イギリスを拠点とする培養肉スタートアップCellulaREvolutionが今月、100万ポンド(約1億4千万円)を調達した。
CellulaREvolutionはニューカッスル大学のスピンオフベンチャーで、2019年に設立された。
同社は、培養肉、細胞治療が直面する次の2つの課題を解決するための技術を開発している。
・細胞を増殖させるために動物由来の血清を使用していること。
・細胞培養で利用可能な表面積がスケールアップするうえで大きな制限になっていること。
つまり、コスト・量産という2つの課題の解決に焦点をあてている。
無血清・大量生産を可能とするCellulaREvolutionの連続細胞培養

出典:CellulaREvolution
CellulaREvolutionによると、小さなステーキ肉には100億個の接着細胞が含まれており、これだけの細胞を生産するには、従来のバッチ生産では1つのバイオリアクターで1ヶ月要する。
同社の技術を使うと、1ヵ月を数日に短縮できるという。
CellulaREvolutionは、
●細胞培養から動物由来の血清を除去
●バッチ生産から連続生産へのシフト
を可能とする技術を提供する。
これにより、培養肉の生産コストを削減しつつ、生産量を増やすことが可能となる。
公式サイトによると、製品は次の2つ。
①無血清条件でも細胞増殖を高めるペプチドコーティング
②接着細胞の連続生産を可能とするバイオリアクター
①のペプチドコーティングにより、高価で、倫理的に問題となる動物由来の血清を培養プロセスから取り除くことができ、コストを抑えて、より安定した細胞培養ができるようになる。

出典:CellulaREvolution
②のバイオリアクターで、これまでよりも収量の高い細胞生産を見込める。

出典:CellulaREvolution
一般に、細胞の大量培養には連続培養とバッチ培養がある。
●バッチ培養は培地に細胞を播種した後、新たに培地の供給や培養液の取り出しを行わない。そのため、細胞は増殖するが、次第に栄養分は消費され、ある細胞密度に達すると細胞は増殖できなくなる。操作やシステムは単純だが、得られる細胞の数は少ない。
●これに対し、連続培養は培養系に新しい培養液を連続的に追加し、細胞を含まない培養上清を排出して、細菌が一定の濃度・一定の増殖速度で増殖しつづけるように工夫した培養法をいう。
CellulaREvolutionのバイオリアクターが採用するのは後者で、これまでの生産プロセスを使用する場合、1㎡の連続生産には約7000㎡が必要になるという。
培養肉が市場に流通するためには、コストダウンは避けられない課題であり、CellulaREvolutionの技術はこれを可能とする。
同社の技術は培養肉以外にも、細胞治療や医薬分野にも活用できるが、培養肉が特に成長を見込める分野だと考えている。
今回のラウンドにはCPT Capital、Stephan Schmidt氏、Orange Light Ventures、Northstar Ventures、North East Innovation Funds、Northern Accelerator Seed Investment Fundが参加した。
CPT Capitalはメンフィスミーツ、アレフ・ファームズ、BlueNaluなどの培養肉企業にも出資しているベンチャーキャピタルで、CellulaREvolutionへの出資について次のように述べている。
「世界で高まる食料ニーズを満たすため、彼らの取り組みは培養肉を工業畜産に代わる現実的、実行可能かつ魅力的なものにするために極めて重要です」。
コストダウンに取り組む世界の培養肉スタートアップ

出典:CellulaREvolution
CellulaREvolutionのほかにも、培養肉のコストダウンに取り組むスタートアップが増えている。
イスラエルのFuture Meatは今月、ハイブリッド鶏肉の生産コストを約780円/約113gまで削減したことを発表した。
アメリカのCulture Biosciencesは各スタートアップが初期投資をかけずにいちはやく研究を開始できるように、AWSのバイオ版ともいえるクラウドでバイオリアクターを使えるサービスを提供している。
New Age Meatsは自動化とデータサイエンスを活用して培養肉の製造期間短縮、コストダウンを追求する。今月に約2.1億円を調達した。

イート・ジャストの培養チキン 出典:イート・ジャスト
2020年の終わりには米イート・ジャストが世界に先駆けて、シンガポールで培養肉の販売許可を取得している。
今年になってわずか2ヵ月弱の間に、資金調達を実施した培養肉企業はVow、Novameat、BlueNalu、BioTech、Mirai Foods、Future Meat、Hoxton Farms、New Age Meatsと8社あり、勢いが続いている。
先日にはイスラエルの培養肉企業Meat-Techがナスダック市場へのIPOを申請した。
イート・ジャストに続く培養肉のブレイクスルーが今年また起こる可能性がある。
参考記事
CellulaREvolution Raises £1M for its Continuous Cell Culture Technology
CellulaREvolution Bags US$1.37 Million To Scale Continuous Cell Culturing Tech System
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アイキャッチ画像の出典:CellulaREvolution
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