シリコンバレーを拠点とする細胞農業スタートアップのMission BarnsがシリーズAで2400万ドル(約26億円)を調達した。
調達した資金で、培養脂肪の生産を拡大し、サンフランシスコベイエリアにパイロット工場を建設する。
植物肉の欠点を補う培養脂肪
Mission Barnsは牛、豚、鶏から採取した細胞に、ビタミン、砂糖など栄養となる植物性原料を加え、バイオリアクターで培養して脂肪を作る。
こうして作られる培養脂肪は、口当たり、風味ともに動物由来の脂肪そっくりなだけでなく、畜産と比べて使用する土地、水、排出される温室効果ガスがはるかに少ない。
市場にはすでに多種多様な植物肉があるが、植物肉の欠点として指摘されるのが、風味、食感、肉らしさ。
本物の動物肉に劣るために、植物肉の購入をためらう消費者もいる。
そこで、植物肉を「本物に近づける」ために、Mission Barnsは培養脂肪の開発に取り組んでいる。
同社の培養脂肪「Mission Fat」はまず、植物肉に組み込むものとして商用化される。
「Mission Fatを植物性タンパク質に加えると、どのカテゴリーの代替肉も現在の植物食品をはるかに上回るものになることを何度も目の当たりにしました」(CEOのEitan Fischer氏)
同社は独自に、または他社の食肉企業や植物性タンパク質企業と協業して「Mission Fat」を組み込んださまざまな製品を開発してきた。
これまでにベーコン、パテ、バーガー、ナゲット、ソーセージ、ミートボールなどを開発している。
昨年にはサンフランシスコのレストラン外で細胞培養によるベーコンの試食会を実施している。
2023年には植物肉が動物肉と同等レベルに
植物肉のアップデートを視野において代替脂肪の開発に取り組む企業は増えている。
酵母発酵により動物と同じ脂肪を開発するオーストラリアのNourish Ingredientsは先月、初ラウンドで約12億円を調達した。同社は香港大富豪李嘉誠氏が率いる香港のベンチャーキャピタルHorizons Venturesから出資を受けている。
イギリスのHoxton Farmsは細胞培養による培養脂肪の開発に取り組む。同社も今年になってから約4億円を調達した。
合成生物学のバイオテック企業Ginkgo BioworksのスピンオフベンチャーであるMotif Foodworksは、植物ベースの脂肪を開発している。
最新のレポートによると、2023年には植物性タンパク質は味、食感、価格の3点で動物性タンパク質と同等レベルに達すると予想されている。
こうした背景には、Mission BarnsやNourish Ingredientsなど、植物肉をアップデートさせる技術開発に取り組む企業が増えていることがあげられる。
今回のラウンドにはLever VC、Gullspang Re:Food、Humboldt Fund、Green Monday Ventures、Enfini Venturesが参加した。
ラウンドに参加したLever VCはプレスリリースで次のように述べている。
「私は20年間、世界中のさまざまな植物肉を試食してきましたが、Mission Fatを含む製品ほど肉のようなものを味わったことはありません。
これは代替肉セクターにとってゲームチェンジャーになるものでしょう。
世界中のブランドがほぼ一夜にして劇的に優れた製品を手にするのを助けるわけですから」
Mission Barnsは2018年にカリフォルニアに設立された培養肉スタートアップ。
これまでの調達総額は2820万ドル(約30億円)となる。
参考記事
Cell Ag Startup Mission Barns Raises $24M for its Cultivated Fat
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アイキャッチ画像の出典:Mission Barns