アグテック

塩水で作物を栽培するサウジアラビアのRed Sea Farmsとは

 

サウジアラビアを拠点とするRed Sea Farmsの技術によって、水不足な地域でも塩水を利用した農業が可能となる可能性がある。

Red Sea Farmsは淡水の代わりに塩水を使った農業技術を開発している。

厳密には海水の中で農作物を育てるのではなく、作物の栽培温室の蒸発冷却に塩水を活用している。

作物に淡水の代わりに塩水を使用することで、淡水の使用量を最大90%削減できる。

温室では、太陽光パネルによる二酸化炭素排出量削減に加え、蒸発冷却に塩水を利用することで、エネルギー・水消費量の少ない稼働が可能となる。

出典:Red Sea Farms

公式サイトによると、塩水による栽培、冷却機能によって、淡水とエネルギーの使用を最大10分の1に削減できるシステムを実現できる。

これにより、淡水へアクセスできないエリアでも、豊富で無料な海水を使って農業ができるようになる。

Red Sea Farmsは現在、塩水で栽培したトマトを販売している。

塩水で栽培されたトマトは、非遺伝子組換え作物で通常のトマトよりも甘い。これは、塩に打ち勝つために、植物が砂糖を余分に産生するためだという。

また、これらのトマトはいくぶん皮が厚く、鮮度保持期間の延長も見込めるという。ミニトマト、トマトは、サウジアラビアのジッダの複数箇所で販売されている。

また、サウジアラビアのキング・アブドラ科学技術大学(KAUST)に塩水を活用する2000㎡規模の温室試験施設を設置している。

Red Sea Farmsは、KAUSTで植物科学教授を務めるマーク・テスター氏(Mark Tester)、農業工学のエキスパートRyan Lefers氏によって2018年に設立された、KAUSTのスピンオフベンチャー。

マーク・テスター氏(左)とRyan Lefers氏(右) 出典:Red Sea Farms

これまでにKAUSTイノベーションファンドとResearch Products Development Companyから出資を受けており、調達総額は430万ドル(約4億7000万円)。

健康に優しいサステイナブルな食品生産に塩水を活用し、食料不足を削減することを理念としている。

The Spoon誌によると、現在は塩水を活用した作物を生産しているが、長期的には自社技術を他社へライセンスアウトすることを長期的な目標としている。

 

参考記事

Red Sea Farms is Growing Crops in Saltwater

KAUST, RPDC and KACST launch new state-of-the-art greenhouse for agri-tech startup Red Sea Farms

アイキャッチ画像の出典:Red Sea Farms

 

関連記事

  1. 米Apeel Sciencesがアボカドの熟度を即座に把握する新…
  2. 穀物の腐敗検知・予測センサーのTeleSenseが約10億円を資…
  3. 英Tropic、「12時間変色しないバナナ」をゲノム編集で開発|…
  4. 二酸化炭素から動物飼料用のタンパク質を作るDeep Branch…
  5. 農業データ収集ソフトのArableが約20億円を資金調達
  6. 家庭生ゴミを鶏の飼料に変える米Millが開発したキッチンデバイス…
  7. フードロスに取り組む米Apeel Sciencesが約274億円…
  8. ポーランド企業NapiFeryn Biotech、菜種油粕由来の…

おすすめ記事

スイスの研究チームが研究室で細胞培養によるチョコレートを開発

細胞培養による培養肉の開発が世界的に進んでいるが、今後はチョコレートも工場で作ら…

個人から企業まで|貼るだけで果物の鮮度を保持するシールを開発したRyp Labsとは

アメリカ、ワシントン州を拠点とするRyp Labsは、果物の保存期間を最大14日…

米Newlightの生分解性プラスチックAirCarbon、プラスチック汚染と温室効果ガスの同時解決へ

カリフォルニアのNewlightは、温室効果ガス排出と海洋プラスチック問題を同時…

シェフと再生医療研究者が立ち上げた培養肉企業ダイバースファームが目指すもの

ミシュラン星付きシェフと再生医療の研究者が立ち上げた異色の培養肉企業ダイバースフ…

Steakholder Foodsが3Dプリンティングによる培養霜降り牛肉を発表

イスラエルの培養肉企業Steakholder Foods(旧称MeaTech)は…

培養肉企業のパイオニア、モサミートがオランダに培養肉工場を開設

オランダを拠点とする培養肉企業モサミートは今月、オランダ、マーストリヒトに2,7…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(03/20 14:50時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(03/21 00:35時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(03/21 04:28時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(03/20 20:47時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(03/21 12:58時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(03/20 23:48時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP