食品メーカー向けに精密発酵カゼインのプラットフォームの提供を目指すオーストリア企業Fermifyが、精密発酵カゼインのサンプル提供を開始したことを発表した。
Fermifyは公式サイトで現在、β-カゼインのサンプル注文を受け付けている。
2021年に設立されたFermifyは、昨今急増している精密発酵企業の中で、独自のポジションを築いている。
同社は、自社で製造した精密発酵カゼインを使用した商品開発や、他社への原料供給ではなく、食品メーカーにカゼインを自社製造するための自動化されたB2Bプラットフォームの提供を目指している。Foovoの認識では、精密発酵による乳製品開発で、プラットフォーム事業を行う企業はFermifyのみとなる。
オーストリア企業Fermify、カゼインサンプルの提供を開始
Fermifyは昨年5月のシードラウンドでの資金調達時、45社を超える見込み客がいることを発表した。
今回、カゼインのサンプル提供を開始した経緯として、過去1年半で世界中の酪農家、チーズメーカー、食品メーカーから問い合わせがあったものの、入手できる精密発酵カゼインが市場になかったことを挙げている。
β-カゼインのサンプル提供により、より多くの見込み客に精密発酵カゼインを直接使用してもらうことで、Fermifyのプラットフォーム導入を検討してもらう機会創出が可能になる。
精密発酵による食品開発に興味があるものの、自社で技術やインフラのない食品メーカーにとっては、Fermifyのカゼインを試すことで、他社からの原料調達か、自社生産かの方向性を検討することが可能になる。
Fermifyによると、現在は伸縮性、融解性などの機能性を試験するための50gの提供となるが、夏にはチーズなど乳製品開発のために1-5kgの提供を開始する予定だという。
非カゼインミセル加工の謎を解明
Fermifyは、培養脂肪スタートアップPeace of Meatを設立したEva Sommer氏と、Christoph Herwig氏が2021年に設立した。同社は昨年、2023年半ばまでに最初のユニット販売を目指していたが、現在までに販売は確認されていない。
Fermifyは、乳タンパク質生産の持続可能で経済的に実行可能なソシューションのために、連続的な精密発酵を解明した最初の企業だと主張している。
Sommer氏は年末に自身のリンクトインで、過去12ヵ月にわたり、パイロットスケールでデジタルツインにより制御される組換えカゼイン製造の連続プロセスを目標に、プロセス全体の最適化に取り組んだ結果、成功したことに言及した。
同時に、ミセルでないカゼインをチーズや他の乳製品にどのように加工するかの謎も解明できたと述べている。
「カゼインミセルの製造は、1kgあたり10-12ユーロ以下の製品にとって不必要な苦痛であり、複雑すぎるため、私たちの仮設が正しかったことに安心しています」(Eva Sommer氏)
同社はβ-カゼインの食品用途における可能性を社内で研究している。
最近の発表では、β-カゼインがバルク・機能性成分いずれにおいて可能性があること、バルク成分関連の研究において、β-カゼインが脂肪、水、塩と共に、チーズカードを作るうえで唯一の構造化剤としての能力を持つことなどを見出したとしている。
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アイキャッチ画像の出典:Fermify