フードロス

「食べられる」食品包装用フィルムをインド・ロシア研究チームが開発

 

インドとロシアの研究者は、果物、野菜、肉、水産物を包装するための食用の食品フィルムを開発した。

フィルムは天然成分で構成されており、健康、環境に安全とされる。

特筆すべき点は、食用であること、水溶性で24時間でほぼ90%分解されることだ。

研究の概要と結果はJournal of Food Engineeringに掲載された。

研究チームは、良く知られている天然成分であるアルギン酸ナトリウムをベースに3種類の食品フィルムを開発した。

アルギン酸ナトリウムは海藻に含まれる高分子で、食品の安定、増粘のために添加物として使用されたり、健康食品、医薬品として使用されたりしている。

アルギン酸ナトリウム 出典:researchgate.net

Rammohan Aluru氏によると、アルギン酸ナトリウムは、加水分解時に膜を形成する特性を持ち、細胞壁に豊富に存在する高分子の炭水化物。

同氏はアルギン酸ナトリウム最大の利点は、水溶液の中でゲル化することだと指摘する。

開発された食用フィルムは、アルギン酸ナトリウムを天然の抗酸化物質であるフェルラ酸で架橋してある。

フェルラ酸とは、植物の細胞壁に存在するポリフェノールの1種で、強い抗酸化作用がある。

フェルラ酸で架橋したアルギン酸ナトリウムフィルムは、透明で、均一で、安定しているほか、より強固で食品の保存期間を延ばすこともできるという。

架橋というのは、高分子同士を連結することで、分子の性質を変化させる反応をいう。

架橋(Cross-link)のイメージ 出典:chem-engi.com

もっとも簡単に試せる例は、クラシエが販売している市販の知育菓子にある、お寿司の「人工イクラ」だ。

溶液に別の溶液を加えると、ただちに球状にゲル化し、「人工イクラ」となる(もちろん甘い)。

ウラル連邦大学の有機・生体分子化学部教授を務めるGrigory Zyryanov氏は「酸化を遅らせる抗酸化成分によって、食品はより長く鮮度を維持できる」とし、ニンニク、ターメリック、ジンジャーなどウイルスの拡散を防ぐ可能性のある天然の「抗ウイルス剤」をフィルムに添加して、食品の保存期間を延ばすことができるとも語っている。

研究チームによると、この水で溶ける食用フィルムの生産には特別な設備は必要ないという。

工業規模で生産する場合、食品メーカーやフィルムメーカーが生産できる。

特定の条件を満たせば、高分子を製造する工場でも生産できるという。

さらに、海藻が無尽蔵に発生する海の近くに工場がある場合、このフィルムを生成するのは非常に簡単だとも語っている。

Rammohan Aluru氏(左)とGrigory Zyryanov氏(右) 出典:Andrey Fomin

海で分解するストロー、スプーンなどを作るNewlight Technologiesなどの企業の商品はすでに飲食店などに導入されているが、分解速度の点では今回の研究成果は注目に値する。

何より、海藻と植物由来の原料を使用しているため、食べても問題ない点が画期的だ。

このフィルムが商品化されれば、購入した包装材料を自宅で分解処理できるようになるだろう。

研究成果は「Structural studies and bioactivity of sodium alginate edible films fabricated through ferulic acid crosslinking mechanism」というタイトルでJournal of Food Engineeringに掲載された。

 

参考記事

New Edible Food Packaging Films are Safe for Health and Environment

 

アイキャッチ画像の出典:Andrey Fomin

 

関連記事

  1. 生鮮食品と花の鮮度を保持するコンテナを開発したRipeLocke…
  2. Apeel Sciencesが約31億円を資金調達、小規模農家の…
  3. フードロスに取り組む米Apeel Sciencesが約274億円…
  4. Apeel Sciences、鮮度を保てるプラスチックフリーなキ…
  5. 食品ロスに取り組むToo Good To Goが約31億円を調達…
  6. 香港IXON社が肉を2年間常温保存できるASAP技術を開発
  7. コカ・コーラが紙ボトル試作品を発表、廃棄物のない世界を目指す
  8. レストラン厨房のフードロス削減に取り組むOrbiskが約1億36…

おすすめ記事

「食べられる」食品包装用フィルムをインド・ロシア研究チームが開発

インドとロシアの研究者は、果物、野菜、肉、水産物を包装するための食用の食品フィル…

Motif FoodWorksが新成分ヘム「HEMAMI」を発売、新施設の建設も発表

植物ベース食品のアップデートに取り組む米Motif FoodWorksが開発した…

英Jack & Bryがジャックフルーツを使った代替切り身魚を発表

イギリスを拠点とするスタートアップJack & Bryは今月、ジャックフ…

世界初!アレフ・ファームズが3Dプリンターで培養リブロース肉を開発

イスラエルのアレフ・ファームズ(Aleph Farms)が培養リブロース肉の3D…

3Dプリンターを活用した培養肉の自動生産を目指して大阪大学・島津製作所が協業

大阪大学、島津製作所、シグマクシスは「3Dバイオプリント技術の社会実装」に向けた…

ドイツ発のAitmeはキオスク型自律調理ロボットを開発

ベルリンを拠点とするスタートアップ企業Aitmeは完全自律型のロボットレストラン…

精密発酵レポート好評販売中

培養魚企業レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

▼聞き流しフードテックニュース▼

▼運営者・佐藤あゆみ▼

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(02/07 17:04時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(02/07 20:40時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(02/07 14:18時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(02/07 07:04時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
398円(02/07 16:42時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP