イギリスのスタートアップ企業Multus Biotechnologyは、世界初の増殖培地工場を建設するため、シリーズAラウンドで950万ドル(約12億円)を調達したことを発表した。
Multusは培養肉を大量生産するための重要な成分となる増殖培地を開発しており、イギリスに世界初となる培地生産工場の建設を計画している。
英Multus Biotechnologyが約12億円を調達、増殖培地工場の建設へ
Multusは手頃で高性能かつ拡張可能な増殖培地の開発にあたり、データサイエンスと自動化を組み合わせ、従来とは異なる増殖培地成分のライブラリをスクリーニングしている。公式サイトによると、増殖培地の作成では精密発酵技術も使用している。
Multusは自社の増殖培地について、培養肉に限らず、乳製品、皮革など細胞農業製品の低コスト化、スケールアップを可能にするものだとしている。
同社は2021年7月にシードラウンドで160万ポンド(当時約2億4000万円)を調達し、最初の製品となる動物血清を含まない「Proliferum M」を発売した。
「Proliferum M」は、哺乳類、鳥類、魚介類の筋肉、脂肪、結合組織の細胞を成長させることが実証されている。Multusはまた、食品として安全な増殖培地を生産するため、昨年12月にISO 220001認証を取得している。
世界初の増殖培地に特化した生産施設
Multusは今回調達した資金で、イギリスに世界初の増殖培地用の工場を建設し、手頃で食品グレードの増殖培地を商用生産することで、培養肉の大衆化を促進する。また、高性能な増殖培地製剤と食品グレードな原材料の製品開発を加速する。
「この資金を使用して、細胞農業産業を手頃な価格でスケールアップするために、新成分の発見、スマートな製剤設計、食品として安全な増殖培地生産におけるイノベーションを促進できることを嬉しく思います。
培養肉をすべての人にとって持続可能で手頃な選択肢にする上で、私たちの増殖培地に対する独自のアプローチが重要な役割を果たすことを確信しています」(Multus CEOのCai Linton氏)
今回のラウンドはMandi Venturesが主導し、SOSV、Big Idea Ventures、SynBioVenに加え、旭化成も参加した。また、調達した資金のうち250万ドルは、欧州で最も競争力のあるスタートアップ助成金プログラムであるEICアクセラレーターを通じ、Innovate UKから授与されたものとなる。
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アイキャッチ画像の出典:Multus Biotechnology