3Dプリンター

ケーキのデコレーションを可能にするCakewalk3D、自宅の3Dプリンターがフードプリンターに変身!

 

このニュースのポイント

 

3Dプリンターをフードプリンターに変身させるCakewalk 3D

スライサーソフトの制限がなく汎用性が高い

●クラウドファンディング後の販売価格は約2万円を予定

 

 

ケーキのデコレーションで失敗したことのある人に嬉しいニュースだ。

あなたが持っている3Dプリンターをフードプリンターに変身させるCakewalk 3Dが登場した。

Cakewalk 3Dは3Dプリンターに取り付けるエクストルーダー。これにより、ケーキやクッキーにオリジナルなデコレーションが可能となる。

既存の3Dプリンターをフード3Dプリンターに変えるスペシャルキットといってもよいだろう。

キックスターターで2020年11月28日までクラウドファンディングを実施している。

出典:Cakewalk 3D

注目したいのは、すでに3Dプリンターを持っている人は装置を新たに買う必要はないことだ。

Creality、Anet、Anycubic、Alfawise、Prusa などメジャーなFDMタイプの3Dプリンターで使えることをテスト済み。

FDMタイプの3Dプリンターならどの機種でも使えるという。

 

FDM3Dプリンターとは

FDMとは、3Dプリンターの方式の1つで、

材料を熱で溶かして、ノズルから押し出して積層する方式のこと

 

FDM方式の3Dプリンターにはさまざまな機種がある。下記写真はそのごく一部だ。

FDM3Dプリンターにはいろいろな機種がある 写真は当メディア運営者が購入したもの

下図のように、細いフィラメント(樹脂のこと)がエクストルーダーに送られると、フィラメントが溶け、ノズルから押し出されて積層していく。熱でフィラメントを溶かすので、熱溶解積層法とも呼ばれる。

出典:https://manufactur3dmag.com/working-fdm-fff-3d-printing-technology/

 

要するに、ソフトクリームのイメージだ。

3Dプリンターの材料を押し出すエクストルーダーをCakewalk 3Dに置き換えると、フードプリンターになる

もちろん、押し出される材料はプラスチックのフィラメントではなく、チョコレートやメレンゲ、ケチャップなど。

使い方は次のとおり。

 

①材料を用意して、シリンジに材料を投入する

②スクリューをセットする

③シリンジを3Dプリンターにセットする

④データを送信して3Dプリントする

 

 

写真のようにCakewalk 3Dのシリンジを3Dプリンターにセットして使う。

出典:Cakewalk 3Dより引用、編集

Cakewalk 3Dの粘性要件に合致すれば、たくさんのレシピを作れるという。

これまでに、

 

●チョコレート

●メレンゲ

●ベジタブルピューレ

●ケチャップ

●ガカモーレ(アボカドのディップ)

●はちみつ

 

の3Dプリントに成功している。

出典:Cakewalk

キックスターターで購入するとミックスパウダーがついてくるので、水を加えて泡立てたものをシリンジに入れるだけ。

現在は、メレンゲ、トマトスナック、ヴィーガン用フルーツの3種類のミックスパウダーがある。

Cakewalk 3Dのノズル径は現在は1mmのみ。今回のキャンペーンが成功したら、2mm、3mmのノズルの追加を検討しているが、機種を増やす予定はないという。

 

3Dプリンターの使用経験に応じて3つのキットから選べる

今回のキャンペーンでは、

 

●Maker kit

●Standard kit

●Best Value kit

 

の3つのキットが用意されている。

嬉しいことに、3DプリンターやDIYの経験値によって、自分に最適なプランを選べるようになっている。

Maker kit:49ユーロ(約6000円) エクストルーダー、スクリュー、プラットフォーム、パウダー(材料)

※カプラー、モーター、ネジは自分で用意

Standard kit:89ユーロ(約1万円) Maker kit+カプラー、モーター、ネジ(Cakewalk 3Dの全セットに相当

※必要なサポート部品は自分で3Dプリント

Best Value kit:129ユーロ(約1.5万円) Standard kit+組み立て済み部品、パウダー2つ(計3つ)
3Dプリンター+Best Value kit:459ユーロ(約5.6万円)
Cakewalk 3Dを取り付け済みの3Dプリンター

3Dプリンターが初めての人は、組み立て済みで届く3Dプリンター付きキットがおすすめ。

 

スライサーソフトは何でもOK

 

Cakewalk 3Dで驚きなのが、専用のスライサーソフトが不要なことだ

自分が使うソフトで3Dデータをスライスすればよい。

スライサーソフトについて補足すると、

3Dデータを3Dプリンターが認識できる形に変換するもの。

 

