コカ・コーラがペーパーボトルの試作品を発表した。
今回発表された第一世代の試作品は、コカ・コーラがパートナーPabocoと開発中のもの。このペーパーボトルはすべて紙でできているのではなく、一部プラスチックを含んでいる。
現在、ベルギーにあるコカ・コーラのイノベーションラボで開発中だ。
開発担当のStijn Franssenによると、初代ペーパーボトルは、ペットボトルのクロージャ―(蓋、キャップを指す専門用語)とライナー(キャップの内側に貼り付ける密封剤を指す専門用語)にプラスチックを使っている。
クロージャ―、ライナーとは要するにペットボトルの蓋部分のことで、ライナーは蓋を閉めたときにドリンクがもれないように密封する役割を持つ。

ペットボトルのクロージャ―のイメージ図(tecnocap社HPから引用、一部追記)
使用するプラスチックは100%リサイクル可能なものだが、コカ・コーラの最終目標はプラスチックを使わずに、紙だけでできたペットボトルを開発すること。
現在、冷蔵庫に保管したときの状態、強度、ドリンクを入れたときの状態などを試験している。
課題の1つは、キャップ内側を密封するためのライナーだ。
ペットボトルに使われるライナーは、液体や空気の漏洩を防ぐために使われる。ライナーには「密封性(漏れなさ)」とともに「開封性(開けやすさ)」も求められる。そのため、柔軟性、すべり性、弾性、強度などが要求される。
現在はプラスチックを使用しているが、ライナーの特性を保持しつつ、紙で代替するためには新しい技術が必要になるという。パートナーPabocoの腕の見せ所だろう。

出典:Coca-Cola
今回発表されたペーパーボトルはまだ試作段階にあり、量産化のフェーズにはない。開発のため限定的なトライアルも視野にいれているという。
プラスチックの分解にかかる時間は450年

マイクロプラスチックの分布を示したもの 出典:Issue of micro plastics in the coastal and marine environment and 3R solutions
プラスチック汚染問題は国際的に問題となっている。
プラスチックは紫外線、熱、波の力などによって細かな破片になっていき、微細化してもプラスチックであることに変わりはない。プラスチック破片は約5兆にもおよぶ。さらにPOCKET GUIDE to MARINE DEBRISによると、プラスチック破片が分解されるまで450年もかかる。
「地球の敵」となったペットボトルを使わない方向へ舵を切るのは当然の流れといえる。コカ・コーラをはじめとする大手食品・飲料メーカーは、サステイナブルな包装材料を開発する必要性に迫られている。
コカ・コーラの100%紙でできたペーパーボトルが店頭に並ぶ時期は不明だが、同社の取り組みはプラスチック汚染問題の解決に一石を投じることは間違いない。
地球の敵・プラスチックに取り組むメーカーたち
コカ・コーラの試作品発表に先立ち、スピリッツで有名なディアジオは7月、100%紙でできたペーパーボトルを発表した。2021年初頭に紙ボトルを使ったジョニー・ウォーカー(世界的に有名なスコッチ・ウイスキーのブランド)をリリースする予定だ。

100%紙でできたスピリッツボトル 出典:Diageo
プラスチックを使わない選択肢とは対照的に、プラスチックを分解されるプラスチックに変身させることに焦点をあてるプレーヤーがいる。
米国のNewlightだ。
同社は微生物を利用して、温室効果ガスをプラスチックに変換。AirCarbonと呼ばれるプラスチックは、環境で自然に分解される特性を持つため、プラスチック汚染問題の解決に寄与すると同時に、排出される温室効果ガスを相殺できる。
プラスチック汚染問題と地球温化問題を同時に解決する試みだ。すでにストローやスプーン、椅子などに応用しており、Newlightと協業する飲料メーカーがでてくるかもしれない。
参考記事
Coca-Cola reveals paper bottle prototype
Coca-Cola Unveils a Prototype for Paper Bottles
日本包装コンサルタント協会 容器・包装の基礎と応用 基礎編(4)クロージャ―(Closure)
アイキャッチ画像の出典:コカ・コーラ