このニュースのポイント
●SuperMeatが培養肉バーガーの試作品に特化したレストランをテルアビブにオープン
●フィードバックを条件に顧客に無料で試作バーガーを提供
●店内から製造プロセスを見える化、透明性を高める狙いも
培養肉のイスラエルスタートアップSuperMeatは大胆かつ斬新な施策に乗り出した。
培養肉の試食テストに特化したレストランをオープンしたのだ。
SuperMeatの戦略が斬新なのは、レストランに招待された顧客に培養肉の試作品を無料で提供するだけではない。店内から培養肉が作られるまでの製造プロセスを見学できることだ。
顧客は、鳥の細胞が自分の食べている代替チキンバーガーになるまでを、ショーケースを眺めるように見学できる。
「The Chicken」と名付けられたレストランの公式サイトには次のように書かれている。
The ChickenはSuperMeatによる革新的で、サステイナブルなレストランです。The Chickenは、鶏の細胞を培養して作った培養チキン料理を提供する世界初のレストランです。
記念すべき1店舗目はテルアビブにオープンした。
SuperMeatの培養チキンは次のように作られる。
①「種」となる幹細胞を鶏から採取する。
②幹細胞をバイオリアクターで培養する。バイオリアクターの中で幹細胞は、動物の身体と同様に肉組織に成長する。
③細胞が増殖して肉になったら、バイオリアクターから取り出す。できた培養肉は本物同様に調理できる。
フィードバックを条件に培養肉料理を無料提供
The Chickenは試作品・培養チキンを使ったバーガーを顧客に無料提供する。顧客は無料で培養チキン料理を食べられる代わりに、料理についてフィードバックが求められる。
培養肉の試食品を食べるためには、事前の申し込みが必要だ。
下記が申込フォームで、「培養肉を試してみたい理由」を書く欄がある。
レストランに招待された顧客は、培養チキンを使ったバーガーを食べながら、席に座ったままSuperMeatの工場の中を見ることができる。成果物としての培養チキンを食べながら、それができるまでのプロセスを見ることができる点で斬新な取り組みだ。もちろん、工場の中からも店内の様子が見える。
リリース前の試作段階で培養肉のテストをすることは重要だ。
人々が味、口当たり、匂い、見た目など製品に何を求めるのか、事前に正確に判断ができる。人々が求めるものがわかれば、開発により注力できる。また、料理の無料提供によるフィードバック収集は、試作段階から顧客のリスト収集を兼ねることもできる。開発段階からユーザーを巻き込み、絶対に成功する商品づくりを狙う、大胆かつリターンの大きい戦略だろう。
培養肉の透明性を上げる狙いも
プレスリリースによると、The Chickenに招待された顧客に工場見学・食事を同時に体験する機会を提供することで、自社の培養肉がクリーンで透明性であることをアピールする狙いもある。
体験によってフィードバックを得る取り組みにはEat Justが上海にオープンした料理スタジオなどがあるが、開発段階から試食に特化したテストレストランをオープンするという点でSuperMeatの戦略は大胆だ。
SuperMeatは2015年に設立されたイスラエルのスタートアップ。クランチベースによると、これまでに420万ドル(約4億4千万円)を調達している。
同社は1~2年のうちにレストランでの販売、5年後に工場を建設し、本物の肉と同等価格までのコストダウンを目指している。
参考記事
SuperMeat Has Its Own Restaurant Dedicated to Cell-Based Chicken
At the first lab-grown meat restaurant, you can eat a ‘cultured chicken’ sandwich
Crunchbase.com/organization/supermeat