代替プロテイン

スペイン政府がBioTech Foodsの主導する培養肉プロジェクトに約6億5千万円を出資

 

スペインの培養肉スタートアップBioTech Foodsスペイン政府から520万ユーロ(約6.5億円)の出資を受けた

この出資はBioTech Foodsが主導する培養肉プロジェクト「CULTUREDMEAT」に対するもので、培養肉が健康にもたらすメリットや、癌や脂質異常症のリスクを高めるといった動物性タンパク質に関係する健康上の懸念が培養肉にないかを調査する。

BioTech Foodsは昨年10月に欧州連合(EU)からも出資を受けていた。

スペイン発の培養肉企業BioTech Foods

BioTech Foodsは豚の培養肉を開発するスペインのスタートアップで、2017年に設立された。

2018年に自社ブランドとなるEthicameatを立ち上げ、本物の肉と価格面で競合できる培養肉のリリースに向けて取り組んでいる。同社は、ソーセージやミートボールのひき肉に使うための豚の培養肉を開発している。

出典:BioTech Foods

他社と同様、BioTech Foodsも生きた動物から筋肉細胞を採取し、これを培養して筋肉組織を作製する。完成する培養肉はGMOフリーで、脂肪を含まない。

同社によると、1頭の豚から採取した細胞で、1年間に400頭に相当する豚肉を生産できるという。

疾患リスクを下げる培養肉の開発へ

今回、スペイン政府が出資するプロジェクトは「CULTUREDMEAT」と題され、複数のバイオテクノロジー企業や研究機関が参画する。

BioTech Foodsは同プロジェクトで培養肉の技術部分を主導する。

Vegconomistの報道によると、このプロジェクトの最終的な目標の1つは、大腸がんと脂質異常症の罹患率を下げることであり、ハンバーグやソーセージといった最終製品に使われる健康に良い脂肪と機能性成分の開発に取り組む。

スペインでは毎年25000人が新たに大腸がんに罹患すると言われ、がんの中でも大腸がんの占める割合が最も多い。大腸がんと脂質異常症は赤肉の消費に関係があるとされ、いずれもスペインで重大な健康上の問題とされる。

出典:BioTech Foods

「飽和脂肪酸の摂取が減れば、大腸がんと脂質異常症を減らせる」とBioTech Foodsは考えている。

培養肉の生産コストを押し上げる主な要因の1つが、細胞を増殖するための培地とされるため、BioTech Foodsはさまざまな材料を使って、より低コストの培養肉開発に取り組むとされる。

スペイン政府による代替肉企業への3回目の出資

BioTech Foodsは、スペイン政府から出資を受けた3社目の代替肉企業となる。

1社目はHeura Foodsで、2社目は3Dプリンターでステーキ肉を開発するNovameat。Novameatへの出資は2021年早々に発表され、同社は約3100万円の出資を受けた。

共同創業者のIñigo Charola氏(左)とMercedes Vila Juárez(右) 出典:BioTech Foods

BioTech Foodsは今回のスペイン政府の出資に先立ち、昨年の10月には欧州連合(EU)から270万ユーロ(約3億3千万円)の出資を受けていた。培養肉企業にEUが出資したのはこれが初めてだとされ、持続可能なタンパク質の開発に対する関心の高まりを反映している。

EUによる出資はBioTech Foods が主導するMeat4Allプロジェクトに対するもので、2021年7月までを期限とし、培養肉の量産化、マーケットの受容性向上、安全性評価試験の実施を目的とする。

今回の「CULTUREDMEAT」のプロジェクトがいつまで続くか不明だが、BioTech Foodsはプロジェクト終了までに、健康に良い脂肪と機能性成分を含んだ培養肉を開発することを目標としている。

 

参考記事

Spanish Government Funds BioTech Foods’ Cultured Meat Project

BioTech Foods-led cultured meat project to investigate potential health benefits of slaughter-free

Spanish Government to Invest €5.2M in Cultured Meat Project Led by BioTech Foods

Spain’s BioTech Foods To Lead US$6.3M Government-Backed Cultured Meat Project

BioTech Foods outlines Ethicameat cultured pork offering

 

アイキャッチ画像の出典:BioTech Foods

 

関連記事

  1. 米BIOMILQ、創業者の元夫との知財紛争で破産申請
  2. コオロギタンパク質を生産するエントモファームズが約3億円を調達
  3. 米Superbrewed Food、腸内細菌由来のタンパク質につ…
  4. MeaTech、3Dプリンターによる培養シーフードの開発でUma…
  5. 培養脂肪を開発するMission Barnsが約26億円を調達、…
  6. 微生物、空気、電気を使ってタンパク質を開発するSolar Foo…
  7. シンガポールの研究チームがウナギ細胞株と植物血清の開発に成功
  8. 米NovoNutrients、牛タンパク質と同品質のCO2由来タ…

おすすめ記事

韓国の培養肉企業SeaWith、2030年までに培養ステーキ肉を1kgあたり3ドルへ

培養肉を開発する韓国企業Seawithが、新たな目標を発表した。同社はこ…

培養肉アレフ・ファームズ、安価でオープンな増殖培地の開発でWACKERと提携

イスラエルの培養肉企業アレフ・ファームズとドイツの化学メーカーWACKERは、培…

米The Better Meat Co.がシリーズAで約45億円を調達、マイコプロテイン「Rhiza」のスケールアップへ|マイコプロテインの米国認可状況

出典:The Better Meat Co.マイコプロテインを開発する米The Better M…

フードロス削減に取り組むオランダ企業OneThirdが約1億9000万円を調達

フードロス削減に取り組むオランダ企業OneThirdが150万ユーロ(約1億90…

米ビヨンドミート、初の菌糸体ステーキ「Beyond Steak Filet」をレストラン限定で提供開始

ビヨンドミートが菌糸体ステーキ肉の発売計画を発表してから約10ヵ月。販売動向の行…

ベルがパーフェクトデイと提携、精密発酵タンパク質の代替チーズを来月発売

Kiri(キリ)やBoursin(ブルサン)などで有名なチーズ大手ベルグループの…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(11/12 16:14時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(11/13 02:50時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(11/13 06:22時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(11/12 22:14時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(11/13 14:15時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(11/13 01:33時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP