二酸化炭素から代替タンパク質を開発するDeep BranchがシリーズAで800万ユーロ(約10億円)を調達した。
Deep Branchは畜産の持続可能性と二酸化炭素の排出量削減を両方実現するため、動物飼料用の代替タンパク質Protonを開発している。
大きな特徴は、二酸化炭素と微生物を使ってタンパク質Protonを作り出していることだ。
つまり、持続可能な動物飼料を実現するために二酸化炭素を「アップサイクル」している。
二酸化炭素と微生物から作られる代替タンパク質Proton

出典:Deep Branch
Deep Branchが開発したProtonは単細胞タンパク質(single cell protein:SOP)に分類される。
単細胞タンパク質は微生物タンパク質とも呼ばれ、
細菌や酵母など微生物の体内に含まれるタンパク質を指す。
糖類・デンプン・メタンなどを原料に微生物を発酵槽で培養して得られたものが、単細胞タンパク質となる。
通常、メタンや糖類をエサに使うが、Deep Branchの場合は二酸化炭素を使用するため、投入コストをより抑えられるというメリットがある。

出典:Deep Branch
空気から作られたタンパク質は原料が産業排出された二酸化炭素であるため、原料コストが安い。
Protonから作られる動物飼料は、魚粉飼料に匹敵する栄養があるほか、バリューチェーン全体で60%の温室効果ガス削減効果をもたらすという。
産業排出される二酸化炭素を原料とするため年間を通じて原料調達が可能だ。
つまり、季節的な価格変動や供給変動がなく、安定して供給できる。

出典:Deep Branch
Deep Branchによると、1人あたりが排出する二酸化炭素の約1/4が食事由来とされ、その大部分は動物性食品だとされる。
食事に伴う二酸化炭素排出量を削減するには、肉の消費を減らすことが最善だが、誰もがこの選択をできるわけではない。
そこで、畜産に使用される動物飼料のタンパク質源を空気由来のProtonで置き換えることで、問題を解決しようとDeep Branchは考えている。
牛肉1kgを生産するために11kgの穀物が必要となるなど、畜産肉の生産にはその何倍もの穀物を用意する必要があり、穀物の栽培には広大な土地が必要となる。
Deep Branchの空気由来の代替タンパク質を使って動物飼料を作ることができれば、輸入に頼ることも、広大な土地を使用することもなく、地元で効率的に動物飼料を生産できる。
2023年までの商用生産を目指す

出典:Deep Branch
Deep Branchは今回調達した資金で、Brightlands Chemelot Campus(オランダ、リンブルフ)にある同社のスケールアップハブの完成が可能になるという。
昨年の報道では、このスケールアップハブを今年第2四半期までに稼働を開始したいとしていた。
このハブでは、BioMarやABといったヨーロッパの主要な飼料生産者が栄養成分を検証するための、最初のパイロットスケールでのProtonをバッチ生産する予定だとしている。

出典:Deep Branch
このほか、調達した資金はProtonの最初の商用生産施設の設計にもあてられる。
Deep Branchは現在候補地を選定中で、サケ漁業と低炭素水素の生産で世界をリードするノルウェーが最有力候補地となっている。
同社は2023年までの商用生産を目指しており、必要となるパートナー企業と交渉中だという。
Deep Branchは2020年7月に始まったREACT-FIRSTというプロジェクトを主導している。
このプロジェクトはイギリスのInnovateUKから出資を受けており、10のコンソーシアムが参加しているもので、Protonのコスト、栄養価、カーボンフットプリント、消化性に関するデータを収集し、気候危機に取り組み、Net Zero(温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすること)の達成を目指している。

共同創業者・CEOのPete Rowe氏 出典:Deep Branch
Deep Branchのように空気からタンパク質を作るプレーヤーには、Air Protein、Solar Food、NovoNutrientsといった企業がいる。
Air Protein、Solar Foodは空気由来のタンパク質で食品を開発しているのに対し、NovoNutrientsは動物飼料を開発しているが、今後は代替魚や代替肉へも参入したいと考えている。

Bart Pander氏(左)、Rob Mansfield氏(中央)、Pete Rowe氏(右) 出典:Deep Branch
Deep Branchはイギリス・オランダで事業を展開するスタートアップ企業。Pete Rowe氏、Rob Mansfield氏、Bart Pander氏によって2018年に設立された。
今回のラウンドはNovo HoldingsとDSM Venturingが主導し、Total Carbon Neutrality Ventures、Barclays Sustainable Impact Capitalが参加した。
同社は昨年11月にも220万ユーロを調達している。
参考記事
Deep Branch Raises €8M to Turn Air Into Animal Feed
Deep Branch Announces €8M Series A Round led by Novo Holdings and DSM Venturing
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アイキャッチ画像の出典:Deep Branch
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