ドイツの培養魚企業Bluu Seafoodと中国の培養肉企業CellXは今月、持続可能なタンパク質を生産するために戦略的パートナーシップを結んだことを発表した。
2社は認可取得、原材料調達、スケールアップ、生産施設建設など培養肉製品の商用化にむけて協業する。
ドイツと中国の培養肉企業が協業

出典:Bluu Biosciences
Bluu Seafood(旧称Bluu Biosciences)は欧州で最初に設立された培養魚企業であり、年内に最初の製品発表を予定している。現在は2つ目の拠点であるドイツ、リューベックで研究開発を行っているが、年内にハンブルクに生産施設を開設するという。
CellXは中国をリードする培養肉企業で、昨年には培養豚肉のプロトタイプを発表した。中国のバイオテクノロジーとイノベーションのハブである上海に拠点を置き、中国国内で需要の高い豚肉の開発から着手し、牛肉、家禽へと開発対象を拡大している。
二社はそれぞれの地域で、規制当局の認可取得の最前線にいるとみなされている。
Bluu SeafoodのCOO(最高執行責任者)であるChris Dammann氏は、Cellular Agriculture Europeの副会長兼取締役を務めている。
Cellular Agriculture Europeは培養肉企業から構成されるコンソーシアムで、モサミート、HigherSteaks、Cubiq Foodsなど欧州の培養肉企業のほか、アレフ・ファームズ、スーパーミートなどイスラエル企業も参画している。

出典:CellX
CellXの創業者兼CEOのZiliang Yang氏は、アジアの培養肉スタートアップ企業11社から構成されるコンソーシアム(the APAC Society for Cellular Agriculture、APAC-SCA)の事務局長を務めている。
このコンソーシアムには、シンガポールのShiok MeatsとGaia Foods、イスラエルのアレフ・ファームズ、SuperMeat、MeaTech、香港のAvant Meats、中国のCellXとJoes Future Food、韓国のDaNAgreenとSeaWith、日本のインテグリカルチャーと、アジアの主要培養肉企業が参加している。
バリューチェーン全体で協力する

Bluu Seafood共同創業者のSebastian Rakers氏(左)とSimon Fabich氏(右) 出典:Bluu Biosciences
二社は今後、各市場に拡大するにあたり、原材料の調達、生産施設の建設、販売パートナーなどバリューチェーン全体で互いをサポートしていく。また、供給パートナーシップを共同で確立し、培養肉製品の消費者受容の向上を図ることも計画している。
各社の開発対象は異なるが、同じゴールに向かって類似の技術を活用し、細胞農業を現実のものにしようと取り組んでいる。
Bluu Seafoodの創業者であるSimon Fabich氏は「中国は世界最大のシーフード消費国であり、Bluu Seafoodにとって特に重要な市場だ。CellXと協力して、原料・スケールアップ・認可取得の課題を克服し、手頃で美味しい製品を市場に届けていく」とコメントしている。
日本企業と海外培養肉企業との協業が拡大

出典:CellX
細胞培養によるタンパク質生産におけるパートナーシップは拡大しており、最近では日本企業が海外の培養タンパク質企業と提携する事例が増えている。
味の素は先月、イスラエルのスーパーミートとの提携を発表した。提携の一環として同社への出資も行い、2年以内の培養肉商用化に向けて協業していく。
明治ホールディングスは昨年、細胞培養によりチョコレートを開発するCalifornia Culturedに出資した。細胞農業技術に明治グループが持つ知見や技術を掛け合わせ、商品や原料調達の持続可能性を高めていくとしている。
三菱商事は培養肉のアレフ・ファームズ、培養魚のブルーナルと提携し、アジアへの導入に向けて提携している。三菱商事はまた、培養肉のパイオニアとされるオランダのモサミートに出資をするなど、培養タンパク質への関わりを加速させている。
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アイキャッチ画像の出典:CellX