出典:BLUU Seafood
ドイツの培養シーフード企業BLUU Seafoodは今月、ハイブリッド製品の開発に向けてVAN HEESとの提携を発表した。
ドイツ、ラインガウに拠点を置くVAN HEESは、香辛料や機能性原料の分野で80年以上の歴史を持つ家族経営企業であり、BLUU Seafoodは欧州を代表する培養シーフード企業。二社の提携は、植物由来成分と培養魚細胞を組み合わせたハイブリッド製品用のカスタマイズされたソリューションの開発に焦点をおく。
1940年代から続くVAN HEESはこれまで肉・ソーセージ分野で知られてきたが、2014年から代替肉の研究開発を開始し、社内に専門部門「Department of Science」を新設した。公式サイトでも「伝統的なタンパク質を100%ヴィーガンに変える」と明記し、この領域を重視する姿勢を示している。

出典:VAN HEES
植物性・ヴィーガン市場向けには独自の製品ライン「VECAN」を展開しており、同ラインを用いることで、パティ、バーガー、ホットドッグなど代替肉や、イカ、フィッシュフィンガーなどの代替魚が開発可能となる。
今回のBLUU Seafoodとの提携では、こうした植物性製品のノウハウがハイブリッド製品開発に活用されることになる。VAN HEESは世界80カ国以上で展開し、個別の製品開発や技術コンサルティングも行っている。

出典:BLUU Seafood
2020年設立のBLUU Seafoodは、これまでに植物成分と培養魚細胞を混合したフィッシュボール、フィッシュフィンガー、キャビアを開発している。同社は「自然に不死化された細胞株」を樹立しており、ウシ胎児血清(FBS)や遺伝子組換え技術は使用していない。魚種としてはサーモン、ニジマスを開発している。
BLUU Seafoodは2024年4月、ドイツ、ハンブルクに欧州初となる培養魚のパイロット工場を開設した。この工場は初期段階では65リットルで、長期的に2,000リットルへの拡張を予定している。
二社の提携で、BLUU Seafoodは培養魚細胞を提供。VAN HEESは、長年培ってきた香辛料技術や機能性素材の専門性を活かし、BLUU Seafoodとともに、培養魚細胞と植物原料を組み合わせたハイブリッド製品の共同開発に取り組む。VAN HEESは、食感・安定性・香りの最適化に向けて、パートナーであるAromatechや自社のFood.PreTECTセンターと連携し、製品の保存性や安全性も強化する。
今回の提携は、培養魚製品の市場投入に向けた重要なステップとなる。
特に2025年になり、アメリカのWildTypeの培養サーモンが認可され、5月末よりアメリカのレストランでの提供が開始された。培養魚の販売認可としては世界で初の事例となり、培養肉がシンガポールのレストランに初めて登場してから約4年半経ての快挙となった。
BLUU Seafoodはこれまでにシンガポール、アメリカで申請を完了している。公式サイトによると、2024年後半にシンガポール、2025年にアメリカでの承認を見込んでいたが、現時点で販売認可の取得は確認されておらず、今後の動向に注目が集まる。
培養肉の味を支える、香料・香辛料メーカーとの連携可能性

出典:BLUU Seafood/VAN HEES
香料や香辛料を手掛ける企業が代替肉ベンチャーと連携する動きは国内でも確認されている。
長谷川香料は2021年8月、SprouTx(旧称DAIZ)と資本業務提携を行い、今年5月には米国子会社T. Hasegawa USAが、植物由来食品で動物タンパク質の複雑な風味を再現するフレーバー技術「PLANTREACT」を発表した。
また、培養ステーキ肉の研究で知られる東京大学も今年5月、分化・熟成工程や培地組成といった培養条件が遊離アミノ酸の量や組成に影響を与え、培養肉の風味を調整できる可能性を示している。
培養魚や培養肉は、技術的な実現可能性だけでなく、「おいしさ」が市場浸透の鍵を握る。風味や食感の最適化に強みを持つ企業との連携は、今後ますます重要性を増すとみられ、国内でもこうした協業が広がっていく可能性がある。
※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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