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ピザ自販機のカナダ企業PizzaFornoがアメリカへ進出

 

新型コロナの発生により、自動販売機が新しく生まれ変わろうとしている。

日本ではまだドリンクや菓子パン、アイスなどを買うイメージだが、海外ではこれまでの自販機の範疇を超えたものが当たり前になりつつある

非接触のニーズが高まるなか、海外で登場しているのが、ロボットのような役割をもつ次世代自販機だ。

これらの自販機は、これまでの決まったものだけ注文する仕組みではなく、ドリンクやフードの調理・トッピング機能が本体に搭載されている。

『フードテック革命』ではこうした次世代自販機を、「自販機3.0」と呼んでいる。

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次世代自販機には既に、熱々のラーメンを作れるもの、自由にカスタマイズできるサラダを作れるもの、焼きたてのピザを作れるものフランスパンを焼き上げるものなどがある。

PizzaFornoもその1つ。

社名のとおり、ピザを焼き上げる自販機だが、同社は「自販機」という言葉は使いたがらない。「自動ピザオーブン」と称するとおり、注文から3分で熱々のピザを提供してくれる。

カナダで生まれたピザ自販機PizzaForno

出典:PizzaForno

PizzaFornoはカナダ・トロント近郊を拠点とするスタートアップ企業。

オンタリオを中心にカナダで28台が稼働しており、今月にはアメリカに1台目が導入される。

ユーザーがピザ自販機で注文すると、3分でピザが焼きあがる。1枚のピザは約30cmで、約12ドル。

自宅で焼く用に「コールド」を選ぶと1ドル安くなる。現在はタッチスクリーンで注文するが、アプリでの注文機能も追加される予定。

出典:PizzaForno

メニューはベジタリアンピザも含んで全部で8種類。今後は10種類に増やす予定だという。

待ち時間には、タッチスクリーンにピザがオーブンに移され、焼いている様子が表示される。自分が注文したピザではないようだが、製造工程が顧客に見える化されている。

ピザが焼きあがると、箱に入った状態で取り出し口から出てくる。ピザはカットされていないが、3分で熱々のピザが焼きあがるうえ24時間いつでもピザを食べられる

自販機1台に収容できるピザは70枚The Spoon誌の報道によると、PizzaFornoはフランス企業の技術を使っている(社名は非公開)。

他社と異なるPizzaFornoのビジネス戦略

出典:PizzaForno

PizzaFornoのような自販機ビジネスを展開する企業がとるビジネス戦略は大きく2つに分かれる。

たとえば、フランスのAPI Techは自社で自販機を製造し、食品会社などに自販機を販売する。自社ではピザは作らず、あくまで装置を他社へ提供する

これに対し、Piestroのように自社ブランドを構築するとともに、他社へライセンスアウトする共同ブランディング戦略をとる企業もいる。

次世代自販機に取り組むスタートアップは、Piestroのように強力なブランドに乗っかり、共同ブランディングの形で自社の存在感を示すマーケティング戦略をとる企業が増えている

出典:PizzaForno

これに対し、PizzaFornoは自社ブランドにこだわる

ブランドを構築し、他社に「PizzaForno」のブランドでライセンス提供する戦略をとる。PizzaForno自身は「ライセンス」という言葉を使用しているが、フランチャイズのイメージに近い

ライセンスを得るには1台あたり11万5000ドル~12万5000ドルを払う。メンテナンスから運営・物流面はPizzaFornoが管理する。

昨今の動きを見ていると、共同ブランディング戦略をとる企業が多い。

前述のPiestroのほかにも、サラダ自販機で有名なチョウボティクス、スムージーに特化したBlendid、ラーメン自販機のヨーカイエクスプレスなどはいずれも共同ブランディング戦略で自社ブランドの認知度を向上させている。

初めて自販機ロボットを見た人にとって、有名なレストラン名が併記してある自販機と、初めて見る自販機とではどちらが安心するかは明らかだ。

ピザ自販機に取り組む他社スタートアップ

出典:PizzaForno

次世代自販機は新型コロナの発生で盛んになっている。

特に、ピザ自販機に取り組むスタートアップは増えており、主に次の企業がある(ほかにもある)。

Piestro アメリカ 2017年創業
API Tech フランス 創業年は不明
Basil Street アメリカ 2015年創業
Bake Xpress アメリカ 2015年創業

PizzaFornoはこれまでのカナダでの展開に続き、今月に初めてアメリカに導入されるが、次世代自販機で増えている共同ブランディングはせず、自社ブランドにこだわる戦略がうまくいくかは未知数だろう。

個人的には、Blendidなどのように強力なブランドと組む方法も取り入れるのが良いと感じる。たとえば、ピザハットやドミノピザと提携したら、ブランド拡散力は非ではない。

 

参考記事

PizzaForno Bringing its Pizza Vending Machines to the U.S. Next Month

Toronto’s newest pizza joint is a computure screen

 

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アイキャッチ画像の出典:PizzaForno

 

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