カリフォルニアを拠点とする精密発酵企業Yali Bioは、サンフランシスコで今月開催されたMISTA Growth Hackイベントで、精密発酵で生成した代替乳脂肪を発表した。
Yali Bioは、AAK、Ingredion、GivaudanなどのMISTA支援者の協力を得て、デモ用アイスクリームを開発した。Foovoの認識では、Yali Bioが自社の精密発酵脂肪を使用した製品を対外的に発表するのはこれが初。
同社によると、固体脂肪を使用したアイスクリームは1時間以内に提供終了となったという。
Yali Bio 創業者兼CEO(最高経営責任者)のYulin Lu氏は、「アイスクリームが好評なのも嬉しかったですが、多くの方から、特に味や食感を褒めていただけたことがとても嬉しかったです。同じ肯定的なフィードバックを何度もいただきました」と述べている。
同社は次のステップとして、競争上の優位性を求めるパートナー企業と共に、精密発酵脂肪の市場展開を目指す。
精密発酵で脂肪開発に取り組むYali Bio
2021年設立のYali Bioはアイスクリーム、バター、チーズなど、特に乳製品の味、食感を高める脂肪の開発に取り組んでいる。
公式サイトによると、Yali Bioは再生可能な炭素原料から原料を入手し、精密発酵を使用して特別な脂質と脂肪に変換する。同社プロセスにより、特定の目的に合わせて、ほぼ制限なく脂肪を設計することができるという。
Yali Bioの脂肪は、淡いバターのような色とニュートラルな風味を持つ。自社の精密発酵技術により、融点など脂肪のさまざまな品質を特定の用途に「完全に適合するよう調整できる」という。
そのため、アイスクリームだけでなく、バター、チーズ、焼き菓子、キャンディーなどさまざまな食品の味、食感、性能の向上に使用できるとしている。
乳製品・植物油脂よりも持続可能な代替脂肪
Yali Bioの脂肪は、ココナッツオイルと比較して、身体に悪いとされる飽和脂肪を半分、コレステロールを下げるなど身体に良いとされる一価不飽和脂肪を5倍含んでいる。
ココナッツオイルは植物肉でも広く使用されている植物油脂だが、生産の7割以上をフィリピン・インドネシアに依存していること、土地利用効率の悪さから、持続可能な選択肢とは言い難い。また、世界への輸送に伴う二酸化炭素排出量、収穫に関連した人間・動物福祉の問題も見過ごせないとYali Bioは指摘している。
代替脂肪開発に取り組むスタートアップは30社以上
Grey Silo Venturesは今年1月に発表した記事「Fat Revolution is coming(脂肪革命の到来)」のなかで、「現在の代替脂肪に対する欧州の投資は代替タンパク質と比べて依然と低いものの、代替脂肪企業は資金調達、商業的な魅力いずれの点でも、今後数年間に強烈な成長を遂げると信じています」と述べている。
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アイキャッチ画像の出典:Yali Bio