アップサイクル

二酸化炭素からタンパク質を作る米NovoNutrientsが約28億円を調達、新たにペットフード市場も視野に

2024年9月29日更新:当初の記事で、会社名を旧称Oakbioと記載しておりましたが、Oakbioは正式商号で現在も登記されており、NovoNutrientsは事業上の呼称であることを確認しましたので訂正しました。不正確な情報を記載して、大変失礼いたしました。

 

二酸化炭素、水素、微生物を活用して持続可能なタンパク質を開発する米NovoNutrientsは今月、シリーズAラウンドで1,800万ドル(約28億円)を調達したことを発表した

ラウンドは世界的な大手エネルギー企業Woodside Energyが主導、先進的・持続可能な素材に出資する中国のCM Venture Capitalが共同主導し、IndieBioDecarbonization ConsortiumHappiness Capitalなどが参加した。

NovoNutrientsは昨年4月、大規模なパイロットシステムの構築支援でWoodside Energyと技術開発契約を締結した

TechCrunchの報道によると、現在サンフランシスコ・ベイエリアにパイロット工場の建設を進めている。パイロット工場の完成後は、商用規模のバイオリアクターへの投資を投資家に納得させるデータを得たいと考えている。

人間向け食品・飼料に加え、新たにペットフード市場も視野に

出典:NovoNutrients

NovoNutrientsは独自のガス発酵技術、微生物を使用して、産業で生じる二酸化炭素を牛肉と同等の栄養価を持つ完全なタンパク質に変換する。

微生物に水素、二酸化炭素、酸素を供給し、栄養価の高いタンパク質成分Novoteinを生成。これにより、農業、最終的には化石燃料から切り離された新たな食料システムが実現すると述べている

同社の飼料製品に関連した出願特許によると、複数の微生物培養により二酸化炭素、水素、酸素からバイオマスを生成。微生物コンソーシアムプラットフォームにより、単一培養では得られない栄養価の高い飼料成分を提供できるとしており、Cupriavidus属、Rhodococcus属、Methylococcus属など複数の微生物を挙げている。

同社は2022年5月、自社タンパク質が体内でのタンパク質の消化性や利用性を判断するPDCAAS(たんぱく質消化性補正アミノ酸スコア)で、牛肉スコアと同等の1.14を達成したことを発表した。これまでに日本でも試験を実施している。

昨年5月には、抗酸化物質として機能するカロテノイドをキログラム単位で生産したことを発表した。前述の出願特許がカロテノイド生産に関連していると思われる(請求項21)。

NovoNutrientsは自社タンパク質Novoteinについて、これまで人向け食品、飼料を用途に想定してきたが、この1年でペットフード会社からの引き合いが多かったことをTechCrunchに述べている。

NovoNutrientsのように二酸化炭素からタンパク質を作る企業には、Deep BranchAir ProteinソーラーフーズAvecomJooulesなどがある。国内では、CO2資源化研究所が富士フイルムと、アミノ酸の一種・アラニンの量産化技術で共同研究を行うなど、近年取り組みが増えている。

CO2資源化研究所は今年5月、約28億円を調達し、水素細菌由来の代替タンパク質開発のパイロットスケールでの製造技術を確立し、グローバルに展開する準備を加速することを発表した。二酸化炭素から代替パーム油の開発を目指すライオンも同社への出資に加わった

 

参考記事

NovoNutrients Raises US$18 million Series A led by Woodside Energy and co-led by CM Venture Capital

NovoNutrients tweaks its bugs to turn CO2 into protein for people and pets

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:NovoNutrients

 

関連記事

  1. 卵黄・卵白に分かれた植物ベースの全卵を開発するFloat Foo…
  2. 微生物、空気、電気を使ってタンパク質を開発するSolar Foo…
  3. ミツバチを使わない「本物のハチミツ」を開発する米MeliBio
  4. 南アフリカの培養肉企業Mzansi Meatが来月、アフリカ発の…
  5. 精密発酵でカカオを使わずにチョコレートを開発する独QOAとは
  6. 中国の植物肉企業Starfieldが約114億円を調達、湖北省に…
  7. イスラエルの培養肉企業Steakholder Foodsが日本で…
  8. FAOとWHOが培養肉の安全性に関する新レポートを発表

おすすめ記事

ビーガンハチミツのMeliBio創業者に聞く|精密発酵によるハチミツの開発とターゲット市場

「地球上からミツバチが消えたら、人間は4年しか生きられない」というアインシュタイ…

Steakholder Foodsが台湾進出に向け、台湾の工業技術研究院と提携

独自の3Dプリンターで植物由来や細胞由来の代替肉・代替魚を開発するイスラエル企業…

バイオ3Dプリンターで代替肉を開発するスペイン企業Cocuusが約3.5億円を調達

スペインのスタートアップ企業であるCocuusは、プレシリーズAで250万ユーロ…

Yali Bioが精密発酵による代替乳脂肪を使用したアイスクリームを発表

カリフォルニアを拠点とする精密発酵企業Yali Bioは、サンフランシスコで今月…

米The Every Company、精密発酵で作られた史上初の液状卵EVERY Eggを発表

精密発酵で卵白タンパク質を開発する米The Every Companyが、鶏に依…

再生医療学会・培養肉シンポジウムレポート|再生医療研究者が「培養肉」をテーマに集結

先月開催された第21回日本再生医療学会総会では初の試みとして、「培養肉開発の現状…

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(12/05 14:11時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(12/05 23:53時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(12/05 03:34時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(12/05 20:06時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(12/05 12:21時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(12/05 23:07時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP