スペイン政府は4月15日、学校給食の健康性と持続可能性を高める「健康的かつ持続可能な学校給食に関する政令(Real Decreto 315/2025)」を承認した。
対象は幼児教育機関、小・中・高、職業訓練学校などが対象となる。
注目ポイントは、ヴィーガンを含む植物由来メニューの制度的保証だ。
第10条は「倫理的・宗教的・医療的理由」で特別メニューを常設するよう義務付け、家庭が用意した特別メニューを安全に保管・加温する設備も求めている。これにより保護者と生徒は請求権としてヴィーガン給食を選択でき、学校側は拒否できなくなる。
施行日は12ヵ月後の2026年4月16日。ただし、持続可能性に関わる食材の調達・供給基準を公立・私立に適用する第4条2項のみ、さらに1年間の施行猶予が設けられている。
植物タンパク質中心の主菜提供、自販機にも栄養基準導入

出典:https://www.mpr.gob.es/Paginas/index.aspx
メニュー基準では「植物タンパク質をベースとした主菜を週1〜5回」提供し、ベジタリアンメニューを採用する学校では週5回すべてを植物タンパク質の主菜に置き換えると明記(第9条2.b-4) 。
また、学校内の自動販売機の約70%が推奨栄養基準を満たしてないとし、自販機やカフェテリアにも、1食当たりのカロリー制限、飽和脂肪酸、塩分、糖分などの基準が設けられ、基準を超える製品の販売は禁止される(第5条)。
スペインでは2010年7月、教育機関における食品供給基準に関する合意文書が承認された。この合意文書は栄養指針を示すのみで法的拘束力がなく、自治州によって実施にばらつきが生じた。
その後、AESANの監査で、赤身肉を月4回以下の提供に抑えている施設が全体の4割未満ということが判明し(PDF p4-5)、2021年のPNCOCA(食品に関する国家計画)で全国統一の最低基準が策定された。
今回の政令は、努力義務にとどまっていた推奨基準を法的義務へ格上げしたものとなる。
本政令は植物性食品を栄養・環境両面で基準食に位置付け、動物性食品を「適度に」へと再定義している(第4条1-a)。
背景には、スペインでは低所得層家庭の46.7%の小児が肥満であることや、食料システムによる環境負荷への懸念がある。
政府はあわせて、家庭保護・児童貧困対策として2億ユーロ(約326億円)の交付金を拠出することも発表した。
ヴィーガンを選択できることが例外から標準へ移行する点で、本政令は欧州において先進的なモデルとなり得る。食育や環境政策と連動した“学校発”のプラントベース推進策が、国内外の教育現場に広がることが期待される。
※本記事は、政令、プレスリリースおよびFoovoの調査に基づいて独自に執筆しています。すべての情報は法令・プレスリリースに基づきますが、情報を確認しやすいように、各箇所にリンクを付与・条項箇所を明記しています。
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