代替プロテイン

チリのフードテックNotCoが約89億円の資金調達に成功、米国進出を目指す

 

チリのフードテックスタートアップのNotCoは、新たに約89億円の資金調達に成功した。

Twitterの共同創業者であるビズ・ストーンのフューチャー・ポジティブ、ベンチャーキャピタルのゼネラル・カタリスト主導の資金調達ラウンドで約89億円(8500万ドル)の資金調達に成功した。

今回のラウンドには、既存投資家であるKaszek Venture、Craftory、Amazonの共同創始者であるジェフ・ベゾスによるベゾス・エクスペディションズ(Bezos Expeditions)、Endeavor Catalyst、Indie Bio、Humbolt Capital、マヤ・キャピタル(Maya CapitalMaya Capital)も参加した。

NotCoは2015年に3人のチリ人起業家によって設立された南米のフードテックスタートアップ。

出典:NotCo

すべての製品に社名に冠した「Not」が含まれている。

たとえば、牛乳は「ノット・ミルク(NotMilk)」、代替ハンバーガーは「ノット・バーガー(NotBurger)」、アイスクリームは「ノット・アイスクリーム(NotIceCream)」、代替肉は「ノット・ミート(NotMeat)」というように、代替製品であることが前面に押し出されている

特定の製品カテゴリーに特化せず、同時に肉・乳製品・卵の代替品開発に注力しているのが特徴だ。

出典:NotCo

 

同社は今回の資金調達を受けて、米国進出を皮切りに海外展開を狙う。米国小売・レストランとの提携を検討していることを発表した。

NotCoは自社の人工知能(AI)を搭載した機械学習ソフトウェアGiuseppeを用いて、独自に蓄積した膨大な植物プロファイルから、動物性たんぱく質にマッチする理想的な植物成分を割り当てる。

つまり、生物学的に加工された食品を作るのではなく、既存の食品を分類し、どの植物成分を組み合わせれば代替したい動物製品に近くなるかに焦点を当てている。こうして、肉や乳製品の味だけでなく、食感、匂い、口当たりを再現している。

 

NotCoは植物性プロテイン市場において南米の巨大プレーヤーとなったが、米国へ進出するには、次のカテゴリごとの名だたる競合を相手にしなければならない。

代替肉 ビヨンド・ミート

インポッシブル・フーズ

代替卵 Eat Just
乳製品 Perfect Day

ビヨンド・ミート、インポッシブル・フーズ、Eat Justはカナダや中国などほかの市場を狙っていることを明かしている。

上記であげた競合と比較すると、NotCoのフードテックに対するアプローチは、インポッシブル・フーズやPerfect Dayよりも、ビヨンド・ミートに近い。

 

最大の狙いは乳製品市場

同社共同創始者のムックニックによると、最大のチャンスは乳製品だという。同社が獲得し、拡大したいのがまさに乳製品市場だ。

牛乳だけで数十億ドル規模の市場であり、中南米・米国の両方でNotCoは優位に立てると見込んでいる。

同社は大手ファーストフード、通販、D2Cといった取引を視野にいれている。他のベンダーに製品を供給することに注力することで、消費者がNotCoのブランドを意識しなくなることを期待している。

つまり、インテルのCPUのようなイメージだ。前面に出るのではなく、消費者が口にする食品にはNotCoの代替食品が使われるというように、ほかの製品の中で活躍する存在を目指している

下図のように、すでに川上・川下の企業と提携し、着実にフードテックの「インテル」になる準備を進めている。川上の提携先には、でんぷん製品を取り扱うイングレディオン、食品・飲料メーカーのADM、穀物メジャーのカーギルなどがある。

 

NotCo共同創始者のムックニックは2024年までに、事業の70%を米国拠点とする約315億円(3億ドル)規模の企業にすると語っている。

 

スペイン語動画▼

 

参考記事:

Chile’s NotCo Raises $85M to Bring Its Plant-based Proteins to the U.S.

Competing with both Perfect Day and Beyond Meat, Chile’s NotCo raises $85 million to expand to the US

NotCo

アイキャッチ画像の出典:NotCo

関連記事

  1. 培養フォアグラを開発する仏Gourmeyが約11億円のシード資金…
  2. 培養肉開発用の成長因子を低コストで量産するCore Biogen…
  3. Else Nutritionとダノンが協業、アレルギー対応の乳製…
  4. 精密発酵で乳タンパク質を製造するImagindairyが約14億…
  5. 牛を使わずに本物と同等のカゼインを開発するエストニア企業ProP…
  6. 分子農業パイオニアの英Moolec Science、SPAC経由…
  7. 植物性チーズのStockeld Dreameryが約21億円を調…
  8. オランダのViviciが精密発酵ホエイの生産プロセスをスケールア…

精密発酵レポート好評販売中

おすすめ記事

イート・ジャストの代替卵JUST Eggが欧州の安全性承認を取得

米イート・ジャストの代替卵JUST Egg(ジャスト・エッグ)の主要成分が、欧州…

ダノンが細胞培養母乳を開発するイスラエル企業Wilkに出資

大手乳業メーカーのダノンは今月、細胞培養により代替母乳を開発するイスラエル企業W…

ビール酵母をアップサイクルして代替タンパク質を開発するRevyve、今年商用生産を開始予定

代替タンパク質開発において、アップサイクルを取り入れる企業が増えている。…

中国の培養肉Joes Future Foodが約12億円を調達、実証プラント建設へ

中国の培養肉企業Joes Future Food(中国語名:周子未来)がシリーズ…

菌糸体由来肉のMeati Foodsが全米で販売開始、Sprouts Farmers Market全店舗に導入

菌糸体由来の代替肉を開発する米Meati Foodsは、アメリカのスーパーマーケ…

フィンランド発、Hailiaの挑戦:魚の副産物から人間用のスマートシーフード製品の創出

十分に活用しきれていなかった魚の副産物をヒト向けのシーフード製品にアップサイクル…

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

精密発酵レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

▼運営者・佐藤あゆみ▼

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(07/26 13:09時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(07/26 22:36時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(07/27 02:20時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(07/26 19:03時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(07/27 11:34時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(07/26 22:02時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP