Foovo Deep

ジャガイモで乳タンパク質を開発|イスラエルのFinally Foodsがプレシード資金を調達

 

イスラエルの植物分子農業企業Finally Foodsは今月、The Kitchen FoodTech Hubイスラエル・イノベーション庁(IIA)からプレシード資金を調達した。

Agfunderの報道によるとFinally Foodsは、アメリカ進出を長期目標として、1つのジャガイモで4つのカゼインタンパク質を生成することを取り組んでいる。

植物を工場として動物タンパク質を作る試みでは、最近、Moolec Scienceの豚タンパク質を作る遺伝子組換え大豆が米国農務省(USDA)から承認された。

Moolecの場合、大豆+豚のタンパク質で上市を目指しているが、Finally Foodsはジャガイモからカゼインタンパク質を抽出し、最終産物が遺伝子組換え食品となることを回避する戦略を考えている。現在これに向けて、効率よくカゼインタンパク質を抽出・精製するシステムの開発に取り組んでいる。

Foovoの認識では、ジャガイモを活用した分子農業でカゼインを開発する企業はFinally Foodsが初となる。

AI技術でプロセスを加速

イメージ画像

Finally Foodsは、計算予測生物学(CPB)プラットフォームを有するイスラエル企業Evogeneで研究開発に従事していたBasia J. Vinocur博士と、銅由来の抗菌技術を開発するCurical Technologiesを創業したDafna Gabbay氏の2名により2024年に設立された

動物と同等のタンパク質を生成する技術には、精密発酵、分子農業がある。植物を工場とする分子農業では栽培に時間を要するため、研究開発サイクルが長くなる特徴がある。

Finally Foodsはこの点について、Evogeneで開発されたAI技術を使用することで、ジャガイモの成長、発育、タンパク質発現レベルに対するさまざまな改変の影響をシミュレートし、実際の試験(ジャガイモの栽培など)に移行する前に技術を最適化することができるとしている。

これにより、植物育種のプロセスから試行錯誤を取り除き、より効率的で的を絞ったアプローチが可能になるという。

植物分子農業でカゼインを開発する企業は9社に

イメージ画像

分子農業による動物タンパク質の開発では、精密発酵と同様、乳タンパク質を開発対象に選定する分子農業企業が多い。

しかし、精密発酵ではホエイもカゼインも多いのに対し、Foovoの調査に基づくと、分子農業ではカゼインをターゲットとする企業が大部分を占める。国内ではイネと植物工場を活用してカゼインを開発するKinishが登場している。下記にこれら9社と、各社がカゼイン開発に使用する植物を一覧にまとめている。

ここから先は有料会員限定となります。

読まれたい方はこちらのページから会員登録をお願いします。

すでに登録されている方はこちらのページからログインしてください。

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Finally Foods

 

関連記事

  1. オランダのViviciが精密発酵ホエイの生産プロセスをスケールア…
  2. ドイツ企業Kynda、食品副産物を活用した「廃棄物ゼロ」の菌糸体…
  3. 代替肉の米インポッシブルフーズが約560億円を調達、調達総額は2…
  4. 英Multus Biotechnologyが約12億円を調達、増…
  5. 韓国企業Zikooinは廃棄される穀物を使って代替肉Unlime…
  6. 動物油脂のようにふるまう植物油脂を開発するLypid、約4.7億…
  7. NotCoが約95億円を調達、食品業界向けのAIプラットフォーム…
  8. 米Aqua Cultured Foodsがシカゴで生産施設の建設…

精密発酵レポート好評販売中

おすすめ記事

規格外・余剰農産物のB2B販売プラットフォームを提供するFull Harvestが約26億円を調達

規格外・余剰の農産物をB2Bで販売するプラットフォームを構築するFull Har…

アメリカが培養肉販売を承認|GOOD Meat、UPSIDE FoodsがUSDAの認可を取得

アメリカの培養肉企業2社がついに、米国当局から培養肉の販売許可を取得した。…

Juicy Marblesが植物由来の骨付きリブ肉の開発に成功、今月より限定販売をスタート

スロベニアの代替肉企業Juicy Marblesは今月、骨付きの代替リブ肉を発表…

植物工場のスプレッドが40億円を調達、代替肉・いちごの新規事業を加速

京都を拠点とする植物工場スタートアップのスプレッドは今月、シリーズAラウンドで4…

ダノンとBrightseedが提携を拡大、AIを活用して植物の隠された可能性を追求

世界大手の食品・飲料企業ダノンはバイオテック企業Brightseedとの提携を拡…

スロベニア企業Juicy Marblesは世界初の植物性フィレミニヨンステーキを開発

スロベニアのスタートアップ企業Juicy Marblesは100%植物原料ででき…

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

精密発酵レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

▼運営者・佐藤あゆみ▼

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,671円(05/05 12:19時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(05/04 21:36時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(05/05 01:09時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(05/05 18:11時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(05/05 10:52時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(05/04 21:08時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP