代替プロテイン

フランスのYnsectは昆虫由来のバーガー、ナゲットの販売を目指す

 

フランスの昆虫食企業Ynsectが開発するバーガーやナゲットが、数年以内にイギリスのファーストフードで販売されるかもしれない。

Ynsectは欧州で垂直農場によりミールワームを生産するスタートアップ企業。同社は20代~40代のZ世代・ミレニアム世代をターゲットに、昆虫ベースの代替タンパク質を提供したいと考えている。

2011年にパリに設立されたYnsectは、魚、ペット、人間、植物向けに、昆虫から高価値な素材の開発を手掛ける。

創業以来、魚の餌、動物飼料を中心に取り組んできたが、人間用の昆虫素材を開発するオランダ企業Protifarmを買収してから、人間が消費する昆虫タンパク質に焦点をシフトした。

出典:Ynsect

Ynsectは現在、昆虫タンパク質のなかでも、ミールワームの開発に力をいれている。

ミールワームとは、ゴミムシダマシ科の甲虫の幼虫の総称で、鳥や小動物などペットの餌として使われることが多い。

欧州では1月に、欧州食品安全機関(EFSA)が食品としてのミールワーム粉末は安全性に問題ないという結果を発表した。これは人間が消費するミールワームをEUが認めたこととなる。

iNewsの報道によると、Ynsectはイギリス、オランダ、タイ、日本などでファーストフード企業と提携し、昆虫ベースのバーガー、ナゲット、ソーセージを開発し、販売を目指す

同社は現在、フランスに、オランダにそれぞれ生産施設を構える。プロトタイプはオランダで開発済みで、昆虫バーガーは「味の点で本当に驚きです」とCEOのAntoine Hubert氏は語る。

フランス北部アミアンに建設中の工場イメージ 出典:Ynsect

Ynsectはまず、スポーツ用栄養ドリンクやプロテインバーに使用されるホエイプロテイン(牛乳に含まれるタンパク質の1つ)の代わりとして、昆虫タンパク質粉末の販売から開始する予定。

食料源として昆虫を使うことへのネガティブなイメージを取り払い、昆虫肉を販売する前に、一般の人の受容度を高めておきたい狙いがある。

昆虫タンパク質市場は、2027年には46.3億ドル相当になると予想される

Ynsectはこれまでに総額3億9930万ドル(約437億円)を調達している。この資金の大部分を昆虫食の開発に投入するとしている。

Hubert氏は昆虫タンパク質の領域では、多くの労力が技術開発に費やされ、「マーケティングへの投資はほぼ行われてこなかった」とコメントし、ブランドを構築し、SNSのインフルエンサーに協力を仰いで、フォロワーに商品を紹介してもらうことを示唆している。

Ynsectは現在、フランス北部アミアンに世界最大の昆虫用生産工場を建設している。この工場は同社にとって3つ目の生産施設となる。2022年早期に稼働をスタートする予定で、完成すると年間10万トンの生産量、500名の雇用を見込める規模となる。

同社はカリフォルニアを拠点とするベンチャーキャピタルUpfront Ventures、ハリウッドスターであるロバート・ダウニー・Jr氏のベンチャーキャピタルFootPrint Coalition Venturesなど主要な投資家から出資を受けており、アメリカ進出も視野にいれている。

世界人口の増加に伴い、人間が消費するだけでなく、魚、家畜の食料源として、世界中でタンパク質の需要が高まっている。2050年には世界人口が約100億人に達すると予想される中、畜産に代わる新たな代替タンパク質の手段として、昆虫食が注目されている。

出典:Ynsect

オランダ、マーストリヒト大学の研究チームは、ミールワームがタンパク質の消化、吸収、筋肉生成に関して乳タンパク質と同等であることが見いだした。研究チームは、乳タンパク質とミールワーム由来の昆虫タンパク質に対する人体の反応に違いはなかったと結論づけている。

EUが粉末ミールワームの承認したことからも、今後は新たなタンパク質源として昆虫食の可能性に一層の注目が集まりそうだ。

 

参考記事

French start-up Ÿnsect hatches plan for fast food restaurants to sell insect burgers and nuggets

Insects as packed full of digestible protein as milk, study finds

 

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アイキャッチ画像の出典:Ynsect

 

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