スライサーソフトは、駅の切符に置き換えてイメージするとすっきり理解できる

改札に入るとき、現金ではなく切符や電子マネーを使う。

改札が認識しやすいように現金を切符に変える必要があるように、3Dプリンターにデータを送るときも、3Dプリンターが認識できる形にデータを変換してあげる必要がある

つまり、切符販売機がスライサーソフトだ

3Dプリンターを使う場合、スライサーソフトの使い方を覚える必要があるが、Cakewalk3Dなら自分が使っているスライサーソフトを使える点で、非常に汎用性があるといえる。

Cakewalk3Dが推奨するパラメーターはこちらのページに記載してある。

キャンペーン終了後の販売価格は169ユーロ(約2万円)になる予定。キックスターターで購入する方が、40ユーロ安くなる。

開発者はパティシエのMarine Coré-Baillais。パティシエに転身する前は、フランスの3Dプリンター企業SculpteoのCEOだった。

開発者のMarine Coré-Baillais 出典:Cakewalk 3D

Coré-Baillaisが実現したかったのは、低コストで実用的で、誰でも使えるフード3Dプリンター

既存のフードプリンターよりも安いものを提供したいと考えた。そのため、3Dプリンターを新たに開発するのではなく、既存の3Dプリンターを利用してさらに実用的にする方法を研究した。その成果物がCakewalk 3Dだ。

Statistaによると、3Dプリンターの出荷数は2027年には800万個を超えると予測される。その数は2018年の5倍以上。3Dプリンター保有者が増えるということは、Cakewalk 3Dがさらに多くのユーザーに浸透していくことを意味する。

個人のDIYユーザーから、ケーキ屋やレストランで活躍する3Dプリンターが増えていくだろう。

Cakewalk 3Dのクラウドファンディングにはすでに180人が支援している。当初の目標額123万円をこえる、274万円を調達した。キャンペーンは残り15日。

購入者すると、クリスマス前にCakewalk 3Dのキットが届く。

今年のクリスマスはオリジナルのデコレーションケーキにしてみてはどうだろう?

参考記事

Cakewalk 3D – a handy food extruder for your own 3D printer

Cakewalk3D: Turning a Desktop 3D Printer into a Food Printer

Kickstarter: Cakewalk Brings Edible 3D Printing to Your Home

アイキャッチ画像の出典:Cakewalk 3D

 

関連記事

  1. 植物性代替肉SavorEatがイスラエルでIPO(上場)、202…
  2. 培養肉アレフ・ファームズ、安価でオープンな増殖培地の開発でWAC…
  3. 培養肉企業MeaTechがベルギーに培養脂肪のパイロット工場を建…
  4. イスラエルのPlantishが3Dプリントされた植物性サーモンを…
  5. セイバーイートが植物肉用3Dプリンターをアメリカの大学へ初導入
  6. Aleph Farmsと三菱商事が日本での培養肉導入に向けて協業…
  7. バイオ3Dプリンターで植物性代替サーモンを開発するLegenda…
  8. Redefine Meatが3Dプリント肉を2021年前半に販売…

精密発酵レポート好評販売中

おすすめ記事

SavorEatがパーソナライズ化された3Dプリント植物肉バーガーを発表

イスラエルのSavorEatは28日、3Dプリンターを搭載したロボットシェフのプ…

培養肉企業メンフィス・ミーツが社名をUPSIDE Foodsに変更、年内に培養鶏肉の販売を目指す

世界で最初に培養肉バーガーを発表し、話題を呼んだオランダ企業モサミートとあわせて…

イスラエルのImagindairy、精密発酵乳タンパク質を生産する工業規模の自社生産ラインを発表

イスラエルの精密発酵企業Imagindairyが、アメリカでのGRAS認証取得に…

米SCiFi Foodsが培養牛肉製品で初のLCAを実施、環境メリットを証明

培養牛肉を開発するアメリカ企業SCiFi Foodsは、培養牛肉製品について初と…

培養魚を開発するBlueNaluが史上最大の約62億円を調達、パイロット工場の完成・年内にテスト販売へ

細胞を培養して水産物を開発するBlueNaluが6000万ドル(約62億円)を調…

DICがスピルリナ由来ヘムを開発する米BYASに出資を発表

DICは、藻類由来製品の事業拡大のために米Back of the Yards A…

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

精密発酵レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

▼運営者・佐藤あゆみ▼

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,671円(04/25 12:13時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(04/25 21:31時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(04/26 01:03時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(04/25 18:05時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(04/26 10:47時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(04/25 21:01時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP