菌類由来のタンパク質を開発・製造するスタートアップ企業による、新たな業界団体「菌類タンパク質協会(the Fungi Protein Association:FPA)」が結成された。
FPAの創設メンバーは、Quorn、Nature’s Fynd、ENOUGH、The Better Meat Co.、MyForest Foods、The Protein Brewery、Prime Roots、Mycotechnology、Mycorena、Aqua Cultured Foods、Mush Foods、Bosque Foodsのスタートアップ企業のほか、ProVeg 、The Good Food Instituteが含まれている。
FPAは消費者、公共政策の両面で菌類タンパク質を提唱するほか、この分野における消費者調査も実施するとしている。
菌類タンパク質の業界団体「菌類タンパク質協会(FPA)」が発足
微生物発酵は大きく精密発酵とバイオマス発酵に分類される。微生物を「生産工場」として特定成分を生成させる精密発酵に対し、微生物を成長させたものを食用タンパク質とする技術はバイオマス発酵となる。今回結成されたFPAに参画する企業の大部分はバイオマス発酵企業となる。
大豆やえんどう豆など穀物を原料とするプラントベース食品に対し、菌類タンパク質はバイオリアクターやトレーなどで独自の発酵プロセスで成長し、数日で収穫される。
収穫されるタンパク質そのものは必須アミノ酸などの栄養を豊富に含んでおり、室内農場のように施設内で効率的に成長させることが可能なため、土地利用の点で効率が良い。
代表格はイギリスのQuornで、1985年に英国で製品化された。長い間、菌類タンパク質分野ではQuornが唯一のブランドとなっていたが、この数年、Meati Foods、MyForest Foods、Nature’s Fyndなど新しいプレーヤーによる上市が実現している。最近では二酸化炭素を原料とするソーラーフーズがシンガポールでタンパク質粉末「ソレイン」の販売認可を取得した。
QuornでCEOを務めるMarco Bertacca氏は、「世界はより多くのタンパク質を必要としており、菌類発酵はそれを可能とする美味しくて持続可能な方法を提供します。菌類に情熱を持つ仲間と協力して、菌類が人間の健康と地球環境の改善にもたらす素晴らしい方法について認識と評価を高められることを嬉しく思います」とコメントしている。
FPAに参画する主なバイオマス発酵企業
Nature’s Fynd:アメリカのイエローストーン国立公園の熱水泉に生息する極限環境微生物を使用し、Fyプロテインを作成。今年ホールフーズで代替肉パテを発売したほか、昨年にはクリームチーズを限定発売した。昨年、3億5000万ドル(当時約385億円)を調達。
Mycorena:スウェーデン企業で、マイコプロテインを使った代替肉、脂肪、バターを開発している。スウェーデン、ヨーテボリにパイロット工場を有しており、最近、マイコプロテインを使った3Dプリンティングによる代替シーフード開発でRevo Foodsと提携した。
The Better Meat Co.:菌糸体由来のマイコプロテイン「Rhiza(リザ)」を開発。「Rhiza」は卵よりも多くのタンパク質、牛肉より多くの鉄分、バナナより多くのカリウムを含む、アレルゲンを含有しない「完全なタンパク質」だとしている。今年、リンクトイン本社でマイコプロテイン由来のフォアグラ、ターキーハムを限定提供した。
Aqua Cultured Foods:バイオマス発酵で代替シーフードを開発する数少ない企業の1つ。マイコプロテイン由来のシーフードを開発しており、先月ホテル経営を行うスイスのSV Groupとの提携を発表した。スイスの小売大手ミグロスとも提携している。
参考記事
Fungi Protein Association founded to advocate for ‘mushrooming’ new sector
Fermentation leaders form Fungi Protein Association
https://gfieurope.org/wp-content/uploads/2022/04/2021-Fermentation-State-of-the-Industry-Report.pdf
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アイキャッチ画像の出典:The Better Meat Co.