韓国のスタートアップ企業SeaWithは、2022年末までに培養肉のテスト販売を目指して開発を続けている。
藻類をベースとする独自の培地と足場を開発している同社は、韓国で最初に培養肉を販売する企業になる可能性がある。
2022年末のテスト販売を目指す韓国培養肉スタートアップSeaWith
SeaWithは2年前に設立された韓国、デグ(大邱)を拠点とするスタートアップ企業。
他社の培養肉企業と同じように、SeaWithも動物から採取した細胞に栄養を与えて培養して、動物を殺さずに肉を開発する。
1点特徴をあげるとすれば、同社は藻類を原料に細胞培養用の独自の培地、足場を開発していること。
豊富に入手できる地元の微細藻類を活用し、FBSに代わるアニマルフリーな培地を開発することで、高コストという培養肉生産の課題に取り組む。
SeaWithによると、同社の微細藻類由来の培地によってFBSの使用量を80%抑えることができるという。
すでに大幅なコストダウンに成功しているが、微細藻類の生産を拡大させることで、さらなるコストダウンを目指している。
SeaWithは培地だけでなく細胞が育つための土台となる足場も藻類を原料に開発している。
「Ace-Gel」という藻類ベースの足場上で細胞は分化、成長し、やがて組織構造を形成する。これをインキュベートすることで、ステーキ肉の厚み、食感を模倣した培養肉ができあがるという。
現在はまだ開発段階にあるが、SeaWithのタイムラインははっきりしている。
規制をクリアできたうえでのタイムラインとなるが、2022年終わりまでに技術と生産能力を拡大し、レストランでテスト販売したいと考えている。
SeaWithは韓国のアーリーステージのスタートアップに投資するBluepoint Partners、Enlight Venturesから5億ウォン(約4800万円)の出資を受けている。
培養肉の競争が普及を加速させる
SeaWithの予定通りに進めば、同社が韓国で最初に培養肉を販売する企業になる可能性が高い。
韓国で培養肉に取り組むプレーヤーにはほかにCellMEAT、DaNAgreenがいる。
CellMEATは今年約4億7000万円を調達しており、FBSを使わない独自の細胞培養法と培地を開発している。
DaNAgreenは足場、細胞、培養培地、バイオリアクターという培養肉の開発に必要な4つ全ての開発を目指しており、商品化のタイムラインを今後2年から3年に定めている。
これまでに培養肉の販売に成功したのはアメリカのイート・ジャストのみ。
昨年12月、シンガポール当局はイート・ジャストの培養肉の販売を承認した。この春には同社の培養肉を使った料理のデリバリーも開始している。
培養肉に取り組む企業は世界で50社以上おり、いずれも畜産による環境破壊に終止符を打ちたいと考えている。
SeaWithのホームページによると、細胞培養で作られる培養肉は、必要なエネルギーが畜産の55%ですみ、排出される温室効果ガスは畜産のわずか4%。土地も畜産の100分の1ですむ。
培養肉が普及すれば、これまでの食肉生産に不可欠であった広大な土地、大量の水、抗生物質が必要でなくなり、温室効果ガスの排出量を減らせるほか、動物に由来する感染症の発生を防ぐことができる。
農業用地の7割以上が家畜の飼育に使用されている一方で、家畜由来のタンパク質がタンパク質全体の4割弱であることを考えると、培養肉が実現する生産性には期待が集まる。
最近ではイスラエルのFuture Meatが培養肉の生産コストを110gあたり4ドル以下にまで削減したことを発表。
培養肉が味、食感、価格の3点で動物肉に匹敵するのは2032年になると予測するBoston Consulting Group(BCG)の最新レポートに対し、Future Meatは2029年までに実現できるだろうと予測している。
培養肉の普及はまだ先のこととなるが、最近のこうした大衆化に向かう動きが加速する背景には、SeaWithのように従来のFBSに代わる安価な生産手段を開発する企業の登場が関係している。
参考記事
SeaWith Wants To Bring Cell-Based Meat To South Korean Restaurants By 2022
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アイキャッチ画像の出典:SeaWith