代替プロテイン

ドイツの培養脂肪Cultimate Foodsが約1億円を調達、植物肉用の脂肪提供を目指す

 

ドイツを拠点とする培養脂肪スタートアップのCultimate Foodsがプレシードラウンドで70万ユーロ(約1億円)を調達した。

Cultimate Foodsは植物肉に「本物の肉の味と食感」をもたらす代替脂肪を開発している。細胞農業技術を用いて代替脂肪を開発する企業は増えており、動物脂肪のスタートアップ企業としてCultimate Foodsは最新の企業となる。

今回のラウンドにはBig Idea VenturesProVeg InternationalRealum.cloudが参加した。

Cultimate Foodsは調達した資金で、スケールアップ、培養脂肪製品ソリューションの検証、パイロットスケールに向けた技術の準備を行うとしている。

植物肉と培養肉の元CEOが立ち上げた培養脂肪スタートアップ

出典:Cultimate Foods

Cultimate Foodsは植物肉に使用される植物油脂に変わる培養脂肪をB2Bで提供することを目指している。長期的には、培養肉企業への培養脂肪の提供も考えているという。

Cultimate Foodsは植物タンパク質と培養肉の背景を持つ共同創業者によって2021年に設立された。

共同創業者のOskar Latyshev氏は、ロシアの培養肉企業ArtMeatのCEOを務めていた。George Zheleznyi氏は、ロシアの植物肉企業Greenwiseを立ち上げた人物となる。数年間にわたる代替タンパク質業界での取り組みを経て、未来の肉は、植物タンパク質と培養成分をブレンドしたハイブリッド製品だとの確信から、Cultimate Foodsが誕生した。

Cultimate Foodsは当初、ロシアの大学と研究開発活動を共同で実施することを計画していた。

契約と詳細な研究開発計画について交渉が完了し、2022年3月にも研究開発を開始する予定だったが、ロシアによるウクライナ侵攻により計画変更を余儀なくされる。2月下旬にドイツの研究開発パートナーと交渉し、ドイツでの活動開始に向けた準備を始めた。同社はドイツのハノーファー大学と長期の協業契約を締結している

増える代替脂肪スタートアップ

イメージ画像

世界の食肉消費量は着実に増加しており、2050年までに2倍になると予想されている。畜産による気候変動や高まる食料需要の対応策として代替タンパク質の開発が急速に進んでいる。

その1つのソリューションが、国内のスーパーでも入手できる植物肉だが、Cultimate Foodsは「多くの消費者は、現在入手できる代替肉に満足しておらず、味と食感に妥協したくないと感じている」と指摘。同社は「現在市販されている代替肉に欠けている肉のすべての特性を提供する」ため、細胞培養による代替脂肪の開発に注力している。

脂肪を主な開発対象とする企業は近年増加しており、資金調達も増えている。

ロンドンを拠点とするHoxton Farmsは先月、シリーズAラウンドで2200万ドル(当時約32億円)を調達し、ロンドン中心部にパイロット工場を建設している。

Paragon Pureは植物肉の味・風味を改善するため、オレオゲル技術による米ぬか油を使用した代替脂肪を開発しており、8月にシードラウンドで390万ドル(当時約5億5000万円)を調達した。

イスラエルのWilkは、細胞培養による乳脂肪を組み込んだヨーグルトのプロジェクトを進めている。

スペインのCUBIQ Foodsは5月に575万ユーロ(当時約7億8000万円)を調達、カーギルも戦略的パートナーとして出資に初参加した。

 

参考記事

Cultivated Fat Startup Cultimate Raises €700,000 Pre-Seed

CULTURED FAT IS GOING TO MAKE PLANT-BASED MEAT ALTERNATIVES TASTE LIKE THE REAL THING

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Cultimate Foods

 

関連記事

  1. Jellatechが約5億円のシード資金を調達、細胞由来コラーゲ…
  2. 草食動物の腸内細菌で代替タンパク質を開発する米SuperBrew…
  3. グリーンマンデーのインスタント食品、香港のセブンイレブン全店で販…
  4. 米Checkerspot、微細藻類を活用したヒト乳脂肪類似体を開…
  5. Motif FoodWorksがスケールアップを支援する新サービ…
  6. 培養肉モサミートが培養脂肪用培地の大幅コストダウンに成功
  7. Novameatが約7億円を調達、独自3Dプリント技術による代替…
  8. 微生物を活用してアニマルフリーなチーズを開発するFormo、年内…

精密発酵レポート好評販売中

おすすめ記事

オランダの培養肉企業Meatableが約51億円を調達、来年にシンガポールで販売へ

オランダの培養肉企業Meatableは今月、シリーズBラウンドで3500万ドル(…

ダノンが精密発酵企業Imagindairyに出資、細胞農業企業では2社目

イスラエルの精密発酵企業Imagindairyは先月、大手乳業メーカーであるダノ…

代替魚・代替シーフードベンチャー企業25社まとめ【2021年版カオスマップ】

この記事では、代替魚・代替シーフードの開発に取り組む国内外のベンチャー・スタート…

菌糸体からベーコンを開発する米MyForest Foods、年産約1300トンの新工場を開設

菌糸体を使って代替ベーコンを開発する米MyForest Foodsは先月、新工場…

杏子の種から植物ミルクを開発するKern Tecが約19億円を調達、廃棄される核果の種をアップサイクル

杏子、プラム、チェリーなどの核果の種を活用して、代替ミルク、スプレッドなどを開発…

Better Dairyはアニマルフリーチーズの最前線で約25.8億円を調達

イギリスのフードテックBetter DairyがシリーズAラウンドで2,200万…

次回Foovoセミナーのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

精密発酵レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

▼運営者・佐藤あゆみ▼

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,671円(04/18 12:10時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(04/18 21:26時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(04/19 00:56時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(04/18 18:00時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(04/18 10:46時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(04/18 21:00時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP