3Dプリンター

Redefine Meatが3Dプリント肉を2021年前半に販売、イスラエルの食肉販売会社と提携

 

3Dプリンターを使って植物ベースの代替肉を開発するイスラエル企業Redefine Meatが、イスラエルの食肉販売会社Best Meisterとの戦略的パートナーシップを結んだことを発表した。

この提携により、Redefine Meatの植物ベースの代替肉が2021年前半に、イスラエルのレストランや高級肉専門店などで販売される。

提携に先立ち、2社はRedefine Meatの代替肉を使った試食会を実施した。事前のアナウンスなしにも関わらず600名が集まり、50分待ちの行列となり、わずか5時間で売り切れとなった。

2021年前半に3Dプリント肉の販売へ

出典:Redefine Meat

プレスリリースによると、Best MeisterはRedefine Meatの市場投入・販売開拓をサポートし、代替肉Alt-Meatをイスラエルのレストランや高級肉専門店に販売する。

2021年前半にはRedefine Meatの3Dプリント肉を消費者が食することができるようになる。

3Dプリンターがもたらす食のブレイクスルー

出典:Redefine Meat

イスラエル発のRedefine Meat植物ベースの材料に特許技術となる3Dプリンティング技術をかけあわせて、本物の肉に見た目、食感、風味がそっくりな代替肉を開発している。

3Dプリンティング技術は、従来の方法ではできなかった複雑な形状を作り出すことを可能とする。作成する部位をレイヤーごとに積層するとき、部位の複雑さには制限がない。これによって、形状の制限なしに自由なデザインを作り出すことができる。

近年、さらなるブレイクスルーがあり、今では複数材料を同時に出力するマルチ材料対応の3Dプリンティング技術(MM3D)が登場している。

これにより、1回の出力で異なる材料から構成される製品を作り出せるようになった。

Redefine Meatがステーキの構成上の課題を解決するうえで、マルチ材料対応の3Dプリンターは不可欠な存在だ。

Alt-Meatを作るとき、動物の構造を模倣した3Dデータに従って、血液、脂肪、タンパク質を同時に出力する。これにより、味だけでなく、食感や歯ごたえまでそっくりな代替ステーキができあがる。

マルチ材料を同時に出力する3Dプリンターを使うと、デジタルデータを変えるだけで、さまざまな動物(牛、豚、羊など)の代替肉だけでなく、ヒレサーロインリブロースなどさまざまな形状も作り出すことができる。

実際にこれは、Redefine Meatが3Dプリンターで作製したリブロースだ。

3Dプリンターで作られたリブロースAlt-Steak 出典:Redefine Meat

Redefine Meatの代替肉Alt-Meat は、Alt-MuscleAlt-FatAlt-Bloodという異なる材料から構成される。

3Dプリンターで作られる肉は、動物肉と比べて環境への影響が95%少なく、コレステロールを含まない。

大成功に終わったブラインド試食会

Best Meisterとコラボしてテルアビブで実施された試食会は、2日間の予定で開催された。

試食会で列に並ぶ人々 出典:Redefine Meat

Redefine Meatによる3Dプリント肉の見た目、風味、食感を体験できるように、香辛料をほとんど使わずに提供された。2日で200名を集める予定が、1日で600人が参加し、わずか5時間で約1000個が完売するという盛況ぶりだった。

今回の試食会では、人々には代替肉であることは事前に知らされなかった。食べたのが「動物肉ではない」と聞いた人々の反応を動画で確認できる。

この盛況ぶりは、Redefine Meatにとって想定外だった。事前のアナウンスなしで、開始5分後には列ができていたという。

Redefine MeatのCEOであり共同創業者のEshchar Ben-Shitrit氏は、今回の反応について次のように語っている。

「コロナの影響で、試食会は小さな町で実施されるため、1日100人くらい来てくれるかなと予想していました。しかし、口コミが広がり、1日に600人が来てくれたのです。しかも、50分待ちの列を作って。今回わかったのは、肉好きな人でも当社の代替肉を好んでくれるということです。環境や動物に優しいだけでなく、本物の肉のような味や食感がありますからね」

プレスリリースによると、試食した人の90%が肯定的な反応を示している。今回の試食会で集まった収益は、コロナウイルスの影響を受けた地元のレストランに寄付される。

3Dプリント肉に取り組む世界のプレーヤー

複数材料を同時に出力する3Dプリンターで作った同社ステーキ 出典:Redefine Meat

3Dプリンティング技術で食の改革に取り組むのはRedefine Meatだけではない。

同じくイスラエルのSavorEatは、昨年、テルアビブ証券取引所に上場した。 

SavorEatは、3Dプリンターを使って調理済みのバーガーパテを6分で作っている。今年夏までにイスラエルの人気ハンバーガー店でテスト販売を開始する予定。

Meat-Techは3Dプリンターを使って培養肉を開発している。2019年にテルアビブ証券取引所に上場、2020年12月には厚さ10mmの牛脂肪構造の作製に成功している。同社は米国IPOに向けた準備も進めている。

スペインでは、Novameatが3Dプリンターにより牛や豚のステーキ肉を開発し、今月、世界9位のミシュラン2つ星レストランとの提携を発表した。

ファーストフード店のKFCは、ロシア企業3D Bioprinting Solutionsと提携して、3Dプリンターによるチキンナゲットを開発することを発表している。

 

参考記事

Redefine Meat Teams Up with Israeli Meat Distributor Best Meister to Pull off World’s Largest Carnivore-targeted Blind Tasting of Alternative Meat

Redefine Meat on Why 3D Printing is Best-Placed to Replicate Animal Meat

Redefine Meat Announces Distribution of 3D-Printed Meat Through Israeli Meat Distributor

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アイキャッチ画像の出典:Redefine Meat

 

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