培養肉

培養肉企業モサミートがシリーズBを約89億円でクローズ

 

オランダの培養肉スタートアップ企業モサミート(Mosa Meat)が新たに1000万ドル(約10億円)を調達し、8500万ドル(約89億円)の調達額でシリーズBをクローズした。

これは昨年9月の約58億円、12月の約20億円に続くもので、モサミートがこれまでに調達した総額は9600万ドル(約101億円)になる。

このラウンドはBlue Horizon Venturesが主導し、Nutrecoのほか新たにJust Eat TakeawayのCEOであるJitse Groen氏が参加した。

12月のラウンドには日本の三菱商事も参加していた。

モサミートは調達した資金で、マーストリヒトにあるパイロット生産施設を拡大し、工業規模の生産ラインを構築するほか、チームも拡充して培養肉を消費者に届けたいとしている。

新しい食肉供給源となる培養肉

出典:Internet of Animal Health Things (IoAHT) Opportunities and Challenges

FAOによると、肉の世界的な需要は増加し続け、2050年には2005年の2倍になると予想される。

現在、地球全体で人が住める土地の半分が農業に使用されており、農業用地の77%は家畜飼育に使用されている。

しかし、家畜由来のタンパク質は全タンパク質供給のわずか約4割弱にすぎない。

2050年には世界人口が97億人に達する(現在は77億人)と予想され、増加の一途をたどる人類の食のニーズを現在の畜産で満たすには限界がある。畜産が環境にもたらす影響も無視できない。

解決策として注目されるのが、動物を殺さない代替肉だ。

代替肉には主に、植物を原料にするものと、細胞培養で本物の肉をつくり出すものの2種類があるが、ヴィーガンだけでなく肉愛好者たちが満足できる代替肉として培養肉が注目される。

オックスフォード大学の研究論文によると、細胞ベースの培養肉は畜産肉よりも排出する温室効果ガスを78-96%削減できるほか、使用する土地・水は畜産肉と比べてそれぞれ99%、82-96%少なくすむ

培養肉は温室効果ガスの排出量を大幅に減らし、気候変動を食い止め、かつ、高まる食肉のニーズを満たすものとして、これまでになく必要性が訴えられている。

0.5gの生検から8万個のバーガーを生み出す培養肉

出典:モサミート

モサミートは2013年に培養肉ハンバーガーを発表して話題を呼んだオランダのスタートアップ企業。

他社と同様、牛から採取した細胞をバイオリアクターで培養して肉にする。

動物の筋肉から生検を採取し、衛星細胞(筋線維に存在する筋肉の幹細胞)をバイオリアクターで培養する。

モサミートによると、牛から採取した0.5gの検体で、8万個のバーガーを作ることができるという。

マーク・ポスト教授が発表したこのハンバーガーは、当時3500万円もするものだった。

約3500万円するバーガーを発表するマーク・ポスト教授 出典:Mosa Meat

同社は2019年、生産コストを1/88に削減することに成功

コストダウンの秘訣は、培養肉の生産で最もコストがかかるとされるウシ胎児血清(FBS)を培地から除去することにあった。

出典:モサミート

FBSは生まれていない子牛を使うため、動物を殺さない生産方法と言いながらも倫理的に問題とされる。

現在も、世界中の培養肉スタートアップがFBSを使わない培地の開発に注力している。生産コスト削減に取り組む同社にとってもFBSの除去は最優先事項であり、培地からFBSを取り除き、大幅なコストダウンに成功した。

次の課題は、大量生産を可能とする生産システムの構築となる。

今年前半に欧州で承認申請の予定

モサミートのチーム(一部) 出典:モサミート

モサミートは現在、欧州規制当局への承認申請の準備を進めている。

昨年の報道では、今年前半に承認申請を開始し、2022年の終わりまでには市場に投入したいとしていた。

承認申請をすぐに始めない理由として、本格的な承認申請を始める前に、動物を全く使わない増殖培地を使って良い結果を出したいと考えていることをあげていた。

ポスト教授は欧州で許認可を取得するには1年半かかるとみている

白熱化する培養肉市場

出典:モサミート

今回の発表では承認申請の進捗についてふれられていなかったが、培養肉を取り巻く状況は確実に前進している

モサミートのほかにも世界で牛、豚、鶏などの家畜肉に取り組む培養肉企業は60社以上あり、このなかで唯一販売許可を取得しているのがアメリカのイート・ジャストとなる。

同社は2020年の終わりに、世界で初めてシンガポールで培養肉の販売許可を取得した。

イート・ジャストの快挙に続こうとする企業の中には、コストダウンと量産に注力する企業もある。

イスラエルのFuture Meatは今月、培養ハイブリッド鶏肉の生産コストを約780円/約113gまで削減したことを発表、2022年に市販化を目指している。

New Age Meatsは自動化とデータサイエンスを活用して培養肉の製造期間短縮、コストダウンを追求する。今月には約2.1億円を調達している。

イスラエルのアレフ・ファームズは世界で初めて生きた細胞の3Dプリントによる培養リブロース肉の開発に成功。同社は三菱商事と提携し、来年にはアジアで培養肉を販売したいとしている。

住友商事が出資する培養魚のBlueNaluは先月約62億円の出資をうけた。今年パイロット工場を完成し、今年後半にはアメリカのレストランなどでテスト販売する予定でいる。

香港発の培養魚企業Avant Meatsは昨年、約3億2千万円を調達し、今年中の市販化を目指している。

MarketsandMarketsのレポートによると、培養肉市場は2025年に2億1400万ドル、2032年には5億9300万ドルになると予想される。

この成長を後押しする1つの要因に、高まる投資熱をあげられる。

2021年になってからわずか2ヵ月弱で、出資を受けた培養肉企業はモサミートを含めて10社以上

2020年には30名だったモサミートのメンバーは、現在は62名まで増えている。

次の目標は、許認可を取得することと、量産を実現すること。

マーク・ポスト氏(左)とピーター・ベストラテ氏(右) 出典:モサミート

モサミート社内には、プロセスの自動化とスケールアップに取り組むさまざまなバックグラウンドをもつエンジニアからなるチームがあり、いちはやく市場に投入するために研究者と共同で研究を続けている。

モサミートはマーストリヒト大学血管生理学の教授であり、アイントホーフェン工科大学で組織工学における血管新生の教授を務めるマーク・ポスト氏と、食品科学の修士号を持ち、食肉産業で20年以上の経験を有するPeter Verstrate氏が共同で2016年に設立した。

 

参考記事

Mosa Meat completes $85m Series B investment round

Mosa Meat raises $10M to scale cell-based meat

 

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アイキャッチ画像の出典:モサミート

 

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