アップサイクル

韓国企業Zikooinは廃棄される穀物を使って代替肉Unlimeatを開発

 

韓国のスタートアップ企業Zikooinは、ユニークな方法で代替牛肉Unlimeatを開発している。

他社と異なるのは、代替肉の原料に廃棄される穀物を使用していること。

Zikooinは余った植物原料を使って、代替肉のなかでも牛肉の薄切り肉を開発している。

このように、そのままであれば捨てられるものに、新しい付加価値を与え、生まれ変わらせることをアップサイクルという。

食料廃棄物のアップサイクルの市場規模は2019年には467億ドル(約5兆円)となっており、Upcycled Food Associatonなどの協会も誕生している。

アップサイクルで代替肉を開発するZikooin

出典:Zikooin

Zikooinは廃棄される穀物、オーツ麦、ナッツといった原料に植物原料を加え、タンパク質圧縮(protein compression)という特許技術を用いて代替肉Unlimeatを開発している。

独自技術を使うことで、最終製品は牛肉のような食感を備えるものになるという。

プレスリリースによると、代替肉UnlimeatはFDAからすでに承認を得ている。

現在、公式サイトには下記の4商品が掲載されている。

植物肉を無制限に作りたいという想いから、ブランド名Unlimeatが生まれた。

代替肉Unlimeatはコレステロール、トランス脂肪酸を含まず、牛肉に匹敵するタンパク質を含有する。

2020年には第59回モンドセレクションで銅賞を受賞している。

アメリカ・香港に進出済み

出典:Zikooin

現在、Unlimeatは公式サイトで販売されるほか、アメリカ香港でも販売されている。

いずれも2020年に進出し、アメリカではSuper FreshWooltarie USAなどのスーパーで販売されている。4月にはカルフォルニアに拠点を置く高級ネットスーパーのPlomaと提携した。

香港ではグリーンマンデーのビーガンカフェショップGreen CommonKind Kitchenなどで販売されている。

昨年の報道では、シンガポール、台湾、中国に展開予定だとされていたが、まだ情報を確認できていない。アメリカでもほかの小売と交渉を進めており、全米に展開したいと考えている。

 

この投稿をInstagramで見る

 

언리미트 공식 인스타그램(@unlimeatofficial)がシェアした投稿

海外では代替肉企業の多くは、ひき肉、チキンナゲット、ソーセージなどの開発に従事しており、牛薄切り肉に取り組む企業は多くない。

また、最近開発が盛んな培養肉でも、ステーキ肉などのブロック肉や3Dプリント肉に取り組む企業のニュースが目立つが、薄切り肉は主流ではない。

現在は、日本にもネクストミーツのように植物ベースの薄切り肉を開発している企業が登場しているが、Unlimeatがアメリカに参入した2020年1月の時点では今より競合は少なかった。

市場に競合があふれる前に一足早く参入したことは、Zikooinにとって賢明かつ先行者優位を得られる戦略だったといえる。

フードテックのトレンドの1つとなるアップサイクル

Zikooinのようにそのままでは捨てられる原料を使ってアップサイクルに取り組む企業は増えつつある。

デンマークのKaffe Buenoは使用済みのコーヒー粕を使って、タンパク質粉末や化粧品原料を開発している。

ベルギーのEverGrainは廃棄される大麦から代替タンパク質を開発。原料には、世界最大の醸造企業アンハイザー・ブッシュ・インベブで廃棄される大麦粕を使用している。

ポーランドのNapiFerynがなたね油の粕から作るタンパク質粉末は、アイスクリーム、パン、ケーキなどに使うことができる。

出典:Zikooin

さらに、スピルリナ由来の食用着色剤を開発する過程で生じた大量の藻類タンパク質を使って、新しいヘムを開発する企業Back of the Yards Algae Sciences(BYAS)もある。

ヘムは代替肉の代表格インポッシブルフーズが開発したコアとなる物資であり、BYASの新しいヘムは、既存の植物肉をより本物の肉に近づけ、ゲームチェンジを起こす可能性があると注目される。

廃棄パンを活用してクラフトビールを開発する香港大学生が始めたスタートアップもある。

Zikooinはソウルを拠点とする韓国スタートアップで、2017年に設立された。

最新の資金調達は2020年10月で、シリーズAラウンドで130万ドルを調達している。このラウンドにはカリフォルニアを拠点とするベンチャーキャピタルPrimer Sazze Partnersが参加した。

Zikooinの代替肉は、捨てられていたはずの原料を使うためフードロス削減に貢献するだけでなく、それを使って新しい代替肉を作りだしている点で、畜産による環境負荷を軽減するほか、意識の高い層に働きかける訴求効果が高いと思われる。

参考記事

Unlimeat: Korean Plant-Based Beef Made From Upcycled Grains Launches In Hong Kong

Unlimeat, a Beef Alternative from South Korea, to Launch in U.S. Market

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Zikooin

 

関連記事

  1. 【世界初】The EVERY Companyが動物由来の卵と同等…
  2. 植物食品のゲームチェンジ:Motif FoodWorksが植物性…
  3. Oshiのホールカットの植物サーモン、ニューヨークで発売
  4. コーヒーかすを油脂に変換|英Revive Eco、廃棄物から持続…
  5. オーストリアのFermify、精密発酵カゼインで米国GRAS自己…
  6. 『ミート・ザ・フューチャー~培養肉で変わる未来の食卓~』が6月9…
  7. 微生物発酵で飲食用のアニマルフリーなコラーゲンを開発する米Gel…
  8. 米The Better Meat Co.がマイコプロテインに対し…

おすすめ記事

Future Fieldsが約15億円を調達、ショウジョウバエで培養肉、医薬品のバイオものづくりを加速

カナダ企業Future Fieldsは培養肉や医薬品業界向けの成長因子の生産に、…

微生物発酵でシーフードを開発するAqua Cultured Foods、2022年の市場投入を目指す

アメリカを拠点とするAqua Cultured Foodsは、微生物発酵技術によ…

イート・ジャストがシンガポールにアジア初の生産拠点を建設、培養肉の協業も

植物性代替卵のイート・ジャストがアジア進出拡大に乗り出した。投資機関Pr…

米Reel Foods、初の培養魚試作品を発表|組織工学を活かした培養魚開発

アメリカのスタートアップ企業Reel Foodsが、同社初の培養白身魚の試作品を…

北里大学、ニホンウナギの筋芽細胞株の樹立に成功|持続可能なウナギ供給に向けた重要な一歩

2024年10月15日 査読情報に掲載された旨を追記北里大学海洋生命科学…

植物性チキンナゲットのNowadaysが事業を停止

植物性チキンナゲットを製造販売する米Nowadaysが事業を停止したことが明らか…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

魚ビジネスEXPO2025

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(02/13 14:40時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(02/14 00:18時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(02/13 04:16時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(02/13 20:38時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(02/13 12:45時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(02/13 23:35時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP