代替プロテイン

「チキンのテスラ」で知られる植物肉の米SIMULATEが約55億円を調達

 

植物ベースのチキンナゲットを開発するSIMULATEがシリーズBラウンドで5000万ドル(約55億円)を調達した。

このラウンドはSEVEN SEVN SIXが主導し、Chris & Crystal SaccaNOMO VenturesMcCain FoodsImaginary VenturesDay One Venturesが参加した。

これによりSIMULATEの調達総額は6100万ドル(約67億円)となる。

「チキンのテスラ」と呼ばれる米SIMULATE

ニューヨークを拠点とするSIMULATEは「チキンのテスラ」と呼ばれ、自社の運営を商品のアップデートを繰り返すソフトウェア企業になぞらえる。

SIMULATEは消費者に最高の植物ベース食品を届けるため、製品のアップデートを繰り返している。

これまでに複数の商品を販売しており、2019年に発売されたNUGGSは、エンドウ豆を原料にしたチキンナゲットで、1食あたり22gのタンパク質を含む。

出典:SIMULATE

2つ目の商品は植物ベースのホットドッグDOGGS。その後も、スパイシーナゲットSPICY NUGGS、代替チキンパテDISCSをリリースしている。

昨年12月にリリースされたDISCSは、大豆と小麦をベースとしており、1食あたり17gのタンパク質を含む。

最初の商品NUGGSを発売後、SIMULATEはNUGGSのアップデートを重ね、公式サイトでどのような変更があったかを消費者にアナウンスしてきた。

4つ目の商品DISCSは、消費者のフィードバックをもとに、開発チームが60を超える変数を最適化したという。

出典:SIMULATE

公式ホームページには、NUGGSが過去にバージョンアップされた「履歴」が日付、バージョンと共に記載されている。各バージョンには都度、どのような変更が加えられたかが、まるでソフトウェア製品のように記載されている。

「私たちはユーザーからのフィードバックを受け取り、改善すべき点を見つけ、製品の新しいバージョンを開発するときにはユーザーに知らせます」。

SIMULATEのチキンナゲットNUGGSは現在、アメリカのウォルマート、ホールフーズなど、5000箇所を超える小売で販売されている。

年末までに取扱い店舗をさらに1万店舗増やすとしている。レストランやファーストフードでの販売に向けた準備も進めており、アメリカ以外ではカナダに進出している。

史上最年少でベンチャーキャピタルから出資を受けた創業者

SIMULATEはオーストラリア、シドニー出身のBen Pasternak氏が2018年に設立したスタートアップ。

現在21歳のPasternak氏がこれまでに設立した会社はSIMULATEを含め3社。

創業者のBen Pasternak氏 出典: Sydney Morning Herald

Pasternak氏が最初に立ち上げた会社は、若者向けSNSアプリを開発するFlogg。次いで17歳で若者向けビデオチャットアプリの会社を共同創業し、18歳で3社目となるSIMULATEを創業。

10代でソフト開発に目覚め、何百万回もダウンロードされるゲームを開発したPasternak氏は、FacebookとGoogleからのインターンのオファーを辞退し、15歳で高校を中退。そして15歳という最年少でベンチャーキャピタルから出資を受けてメディアの注目を集めた。

タイム誌からは2016年に、世界で最も影響力のあるティーンエイジャーの1人に選出されている。

GFIによると、2020年のアメリカの植物肉市場は14億ドル規模となり、前年比1.45倍に成長している。

出典:SIMULATE

アメリカでSIMULATEの直接的な競合となる企業には、NowadaysRebellyousのほかに、小売大手のターゲット、食肉加工大手のタイソンフーズがいる。

ターゲット、タイソンは自社ブランドで植物チキンナゲットに参入しており、SIMULATEが小売での展開を拡大するうえで、これら大手との競争は避けられそうにない。

SIMULATEは今回調達した資金で、チームを3倍に拡充、新商品の開発を加速、生産のスケールアップ、小売での展開を拡大し、海外進出を図る。

 

参考記事

SIMULATE, Maker of NUGGS Plant-Based Chicken, Raises $50M

‘Tesla Of Chicken’ Food Tech SIMULATE Launches New Plant-Based Discs

Ben Pasternak Wikipedia

オンライン広告が大反響を巻き起こした人工肉ナゲット「Nuggs」開発Simulateが約55億円調達

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:SIMULATE

 

関連記事

  1. 菌糸体からベーコンを開発する米MyForest Foods、年産…
  2. 極限環境微生物で代替パーム油を開発するシンガポール企業Biteb…
  3. ドイツのAlife Foodsがアニマルフリー培養培地を用いて培…
  4. 菌糸体由来チーズを開発するベルギー企業Bolder Foods、…
  5. Vivici、欧州企業で初となる精密発酵タンパク質のGRAS自己…
  6. 世界初!米Biomilqが細胞培養でヒトの母乳を体外で作製するこ…
  7. ShiruがAIプラットフォームで開発した最初の製品「OleoP…
  8. ビーガンペットフードのWild Earthが約25億円を調達、来…

おすすめ記事

最短30秒で調理する自律調理ロボットを開発したRoboEatz、1台目をラトビアに設置予定

カナダ、米国、ラトビアに拠点を置くRoboEatzは、自社の調理ロボットを「世界…

材料毎に投入タイミングを制御するスマート調理ロボットOliver

ほかの料理の準備で焼きすぎてしまったり、ゆですぎてしまったり、料理には失敗がつき…

スーパーミート、システムのオープンソース化で培養肉の商用化を加速

イスラエルを拠点とする培養肉企業スーパーミートが商用化に向けて加速している。…

ユニリーバのBen & Jerry’s、アニマルフリー製品の主原料をオーツ麦へ切り替え

食品・日用品大手のユニリーバは今月、人気の乳製品ブランドであるBen &…

砂糖削減・代替砂糖ソリューションを開発するスタートアップ企業13社まとめ

砂糖の過剰摂取による健康上の不安から、砂糖のイノベーションに取り組むスタートアッ…

イスラエル大手食品会社Tnuva、代替タンパク質特化のR&Dセンター設立へ

イスラエル大手食品会社Tnuva(ツヌバ)は代替タンパク質分野の取り組みを強化す…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

リアルセミナー@東京のお知らせ【2025/6/18】

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(05/29 15:12時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(05/30 01:07時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,940円(05/30 05:05時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
2,156円(05/29 21:13時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,980円(05/30 13:17時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(05/30 00:19時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP