代替プロテイン

イスラエルのMeaTechが新たに培養豚肉の開発始動を発表

 

3Dプリンターを活用して培養肉を開発するイスラエル企業MeaTechが、培養豚肉を大量生産するための研究開発を始動したことを発表した。

MeaTechはすでに牛肉、鶏肉の細胞株を開発しているが、新たに豚肉の細胞株開発にも着手する。

プレスリリースでMeaTechは、豚肉は世界で最も消費される動物肉であり、アメリカだけでも年間200億ドルの市場価値があることに言及。

同社が豚肉も生産できるようになると、牛肉、鶏肉に特化する他社培養肉との差別化ポイントとなり、対応可能な市場が拡大されることを意味する。

培養肉の開発で不可欠な「細胞株」

MeaTechは研究開発の初期では、安定した豚肉細胞株の開発に焦点をあてる。細胞株の開発後は、培養豚肉の生産をスタートする予定。

培養肉の開発では、細胞を培養して増殖するため、細胞が不可欠となる。しかし、細胞は一般に何回か分裂を繰り返すと、分裂を止め、死滅する。

これに対し、死滅することなく、無限に増殖できる状態を不死化といい、不死化した細胞のことを「細胞株」と呼ぶ。

出典:MeaTech

種がなければ目的の野菜を育てられないように、培養肉の開発においても、種となる「細胞株」の開発は重要な工程となる。

しかし、新しい細胞株の開発は、時間とリソースを要し、6ヵ月~1年半かかることが多い

培養肉の開発ではさまざまな細胞株が使用されているが、利用のしやすさ、どの細胞株を選別するか、細胞株の特性が開発の下流工程にどう影響するかを判断するために、さらなる研究が必要だとGFIは指摘している。

目指すのは、培養肉の工業的量産

MeaTechはナスダックテルアビブ証券取引所にMITCとして上場している、主要な培養肉企業。

イスラエルのネスジオア、ベルギーのアントワープに拠点を構える同社は、牛肉、鶏肉、豚肉など幅広い培養肉の開発に取り組むほか、植物肉をアップデートさせる培養脂肪の生産にも取り組んでおり、5月には培養脂肪の実証プラント建設を発表した。

出典:MeaTech

長期的にはバイオ3Dプリンターによるステーキなどブロック肉の開発も視野にいれているが、食品加工業者や食品ブランドなど肉のサプライチェーンにいるクライアントに培養肉生産技術をライセンス供与したいと考えており、培養肉の工業的量産の実現を目指している

CEOのSharon Fima氏はプレスリリースで次のようにコメントしている。

「当社の目標は、明日の肉を安全で、豊富に、持続可能なものにすることで、今後の農業革命をリードすることです。

MeaTechは、従来の工業畜産に代わる可能性のある培養肉技術を幅広く開発しており、その対象は牛肉、鶏肉、今では豚肉にまで及びます。

培養肉の製品ラインを追加することで、対応可能な市場を拡大し、さらに収益を生み出すことができます。

私たちの目標は、畜産で生産された豚肉とすべての点で同じでありながら、はるかにサステイナブルで、屠殺のない生産方法を提供することです」

(Sharon Fima氏)

豚肉は世界で最も消費されている動物肉だが、培養肉企業の多くは、牛肉や鶏肉に注力している。

現在、豚肉を開発対象としている企業には、Ivy FarmMeatableNew Age MeatsFuture Meatなどがいる。

これまでに培養肉を販売したのは、アメリカのイート・ジャストのみ。同社は2020年12月にシンガポールのレストランで培養肉料理を販売した。

イート・ジャストに続こうと、Future MeatUPSIDE Foods(旧メンフィス・ミーツ)など、アメリカでの許認可取得に向けて取り組みを進めている企業もいる。

 

参考記事

MeaTech Announces Launch of Cultivated Pork Development

MeaTech Says It Will Develop Cultured Pork Products

JCRB細胞バンク『組織の採取』と『細胞の培養』

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:MeaTech

 

関連記事

  1. Orbillion Bio、欧州35ヵ国への培養牛肉販売に向けて…
  2. ファーストフードチェーンChipotleが代替油脂を開発する米Z…
  3. イスラエル大手食品会社Tnuva、代替タンパク質特化のR&Dセン…
  4. アニマルフリーなチーズを作るChange Foodsが約2.3憶…
  5. 菌糸体由来肉のMeati Foodsが全米で販売開始、Sprou…
  6. GEAが代替タンパク質の技術センターをドイツに開設
  7. 発酵技術で代替シーフードに挑むAqua Cultured Foo…
  8. Avant Meatsが中国バイオ医薬品企業QuaCellと提携…

精密発酵レポート好評販売中

おすすめ記事

ひよこ豆タンパク質粉末を開発するChickPが約9億円を調達

ひよこ豆を原料にタンパク質粉末の開発に注力するイスラエル企業ChickPが、シリ…

菌糸体からベーコンを開発する米MyForest Foods、年産約1300トンの新工場を開設

菌糸体を使って代替ベーコンを開発する米MyForest Foodsは先月、新工場…

菌糸体からステーキ肉を開発するMeati Foodsが約55億円を調達、2022年に商品の販売へ

菌糸体からブロック肉を開発する米Meati Foodsが、シリーズBで5000万…

培養魚レポート・販売開始のお知らせ

2024年最新版は3月13日に発売しました。培養…

菌糸体ベーコンを開発するAtlast Foodが社名をMyForest Foodsに変更、今秋に2工場を開設

菌糸体由来の代替肉を開発するアメリカ企業Atlast Foodは25日、社名変更…

培養魚スタートアップのFinless Foodsが植物性マグロにも参入、2022年までに市販化へ

培養魚を開発するアメリカのFinless Foodsが、植物性代替マグロに参入す…

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

精密発酵レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

▼運営者・佐藤あゆみ▼

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,671円(04/24 12:13時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(04/24 21:31時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(04/25 01:02時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(04/24 18:04時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(04/24 10:47時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(04/24 21:01時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP