代替プロテイン

昆虫由来の代替タンパク質に取り組むTebritoが約1億円を調達

 

このニュースのポイント 

昆虫由来のタンパク質開発に取り組むTebritoが約1億円を調達

幼虫ミールワームを原料とする代替タンパク質

●家畜由来のタンパク質に比べ持続可能性がある

●10月にスウェーデン当局が昆虫食品の販売を認める

●AIを活用した垂直式生産工場で生産

 

 

昆虫を原料にタンパク質を開発するTebritoが80万ユーロ(約1億円)を調達した。

Tebritoはスウェーデン発の昆虫タンパク質に取り組むスタートアップ

同社がつくるタンパク質は、ミールワームを原料とする

ミールワームとは、ゴミムシダマシ科の甲虫の幼虫の総称で、鳥や小動物などペットの餌として使われることが多い。

Tebritoは2年前からスウェーデン農業科学大学で研究に取り組み、無味無臭の栄養豊富なタンパク質粉末の開発に成功した。

タンパク質含有量は88%

Tebritoが開発した昆虫タンパク質は、残った穀類や廃棄された野菜をミールワームの餌に使用するため、生産プロセスそのものが環境に配慮したものになっている。

パルプ、紙、ビール産業の副産物を使い、ミールワームを飼育する方法も模索しているところだという。

Tebritoの代替タンパク質は、含有率88%とタンパク質を豊富に含む

現在は、スカンジナビアの食品企業数社と共に、高タンパク食品やブイヨン(だし汁のこと)などを開発するプロジェクトに関わっている。

また、昆虫ベースの食品開発に取り組むスウェーデンの研究協議会Formasと協業している。

昆虫を原料とするタンパク質のメリットは、牛や豚などを飼育するよりも簡単で、投入するリソースも少なくすむことだろう。

出典:plusimpact.io

まず、土地については、TebritoはAIを活用した垂直式の生産施設でタンパク質を生産しているため、必要となる土地は少ない(上記写真)。

Tebrito ホームページによると、1kgの食用タンパク質を生産する場合、ミールワーム由来のタンパク質生産で排出される温室効果ガスは牛肉の5.5%、使用する水は0.02%、土地は4.5%、消費されるエネルギーは38%となり、すべてにおいて環境に対する負荷が非常に小さい。

出典:Tebrito

このように昆虫由来のタンパク質は、コスト面でも生産プロセスでも、さらにはタンパク質源としても魅力あるものだが、食べることに抵抗を感じる人は少なくない。

日本には昔からイナゴの佃煮を食べる習慣があるが、食べたことない人が圧倒的に多い。

これは決して、昆虫由来のタンパク質開発に取り組むスタートアップが少ないわけではない。

海外の主な昆虫食スタートアップ

昆虫由来のタンパク質開発に取り組む海外企業には、主に次の4社がある。

Beobiaは自宅でミールワームを飼育できる卓上型デバイスを開発している。3Dプリンターとバイオプラスチックで作った容器でミールワームを飼育すると、1~4週間で卵からミールワームに育つ。

Insecttaは昆虫からキトサンを抽出するシンガポールのスタートアップ。

キトサンは食品、包装、薬に使用されるもの。Insecttaは今年5月にイスラエルのThe Trendlines Groupから出資(調達額は非公開)を受けている。

ベトナム発のCricket Oneは、社名からわかるとおり、コオロギからタンパク質やオイルを作るスタートアップ。11月にバーガー用パテ発売のために資金調達した。Cricket Oneは食品の口当たりが滑らかになるように、外骨格を取り除いている。

同じくコオロギ由来のタンパク質を開発する企業には、Entisがある。

フィンランド発のスタートアップで、オールミルクに混ぜるタイプのコオロギプロテイン粉末や、チョコレート風味を加えたシリアルタイプの商品を自社DtoCサイトで販売している。

スウェーデン当局が昆虫食品の販売を認める

大豆などの代替タンパク質に比べると、昆虫由来の代替タンパク質の注目度は高くない。

これは、粉末とはいえ原料である昆虫に対する負のイメージが大きく影響しているだろう。

そんな中、スウェーデンで10月にTebritoにとって嬉しいニュースがあった。

スウェーデンの食品当局が昆虫を使った食品の販売を認めたのだ。この決定は昆虫由来のタンパク質プレーヤーに追い風となるとともに、人々の意識にも影響する可能性があるだろう。

出典:plusimpact.io

Tebritoは2016年に設立されたスウェーデン企業。

2019年にはパイロット工場建設のために25万ユーロ(約3100万円)を調達した。今回調達した資金は事業拡大に使われる

ラウンドには、スウェーデン企業に特化したベンチャーキャピタルAlmi Invest、Kanopé Impactなどが参加した。

同社がこれまでに調達資金は総額125万ユーロ(約1億5千万円)となる。

 

参考記事

Swedish Edible Insect Startup Tebrito Raises €800,000

Can insect protein find its place in processed foods?

 

アイキャッチ画像の出典:www.di.se

 

関連記事

  1. 韓国の培養肉スタートアップSpace Fらが政府から助成金を獲得…
  2. オーストラリアのAll G、中国本土で精密発酵ウシラクトフェリン…
  3. スペインのLibre Foodsが菌糸体由来の代替鶏胸肉を発表、…
  4. 【現地レポ】Perfect Dayの精密発酵乳タンパク質を使用し…
  5. ビヨンドミート、菌糸体由来ステーキ肉の発売計画を発表
  6. スロベニア企業Juicy Marblesは世界初の植物性フィレミ…
  7. 微生物発酵で脂肪を開発するNourish Ingredients…
  8. 米SCiFi Foodsが培養牛肉製品で初のLCAを実施、環境メ…

おすすめ記事

TissenBioFarmが韓国初の細胞農業支援センターで10Kgの培養肉プロトタイプを発表

韓国の培養肉スタートアップ企業TissenBioFarmは先月、韓国初の細胞農業…

アレフ・ファームズ、シンガポール・イスラエルでの合意で培養肉の生産を強化

イスラエルの培養肉企業アレフ・ファームズ(Aleph Farms)は今月、シンガ…

米Ayana Bio、植物細胞培養でカカオなどの生理活性物質の開発を加速

アメリカ、ボストンを拠点とするAyana Bioは、カカオ、レモンバーム、エキナ…

菌糸体生産のB2Bソリューションを開発するKyndaがドイツ政府から助成金を獲得

ドイツのバイオマス企業Kyndaは、ドイツ連邦食糧農業省から非希薄化(Non-d…

Upside Foodsが業界史上最大の約510億円を調達、年内の培養肉市販化を目指してスケールアップを加速

アメリカの培養肉企業Upside Foods(アップサイド・フーズ)がシリーズC…

世界初|MeliBioがミツバチを使わない「本物のハチミツ」を試食会で発表

ミツバチを使わずに代替ハチミツを開発するMeliBioが、世界初となる代替ハチミ…

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(12/06 14:11時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(12/06 23:54時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(12/06 03:34時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(12/06 20:06時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(12/06 12:21時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(12/06 23:07時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP