代替プロテイン

菌糸体肉の米Meati Foodsが約155億円を調達、6000箇所以上の小売店に拡大

 

菌糸体肉を開発する米Meati Foodsは今月、シリーズC1ラウンドで1億ドル(約155億円)を追加調達した

ラウンドはGrosvenor Food & AgTechが主導し、Prelude VenturesBONDRevolution GrowthCongruentが参加した。これにより同社の調達総額は3億7,450万ドル(約583億円)となった

Meatiは2022年7月に1億5,000万ドル(当時約199億円)を調達しており、今回の調達額は過去2番目に大きいものとなった。

菌糸体肉のMeati Foodsが約155億円を調達

出典:Meati Foods

菌糸体肉を開発する代表企業となったMeatiが販売を開始したのは約2年前。2022年2月、同社は自社オンラインストアで販売を開始。24時間で完売という好調なスタートを切った。

昨年3月には、スーパーマーケットチェーンSprouts Farmers Marketとの提携により全国的な小売デビューを実現した。同年5月にはスーパーマーケットチェーンMeijerとの提携を通じ、ミシガン州、オハイオ州などの全店舗(260店舗)で取り扱いを開始。8月には全米のホールフーズマーケット全店舗での販売を実現した

Meatiの製品を取り扱う小売店は現在6,000店舗以上となり、AgFunderの報道によると、年末までに10,000店舗への拡大を目指しているという。4月にはクローガー系列の2000店舗でも取扱いが開始された。

アカパンカビを使用した代替肉

出典:Meati Foods

同社は現在、クラシックカツレツクラシックアサダステーキカルネアサダステーキ、クリスピーカツレツ4製品を販売しており、成分表示にはMushroom Root (mycelium){キノコの根(菌糸体)}と表記されている。

Meatiは糸状菌の1種であるアカパンカビNeurospora crassa)の食品用途に関し、昨年10月に特許を取得した。同社によると、アカパンカビはMeatiが何千もの菌種を調査した後に選択したもので、マイコトキシンを生成しないため、追加の精製処理を施すことなく安全に食べられるという

順調に見えるMeatiだが、この1年で複数回の人員削減や経営陣の再編が行われた。AgFunderの報道によると、昨年1月に開設した工業規模の生産施設「メガランチ」は現在も稼働している。「メガランチ」が本格稼働すると年間4000万ポンド(約18,000トン)の製品を製造でき、これは1日あたり約50トンの生産能力となる。

アメリカの人口を3.2億人、1人あたりの食肉の年間平均消費量を約100キログラムと仮定すると、アメリカでは1年間に3200万トンの食肉が消費される試算となる。

この試算に基づくと、「メガランチ」ではまだ十分な供給量とは言えないが、Meatiは過去に年間数億ポンドの「ギガランチ」建設計画に言及しており、今回の大型調達により、さらなる生産拡大に向けて取り組んでいくと思われる。

2年で急速に普及した菌糸体肉

出典:Meati Foods

Meatiが順調に取扱い店舗数を伸ばしている背景には、製品のリピート率の高さがあるだろう。プレスリリースによると、Meati製品のリポート率は60%を誇るという。

高いリピート率の背景には製品の美味しさが第一に関係していると思われるが、ミンチ肉が主流だった時期にホールカット製品に取り組んだ先進性、完全なタンパク質、食物繊維、ビタミンB、さらに天然の繊維構造を持ち早い成長率を誇る菌糸体を利用したことも、一定のシェアを獲得した要因になっているだろう。

菌糸体からホールカットの代替肉を作る企業は増えており、Meatiのほかにも、Adamo FoodsLibre FoodsThe Better Meat CoBosque Foodsなどがホールカット製品を開発している。

 

参考記事

Meati Foods Adds 2,000 Retail Locations; Raises $100 Million

Brief: Meati Foods raises $100m, rolls out at Kroger nationwide

Meati Foods bites into another $100M amid growth to 7,000 retail locations

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Meati Foods

 

関連記事

  1. アレフ・ファームズ、イギリスで培養肉の申請書類を提出
  2. 精密発酵で母乳タンパク質を開発するHelainaがシリーズAで約…
  3. Mogale Meatがアフリカで初の培養鶏胸肉を発表
  4. 培養肉セミナー動画(日本細胞農業協会理事・岡田健成氏)|2024…
  5. 動物を殺さずにコラーゲン・ゼラチンを開発するJellatechが…
  6. 精密発酵で脂肪を開発するNourish Ingredientsが…
  7. バーガーキングのプラントベースワッパーを食べた感想【何度でも食べ…
  8. Doehlerが代替パーム油を生産する英Clean Food G…

精密発酵レポート好評販売中

おすすめ記事

ネスレが精密発酵ホエイを使用したプロテインパウダー製品を発売|2回目の製品販売

大手食品メーカーのネスレが、精密発酵ホエイを使用したプロテインパウダー製品を発売…

米Atlantic Fish Co、世界初の培養ブラックシーバスを発表

アメリカの培養シーフード企業Atlantic Fish Coは今月、世界で初めて…

ユニリーバ、精密発酵アイスクリームをBreyersブランドで発売|パーフェクトデイのホエイを使用

食品・日用品大手のユニリーバが精密発酵に参入した。今月22日、ユニリーバ…

Shiruが「見た目も挙動も動物油脂のような」植物性代替脂肪「OleoPro」を発表 

カリフォルニアを拠点とするフードテック企業Shiruは、最初の製品となる代替脂肪…

マクドナルド、ビヨンドミートと開発した植物性マックナゲットをドイツで発売

マクドナルドはビヨンドミートとの提携を通じて、ドイツのマクドナルド1400店舗で…

GOOD Meatが培養肉生産に無血清培地を使用する認可をシンガポール当局から取得

米イート・ジャストの培養肉部門GOOD Meatは18日、培養肉生産に無血清培地…

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

精密発酵レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

▼運営者・佐藤あゆみ▼

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(07/26 13:09時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(07/26 22:36時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(07/27 02:20時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(07/26 19:03時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(07/27 11:34時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(07/26 22:02時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP