費者を直につなぐサービスには、同じくニューヨークを拠点とするWoodSpoonがある。

CookUnityが週毎にシェフの料理をデリバリーするサブスクリプションであるのに対し、WoodSpoonのビジネスモデルは、その都度、注文を受けてシェフが作った料理を配達する、通常のデリバリーにより近い。

シェフが収益の見通しを立てる上では、1週間のサブスクリプションになっているCookUnityの方がいいかもしれないが、WoodSpoonもコロナの影響を受け、サービス開始から1年で登録ユーザー数が8000人を超えている。

日本にもCookUnityと似たサービスを提供する企業がある。

ナッシュは、一流シェフが作ったこだわりの料理を自宅に定期配送するNOSHを提供している。

低糖質なメニューが充実しており、低糖質なデザートも用意されている。届いたらレンジで温めるだけなのもCookUnityと似ている。

配送プランを1週間・2週間・3週間ごとの3パターンから選ぶことができる。

 

参考記事

CookUnity Raises $15.5M to Expand ‘Chef-to-Consumer’ Meal Service

CookUnity Raises $15.5M For its Direct-Chef-to-Consumer Meal Delivery Service

 

関連記事

 

アイキャッチ画像の出典:CookUnity

 

関連記事

  1. 食品ECスタートアップFarmsteadが小売業にGrocery…
  2. まだ食べられる食品を定期宅配するImperfect Foodsが…
  3. イスラエルのドローン企業Flytrexが約8億7000万円を調達…
  4. イスラエルのピザハットがドローンによる試験配達を6月から開始
  5. 食料品ドローン配送を展開するMannaが約27億円を調達、今年第…
  6. デリバリー専門のスウェーデンVemblaが約7300万円を資金調…
  7. 米スーパー大手クローガーがドローンによる食料品配達を正式に実施
  8. インドのデリバリーZomatoが約54億円を追加調達

おすすめ記事

バナナの追熟をAIで予測する米Strellaのソリューション

米スタートアップ企業Strellaは、リンゴなどを保管するCA貯蔵庫の熟成度をリ…

FDA、GOOD Meatの培養鶏肉の安全性を認める Upside Foodsに続き世界で2社目

米イート・ジャストの培養肉部門GOOD Meatは21日、同社の培養鶏肉について…

【現地レポ】カナダのNew School Foods、ホールカットの植物サーモンを米国で2024年に発売へ

カナダ、トロコンを拠点とするNew School Foodsはホールカットの植物…

Apeel Sciences、鮮度を保てるプラスチックフリーなキュウリ、ウォルマートで販売開始|食品ロス問題の解決に

食品ロス問題に取り組む米スタートアップのApeel Sciencesは、Houwelingグループと…

米MeliBioの蜜蜂フリーなハチミツ、2023年始めに欧州市場へ

微生物を活用して蜜蜂フリーなハチミツを開発する米MeliBio(メリバイオ)が来…

米Ovieが開発した冷蔵庫の食品を簡単に追跡できるスマートタグLightTags

食べ残しの料理や、蓋を開けたジャムなど「まだ食べられる」と思って冷蔵庫に保存した…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(07/18 15:28時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(07/19 01:28時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(07/19 05:25時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(07/18 21:32時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(07/18 13:31時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(07/19 00:37時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP