代替プロテイン

二酸化炭素、水素、微生物からタンパク質を作る米NovoNutrientsが約5.1億円を調達

 

工業的に排出された二酸化炭素、水素、微生物を活用して代替タンパク質を開発するNovoNutrientsが、ベンチャーラウンドで470万ドル(約5億1500万円)を調達した。

ビヨンドミート、3Dプリンター肉のRedefine Meat、昆虫食スタートアップのYnsectなどに出資している香港のベンチャーキャピタルHappiness Capitalがラウンドを主導した。

水素、酸素、二酸化炭素から作られるタンパク質

出典:NovoNutrients

NovoNutrientsが用いる技術は発酵で、ブドウをワインに、小麦をビールに変えるプロセスに似ている。

ワインの醸造では、酵母がブドウに含まれる糖をアルコールに変えるのに対し、NovoNutrientsは、二酸化炭素を栄養源に生育する微生物を活用する。

プレスリリースによると、NovoNutrientsのタンパク質は、大豆よりも優れたアミノ酸プロファイルを有するという。

「大型セメント工場の年間排出CO2で800トン以上のタンパク質を生産できる」

NovoNutrientsは調達した資金で、製油所、石炭火力発電所、セメント工場などから排出される二酸化炭素を補足する実証プログラムの完了を図る。

当面は、発酵技術をスケールアップできることを示すことに注力し、温室効果ガスを多く排出する工業施設にバイオリアクター(発酵槽)とシステムを共同設置する。

現在のバイオリアクターは1000L規模だが、まもなく2万Lでの工業的実証を行う

NovoNutrientsの主力製品はタンパク質粉末となる。天然由来で、遺伝子組換え原料を含まず、肉に存在するアミノ酸をすべて含む、完全なタンパク質だという。

実証システムのレンダリング画像 出典:NovoNutrients

NovoNutrientsは2018年11月に行われたIndiebioデモDayから3年間で、最初の製品の10倍の市場価値を持つタンパク質ベースの製品のプロトタイプを開発している。

同社によると、大型セメント工場から排出される年間の二酸化炭素で、NovoNutrientsのタンパク質粉末30億ドル分を生産できる。これは、ネブラスカ州で生産される1年分の大豆約3億3000万ブッシェル(約898万トン)に匹敵する

当面は、水産養殖用飼料となるタンパク質に焦点をあてるが、人間が消費する代替肉の市場にも注力していく。従来の食肉システムからの移行を加速させるための製品の開発にもリソースを投入し始めている。

タンパク質生産システムのライセンス供与もスタート

公式サイトによると、二酸化炭素から大規模にタンパク質を作るシステム構築に必要な技術のライセンス供与はすでにスタートしている。

食肉・水産業だけでなく、ビヨンドミート、メンフィスミーツ、インポッシブルフーズなど動物を使わずに代替肉を開発する企業も支援する姿勢を示していることから、NovoNutrientsがCO2由来のタンパク質生産システムのライセンスを、フードテック企業へ供与する可能性も考えられる。

Solar Foodsが開発したタンパク質Solein 出典:Solar Foods

NovoNutrientsのように二酸化炭素を原料にタンパク質を作る企業には、Air Protein、Solar FoodsDeep Branchなどがある。

NovoNutrientsは2017年にBrian Sefton氏によって設立されたカリフォルニア、サニーベールを拠点とする企業。

Brian Sefton氏は創薬からソフトウェア開発までさまざまな業界での起業経験をもつ、NovoNutrientsの中核となる知的財産の発明者。現在はアドバイザーを務める。

NovoNutrientsには戦略的パートナーシップの開発を担当する吉成久美子氏がいる。吉成氏は国際金融公社の幹部であり、20億ドルをこえるプロジェクト・ファイナンスを管理してきた経験を持つ。

 

参考記事

NovoNutrients Raises $4.7M to Complete Its Pilot Program for Alt-Protein Made from CO2 Inputs

NovoNutrients Scaling Up with Project Funding Plus $9M in Equity

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:NovoNutrients

 

関連記事

  1. 精密発酵でヘムを開発するPaleoが約17億円を調達、植物性食品…
  2. 米Mission Barns、米国で世界初の培養脂肪の販売認可を…
  3. オランダ政府が細胞農業に約82億円の出資を発表、国の成長計画とし…
  4. ドイツのマイコプロテイン企業Kyndaが約4.7億円を調達、大手…
  5. 微生物発酵で脂肪を開発するNourish Ingredients…
  6. The Better Meat Co.がシンガポールでマイコプロ…
  7. 培養魚のWanda Fishがタフツ大学と独占的ライセンス契約を…
  8. フードテックの祭典Smart Kitchen Summit 20…

おすすめ記事

QuornとPrime Rootsが菌糸体由来肉の市場拡大に向けて提携

Quornと米Prime Rootsは、アメリカ市場における菌糸体由来の代替肉の…

培養肉企業のパイオニア、モサミートがオランダに培養肉工場を開設

オランダを拠点とする培養肉企業モサミートは今月、オランダ、マーストリヒトに2,7…

ソーラーフーズがフィンランド薬局年金基金から約13億円を調達

フィンランド企業ソーラーフーズ(Solar Foods)は今月17日、フィンラン…

モサミートが培養牛脂の公式試食会をEUで初めて開催、ハイブリッドビーフパテを披露

オランダの培養肉企業モサミート(Mosa Meat)が今月、同社初となる公式試食…

Redefine Meatが3Dプリント肉を2021年前半に販売、イスラエルの食肉販売会社と提携

3Dプリンターを使って植物ベースの代替肉を開発するイスラエル企業Redefine…

イート・ジャストの培養肉部門GOOD Meatが約184億円を調達

アメリカ企業イート・ジャストの培養肉部門GOOD Meatが1億7000万ドル(…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(11/12 16:14時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(11/12 02:49時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(11/12 06:22時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(11/11 22:14時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(11/12 14:15時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(11/12 01:32時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP