代替プロテイン

インポッシブルフーズが香港・シンガポールの食料品店で販売を開始、アジア進出を加速

インポッシブルフーズの植物性代替肉がアジアのスーパーに登場した。

19日、香港とシンガポールのスーパーで同社の植物性代替肉の販売が発表された。アジアの食料品店で同社製品が販売されるのは今回が初となる。

同社によると、絶好の狙い目である中国市場に進出する前に、アジアでプレゼンスを示す狙いがある。

香港のParknShopとその子会社100店舗の店頭・オンラインストアで販売され、シンガポールでは、FairPrice100店舗とオンラインストアRedMartで販売される。

アジアではこれまで高級レストランに限定されていたインポッシブルフーズの植物性代替肉を、今後は家庭でも食べられるようになる。

同社のハンバーガーは、人間が肉と認知するのに必要な視覚・嗅覚効果を徹底的に研究、再現している。加熱で赤色から茶色になるプロセス、焼くときの匂いなどを再現するために、コア技術となる「ヘム」を使用。このヘムは、遺伝子改変された酵母から生産されるため、中国規制当局の承認が必要となり、中国進出の壁となっている

出典:インポッシブルフーズ

インポッシブルのライバル会社ビヨンドミートも着実にアジア進出を続けている。9月には上海市近隣に工場を建設する契約に締結。2021年はじめから全面稼働する見通しで、中国本土での代替肉の現地生産に向けて動き出している

ビヨンドミートが一足先に中国進出を果たせた背景には、使用する素材が規制に対応しやすいことがある。インポッシブルの代替肉は遺伝子組み換えした素材を使っているが、ビヨンドの代替肉は遺伝子組み換えした素材は使っていない。

中国進出ではビヨンドに遅れを取るインポッシブルだが、同社CEOのパット・ブラウンは「来年、あるいは今後数ヵ月のうちに中国進出できるだろう」と自信を見せる。規制の対象となっているヘムについては、同社製品の“コア”であり、今と同じ「肉らしい」食感を再現できる代替素材を見つけることは、規模的にも経済的にも現実的ではないとしている。

代替肉プレーヤーとして市場拡大を続けるインポッシブルだが、今月開催されたSKS2020では「培養肉市場に参入することはない」と断言。同社が培養肉に参入しない理由は、コストが高額で、利益につながる努力ではないからだという。

これは裏を返せば、すでに肉らしい植物性代替肉が市場にあり、培養肉の商用化がまだ数年先という状況で、さらにリソースを投入する必要があるだろうか?という、自社製品への自信とも読みとれる。

 

参考記事

Eat Just and Impossible Foods Both Made Major Expansions to Asia This Week

Impossible Foods launches in Asian grocery stores as it aims to move into China

SKS 2020: Impossible Foods CEO on Cell-Based Meat: “It’s Never Going to Be a Thing”

 

 

関連記事

  1. Calystaの単細胞タンパク質FeedKind、水産養殖への使…
  2. アレフ・ファームズ、タイで培養肉の承認申請を初提出|世界の申請・…
  3. 米Oobliが精密発酵による甘味タンパク質ブラゼインでGRAS認…
  4. カーギルがマイコプロテインの英ENOUGHと販売契約を締結
  5. Shiruが「見た目も挙動も動物油脂のような」植物性代替脂肪「O…
  6. 代替肉のビヨンド・ミートがマクドナルド、ヤム・ブランズとの提携を…
  7. 二酸化炭素でタンパク質を作るArkeon Biotechnolo…
  8. ひよこ豆由来のタンパク質を開発するInnovoProが約3億円を…

おすすめ記事

ヒマワリ種子のオレオソームで代替脂肪を開発するTime-travelling Milkmanが約1.4億円を調達

ヒマワリの種子からクリーミーな代替乳製品を開発するTime-travelling…

イスラエルのMeaTechが新たに培養豚肉の開発始動を発表

3Dプリンターを活用して培養肉を開発するイスラエル企業MeaTechが、培養豚肉…

米InnerPlantが自らSOSを出す植物 InnerTomatoを開発、病気の早期発見に

(▲左は通常のトマト、右が昆虫の攻撃を受けたInnerTomato。通常のトマトは発光しないが、In…

Motif FoodworksがSolar Biotechとの提携を拡大、精密発酵タンパク質の「AWS」が加速

精密発酵プラットフォーマーSolar Biotech(ソーラー・バイオテック)は…

Vowがシンガポールで培養ウズラ肉の販売認可を取得、今月レストランで限定提供

細胞性食品とも呼ばれる培養肉は、動物を犠牲にすることなく動物肉を生産でき、環境負…

イート・ジャストの代替卵JUST Eggが欧州の安全性承認を取得

米イート・ジャストの代替卵JUST Egg(ジャスト・エッグ)の主要成分が、欧州…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(03/20 14:50時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(03/21 00:35時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(03/21 04:28時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(03/20 20:47時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(03/21 12:58時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(03/20 23:48時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP