デリバリー

新鮮な食材を買える自販機3.0のFarmer’s fridgeがコンタクトレス決済とデリバリーサービスを追加

 

このニュースのポイント 

●ATMのように簡単に新鮮な食材を変える自販機3.0

●8月にコンタクトレス決済機能を追加

●新型コロナの感染拡大のためデリバリーを開始

デリバリーの占める割合は自販機の2倍に

 

 

フードテックの高まりとともに、大きく変身しつつあるのが自販機だ。

これまでの決まったものだけ注文する仕組みではなく、ドリンクやフードの調理・トッピング機能が本体に搭載された自販機が登場している。

そうした自販機は、新しいタイプの自販機として自販機3.0と呼ばれる。自販機3.0は、2020年の新型コロナの感染拡大を受けて需要が高まっており、新しいスタートアップが続々と登場している。

今回紹介するのは、シカゴ発の自販機3.0スタートアップのFarmer’s fridge

シカゴを中心に新鮮なサラダ、サンドイッチ、巻物などを販売する自販機を展開している

空港、病院、ドラッグストアなどに配置され、24時間いつでも新鮮な食材を5ドル~8ドルで購入できるのが特徴だ。

感染対策のためコンタクトレス決済を追加

出典:Farmer’s fridge

2019年の時点で、Farmer’s fridgeの自販機はシカゴとミルウォーキーの空港、病院、ドラッグストア、コンビニ、Amazon Go Storeなどの小売店などに250台設置されていた。

以前は決済の時にタッチパネルをタッチする必要があったが、新型コロナの感染拡大に伴い、同社は早急にコンタクトレス決済機能を持つ試作品の開発に乗り出す。今年8月末には、自販機全体の8割に非接触決済機能を追加した

コンタクトレス決済はアプリを通じて行う。

ユーザーはアプリで注文したい自販機を選び、注文する。注文した商品は、ユーザーがピックアップに来るまで指定された自販機に置かれ、商品には識別コードが印字される。

ユーザーは指定した自販機まで行き、注文済みの商品を受け取ればよい。注文する自販機を間違えた場合は、キャンセルし再注文できる。

出典:Farmer’s fridge

アプリによるコンタクトレス決済は、ユーザーだけでなくFarmer’s fridgeにもメリットがあった。在庫データをクラウド上で管理できるようになり、これまでより正確に在庫管理できるようになった

コンタクトレス決済を導入後、Farmer’s fridgeの全注文の2割がアプリ経由となり、その数は増え続けているという。

自販機3.0に加え、デリバリーサービスも開始

出典:Farmer’s fridge

新型ウイルスの影響を受けて、Farmer’s fridgeが新たに追加した機能はコンタクトレス決済だけではない。デリバリーサービスも開始した。

新型コロナが発生するまでは、オフィス街に自販機を設置し、ランチタイムなどに気軽に新鮮なサラダを買えることを強みとしていた。

しかし、感染拡大により自宅待機や在宅勤務にシフトする人が増えるなか、同社はデリバリーの比率を増やさざるをえなくなる

実際に2020年3月以前は、同社のビジネスモデルはすべて自販機だったが、自販機ビジネスは全体の1/3にまで低下したという。

Farmer’s fridgeが取った施策が、デリバリーを拡充に加え、期間限定のシェフとのコラボ。

レストランでおいしい食事をしたいという顧客のニーズをくみ取り、数名のシェフとコラボして、デリバリー限定の特別メニューを開発した。

出典:Farmer’s fridge

この施策のうまいところは、レストランで食事をしたい顧客の願いを叶えるだけでなく、コラボするシェフにとってはマーケティング戦略になることだ。

たとえば、シカゴでレストランを経営するシェフの場合、シカゴ以外のニューヨークやニュージャージーといった都市にも自分を売り込む絶好の機会となる。

Farmer’s fridgeのデリバリービジネスはすでに自販機ビジネスの2倍になっているという。

同社のデリバリーサービスの概要は次のとおり。

 

●1回の最低注文価格は25ドル

●2時間以内にお届け

●受け渡し時に配達員との接触もなし

●ユーザーは置き場所を電話で確認して、指定の場所に置く

 【例】「ドアの前の保冷箱に入れておいてください」と指示

●75ドル以上の注文で配送料無料

●注文が75ドル未満の場合は価格に応じた配送料に

 

配達エリアは、シカゴ、インディアナポリス、ニューコーク、ニュージャージー

Farmer’s fridgeの自販機から廃棄される食品は全体の5%と高くないが、廃棄物については、残った食品をGreater Chicago Food Depositoryというフードバンクに配達するシステムが構築されている。

創業者・CEOのLuke Saunders 出典:Luke Saunders, Founder and CEO, Farmer’s Fridge

Farmer’s fridgeは2013年にシカゴに設立されたスタートアップ。

これまでに総額4200万ドルを調達しており、最新のラウンドは2018年のシリーズCラウンドで、3000万ドルの出資を受けている。主な出資者は、アメリカのInnovation Endeavors、PowerPlant Venturesなど。

 

参考記事

Farmer’s Fridge Adds Contactless Ordering and Payment

Farmer’s Fridge wants to make eating healthy food as easy as getting money from an ATM

Farmer’s Fridge Expands to Delivery, Announces Chef Collaborations

 

アイキャッチ画像の出典:Farmer’s fridge

 

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