このニュースのポイント
- 香港培養肉企業Avant Meatsが310万ドルを調達
- 2021年に培養魚の市販化を目指す
- 資金の使途は生産コスト削減、研究開発加速
- 出資者には世界食品大手メーカーRegal Springsの会長も
香港発の培養肉スタートアップAvant Meatsがシードラウンドで310万ドル(約3億2千万円)の資金調達に成功した。
同社は今回調達した資金で、商品化に向けた量産計画をさらに進めるとともに、生産コストを削減したい考えだ。2021年に培養魚の市販化を目指している。
2021年の市販化が目標
細胞農業によって魚や肉など代替タンパク質開発に取り組むスタートアップはすでに80社以上いる。この中でAvant Meatsが特徴的なのは次の2点といえる。
- ターゲットを中国人に特定している
- 魚肚(ぎょと:魚の浮き袋のこと)・ナマコから開発に着手
魚肚・ナマコは大変人気のある中国珍味とされる。
しかし、水産物の消費量が最も多い中国では、高まる水産物の需要に対し供給が追い付かない状況だ。
深刻な乱獲対策のため、ナマコは2019年にワシントン条約により国際取引が制限された。
Avant Meatsの創業者Carrie Chanはこうした状況に着目し、絶滅が危惧される魚肚やナマコを守るため、培養魚の開発に乗り出した。
同社はその後、開発の対象をさらに広げ、先月には魚の切り身を発表。シンガポールで開催されたAgri-Foodイノベーションフォーラムで披露されたこの魚の切り身も、魚の細胞を培養して作られている。
Avant Meatsは調達した資金の使い道として、生産コストの削減と研究開発のスピードアップをあげている。同社が目指す商品化のタイムラインは2021年だ。
今回のラウンドには、China Venture Capital、香港で最初にSFCライセンスを得たスタートアップ投資機関AngelHub、代替タンパク質に特化したベンチャーキャピタルLever VCなどが参加した。
特に、世界的なティラピア(淡水魚)生産会社大手のRegal Springs会長であるMarkus Haefeliが出資者にいることは注目に値する。
Markus Haefeliは、食品には機能性、安全性、説明義務が求められることに触れたうえで、Avant Meatsの培養魚は生産プロセスが追跡可能であることから「食品に対する安心感がさらに高まる」ものとして、肯定的な見方を示している。
期待が高まる培養肉市場
MarketsandMarketsのレポートによると、培養肉市場は2025年までに2億1400万ドル、2032年までに5億9300万ドルになると予想される。
この成長を後押しするものとして、高まる動物福祉への関心、持続可能な環境の必要性、安心・安全な食への関心などがあるが、細胞農業技術のイノベーションも大きく寄与することは間違いないだろう。
先日、中国で初めて細胞培養肉サミットが開催された。南京農業大学の周光宏教授は、培養肉が食卓に並ぶまで、1gあたり3元(約48円)あるいは0.3元(約5円)までのコストダウンが必要だと指摘している。
この実現にあと5-10年かかるとの見解だが、最近のニュースを見るかぎり、培養肉はそう遠くない将来、わたしたちの食卓に登場することを期待してしまう。
代替卵のジャスト・エッグで有名なイート・ジャスト(Eat Just)は先日、シンガポールで世界初となる培養肉の販売許認可を取得した。同社の培養肉はシンガポールのレストランで販売される。
イート・ジャストの快挙によって、他社の培養肉スタートアップの市販化はますます現実のものに近づいていくだろう。その中にはもちろん、Avant Meatsも含まれる。
Avant Meatsは先月の新製品の試作品発表から、今回の資金調達によって商品化に向けて舵を切った。
イート・ジャストの快挙に続く、嬉しいニュースを来年聞けるかもしれない。
参考記事
Hong Kong’s Avant Meats Closes US$3.1M Seed Round To Commercialise Cultivated Fish In 2021
Hong Kong’s Avant Meats Raises $3.1M for Its Cell-Based Seafood
Tilapia kingpin invests in cell-based seafood co
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アイキャッチ画像の出典:Avant Meats