新型コロナウイルスの発生で、急速な変化を求められている分野の1つがフードロボットや自販機だろう。
大学やオフィス街などこれまでの「需要のあった」場所が、オンラインへの移行により「需要のない」場所になりつつある。
感染者数が特に多い諸外国では、好みに応じて自由にトッピングできる機能を搭載した自販機やフードロボットが次々と登場している。
こうした移動型レストランともいえるフードロボット・自販機は、オーダー、調理、提供、決済のすべてに人手を介さない点で、withコロナ時代のニーズに極めてマッチした新しい形態といえる。
今回は、新型コロナによりビジネスモデルを転換し、活路を開こうとしているスムージーに特化したキオスクロボットBlendidを紹介する。
目次
徹底したコンタクトレス!スムージーロボットBlendid

出典:Blendid
Blendidのスムージーに特化したキオスクロボットは、同時に9つのドリンクを作ることができる。単関節型のロボットアームが材料を取り出し、混合する。
1時間に作るドリンクは45個。
1つのスムージーは約6ドルだ。
材料はカウンター奥のガラス張りの中にあるため、注文者からは離れた場所にある。
さらに、キオスクロボット全体もガラスで囲まれており、外部からの異物の混入を防げる構造になっている。
ドリンクが完成したら、注文者は小さな受け取り口から受け取る。
Blendidのスムージーロボットは注文から受け取りまで完全にコンタクトレスを実現している。

出典:Blendid
注文はタッチスクリーンを使わず、スマートフォンでできるからだ。ユーザーはアプリで好みの味や栄養にカスタマイズして注文する。
10月には新しい機能が追加された。
注文者が受け取りに来るまで、ロボットがドリンクを取っておいてくれる機能だ。
動画を見ると、U字型の平らなアームがカウンターを動き、ドリンクを受け取り口まで運ぶのがわかる。
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これにより、ユーザーがキオスクの前で待機する時間が劇的に短縮される。
事前に注文でき、ロボットがドリンクを取っておいてくれるため、ユーザーが注文してからドリンクが完成されるまで待つ時間がなくなる。
このように、Blendidが実現するコンタクトレスはドリンクを作る側だけではなく、注文するユーザー側の非接触性も大きく向上させる。
Blendidによると、キオスクロボットの導入コストは10万ドル。
新型コロナによりビジネスモデルを転換
新型コロナが発生する前は、Blendidのロボットのほとんどは、サンフランシスコ大学やソノマ州立大学など大学構内に設置されていた。
最初の導入場所は、シリコンバレーにあるアクセラレーターの中だった。
しかし、コロナウイルスの感染拡大により、大学の授業がオンラインへ移行すると、Blendidはロボットにほかの活躍の場所を探さざるを得なくなった。
Blendidは当初は自社でキオスクを所有するビジネスモデルだったが、事業拡大のため、他社にライセンス提供するビジネスモデルへと移行する。
その結果、10月に1つ目の躍進があった。
世界最大のスーパーマーケットチェーンであるウォルマートへの導入に成功した。

出典:Blendid
カリフォルニア州フリーモントのウォルマート店内にスムージー専門のキオスクをオープンした。これは同社にとって4つ目の導入場所であり、小売業への参入に成功した初の事例となる。
人よりもコンタクトレスな環境でドリンクを作れるBlendidのキオスクは、コロナウイルスの感染がまだ収束しない今、非常に歓迎されるサービスといえる。
自販機やフードロボットの企業は多い中、Blendidのロボットは他社の一歩先を行く。
前述のとおり、注文はアプリででき、タッチスクリーンに触れる必要がないからだ。
コンタクトレスな注文は、他社が急ピッチで進めている機能だ。最近の例では、自販機3.0のFarmer’s fridgeがコンタクトレス決済機能を追加した。
スムージーで有名なJambaと共同ブランディング

出典:Blendid
今月、Blendidはスムージーに特化した食品会社Jambaと共同ブランドを発表した。
Jambaとの共同ブランドによる新型ロボットを、カリフォルニア州ディクソンのウォルマートに導入した。
Blendidにとって初の共同ブランドとなり、ウォルマートへの導入は10月に続いて2店舗目となる。
この新型ロボットには、JambaとBlendidのメニューが両方採用されている。
Jambaとのコラボは、Blendidのブランド認知を急速に向上させる効果がある。
というのも、Blendidの認知度はJambaよりも高くない。Blendidのロボットを初めて見る人は、しばらく眺めていれば、このロボットがどうやらドリンク、特にスムージーを作ることに特化していることは理解できる。
しかし、もし、Jambaのロゴが先に目に入ったらどうだろうか?Blendidのロボットが何かは瞬時に理解できる。スムージーを作る会社としてJambaの知名度が高いからだ。
Jambaとのコラボは今回が終わりではなく、別の設置場所を想定したロボットについても検討しているという。
この共同ブランドによるロボットが、ウォルマートに導入された2例目となることにも注目したい。
ウォルマートへの導入でよい反応が得られれば、他店舗のウォルマートへも導入されていく可能性がある。
株式投資型クラウドファンディングを開始
Blendidは今月、資金調達とブランド認知向上のため株式投資型クラウドファンディングング(Equity Crowdfunding:株式型CF)を開始した。
クラウドファンディングは投資家から資金を集め、出資者へのリターンの種類によっていくつかに分類される。
株式型CFは金銭によるリターンを受け取れる投資型クラウドファンディングの1つで、出資の見返りとして株式を受け取ることができる。
株式型CFでは募集時に目標調達額を決める。集まった金額が目標額を超えなかった場合、募集は失敗とされ、クラウドファンディング実施者が資金を得ることはできない。
Blendidの目標調達額は500万ドルで、現在までに30万ドルが集まっている。クラウドファンディングに参加するための最低出資額は100ドル。
株式型CFはフードロボット企業が資金を調達する手段として近年人気だ。
2020年だけでも、Miso Robotics、Kiwibot、Piestro、Bobacino、Small Robot Companyが実施または発表をしている。
クラウドファンディングに先立ち、BlendidはBenhamou Global Ventures、Plug & Play、Hone Capital、Partech Venturesから1350万ドルの出資を受けた。
苦しかった2020年
株式型CFを実施するにあたり、Blendidは会社の経済状況を公表した。
公表された収益を見るかぎり、2020年は同社にとって苦しい時期だったことがうかがえる。
Blendidは2つの大学にキオスクを導入していたが、新型ウイルスによるオンライン授業への移行により、ほとんど稼働できずにいた。2020年第3四半期の収益は大幅に落ち込み、わずか546ドル(約56000円)だった。

出典:Blendid
第4四半期は2488ドルとやや増加傾向にある。これは、巨人ウォルマート2店舗への導入、そのうち1店舗はJambaと共同ブランディングしたことによるだろう。
Blendidはもともと自社でキオスクを所有し、オペレーションを行っていたが、事業拡大のため、他社にライセンス提供するビジネスモデルに移行を決めた。
Jambaやウォルマートなどとの提携の実現は、ライセンスビジネスへの移行が功を奏した例といえる。
今後もほかの食品サービス業の企業と提携し、ブランドの認知向上を狙っていくだろう。
最終目標はスムージー以外の食品もカバーすること
Blendidは2015年にVenki Ayalur、Vipin Jain、Vijay Doddによって設立されたスタートアップ。
スムージーを作るキオスクロボットから事業を開始したが、最終的にはスープ、丼物、サラダなど幅広い食品もカバーするのを目標としている。

出典:Blendid
同社のロードマップによると次のように、2024年頃に欧州・アジアへの進出も考えていることがわかる。
~2021年 | 100か所に設置 |
2022年 | さらに100か所に設置 |
2023年・2024年~ |
サラダ、コーヒー、スープ、丼物
2000か所に設置 欧州・アジアに進出 |
クラウドファンディングの詳細はこちらから。
参考記事
Exclusive: Blendid Opens Robot Smoothie Kiosk at a Walmart in Fremont, CA
Exclusive: Blendid and Jamba Co-Brand New Smoothie Robot
Robot Smoothie Company Blendid Launches Equity Crowdfunding Campaign
Blendid’s New Feature Has the Robot Hold Your Smoothie Until You’re Ready
アイキャッチ画像の出典:Blendid
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