シンガポールの培養シーフード企業Shiok MeatsがGaia Foodsの株式の90%以上を取得した。Gaia Foodsは細胞培養による牛肉、豚肉などを開発するシンガポールの培養肉企業。
今回の買収により、Shiok Meatsは既存の培養ロブスター、培養エビなどシーフードに加え、赤肉も手掛けることになる。
Shiok Meatsは2018年に設立された、細胞培養によりシーフードを開発するスタートアップ。同社は昨年11月に世界で最初に培養ロブスターを開発した企業となる。
これに対し、Gaia Foodsは細胞培養による牛肉、豚肉、羊肉など、ひき肉ではなく培養肉の切り身を開発している。
今回の買収は、Shiok Meatsが先月にブリッジローンにより資金調達を実施した(調達額は非公開)ニュースに続くものとなる。この資金調達時に、Shiok Meatsは2023年までにシンガポールでの市販化を目指すと語っていた。
TECH IN ASIAの報道によると、CEOのSandhya Sriram氏は「シーフード、赤肉の両方を提供できるようになったことと、戦略的投資家より最近調達した資金によって、商品化に向けて注力する準備ができています」と語り、今回のような事業拡大が同社の優先事項であるとしている。
Shiok Meatsは培養エビと培養牛肉をブレンドして、餃子、春巻き、麺類などの組合せ商品の開発を目指している。
両社はいずれもシンガポール、マレーシア、中国、日本、台湾、インド、韓国などアジア市場をターゲットとしている。
Gaia Foodsは2019年に設立され、わずか2年で培養肉のプロトタイプを開発している。買収により、Shiok Meatsは培養シーフードと培養赤肉の両方を手掛ける希少なフードテック企業となる。
「私たちは細胞ベースの甲殻類のプロトタイプを最初に発表しましたが、Gaiaは東南アジアで構造化された赤肉プロトタイプを最初に発表しました。それも、設立から2年以内にです。
これらは研究開発に関する限り、重要なマイルストーンであり、私たちのパートナーシップは業界にとって戦略的であると確信しています」
(CTO・共同創業者のKa Yi Ling氏)
これまでに培養肉が販売された国はシンガポールのみ。販売した企業はアメリカのイート・ジャストのみとなる。
今回の報道で、Shiok Meatsはアジアの複数国をターゲットとしてあげているが、まずシンガポールで販売許可を取得し、ほかの市場へも進出していくと考えられる。
シンガポールでは、昨年12月の培養肉販売に続き、今年4月には培養肉料理のデリバリーが実施されるなど、世界に先駆けた試みがなされている。
しかし、培養肉の市販化には依然として課題が残る。培養肉の開発では、細胞を培養して増殖させるための「種」となる細胞が不可欠となるが、細胞は一般に何回か分裂を繰り返すと、分裂を止め、死滅する。
これに対し、死滅することなく、無限に増殖できる状態を不死化といい、不死化した細胞のことを「細胞株」と呼ぶ。種がなければ目的の野菜を育てられないように、培養肉の開発においても、種となる「細胞株」の開発は重要な工程となる。しかし、新しい細胞株の開発は、時間とリソースを要し、6ヵ月~1年半かかることが多い。
このほか、細胞を成長させるための「栄養成分」となる培地コストも課題とされる。当初の培地には、動物由来成分が含まれていたため、生産コストを押し上げる要因となっていたが、現在は安価な培地の開発が進んでいる。
一般市民が培養肉を受け入れるかどうかも課題の1つとされる。
スタートアップの中には、実証プラントに培養肉の試食ができるスペースを設ける企業や、培養肉の試食に特化したレストランをオープンする企業など、いざ規制をクリアした後の市販化をスムーズにするため、消費者受容度の向上に取り組む企業もいる。
シンガポールに続き、年内にアメリカで培養肉の市販化を目指す動きも複数あり、今回の培養肉企業による同業買収は、培養肉業界をさらに前進させるエンジンとなりそうだ。
参考記事
Shiok Meats acquires Singapore cell-based red meat startup Gaia Foods
Shiok Meats Acquires Gaia Foods, Will Add Beef to Its Cultured Meat Lineup
Shiok Meats Acquires Gaia Foods As Cell-Based Meat Prepares to Take Off In Asia
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アイキャッチ画像の出典:Shiok Meats