代替プロテイン

3D Bio-Tissuesが植物性足場を使用しない培養ステーキ豚肉の開発に成功

 

イギリスの培養肉スタートアップ3D Bio-Tissuesは、100%の培養ステーキ豚肉の開発に成功したことを発表した。

イスラエルのアレフ・ファームズなどこれまでにも培養ステーキ肉の開発を発表した企業は確認されているが、3D Bio-Tissuesは、生産プロセスで植物性の足場を使用しないことが他社との違いだと主張している。

3D Bio-Tissuesによると、培養豚肉に取り組む企業は多数登場しているものの、その多くはひき肉を開発しており、培養豚ヒレ肉を開発したのは同社が初になるという。

植物性足場を使用しない構造化された培養ステーキ豚肉

出典:3D Bio-Tissues

ニューカッスル大学からスピンオフされた3D Bio-Tissuesは、2019年にChe Connon教授Ricardo Gouveia博士によって設立された。

同社は昨年11月、特許取得済みの無血清培地City-mix使用して、植物性足場を使用せずに3つの小さな培養肉プロトタイプの開発に成功した

そして今回、植物性足場を使用せずに、豚細胞を使用して「世界初」の100%培養ステーキ豚肉が開発された。

再生医療技術を横展開した培養肉開発

出典:3D Bio-Tissues

Connon教授はFoodnavigatorのインタビューに対し、ミートボールやミンチ肉のように構造化されていない培養肉とは対照的に、3D Bio-Tissuesの培養肉は、切り身全体を作製できる「構造化された製品」である点が異なると主張している。

このブレイクスルーを可能とした背景として、3D Bio-Tissuesが角膜を生産する組織工学の技術基盤を有していることがあげられる。同社は、角膜など人間の器官を作るのと同じプロセスで、足場を使用しない構造化された培養肉を作製できたとしている。

今回発表された培養ステーキ豚肉は幅9cm、長さ4cm、高さ1cmのサイズで、「まさに従来のポークステーキ」のようだという。

培養肉に加え皮革の開発も

出典:3D Bio-Tissues

同社によると、培養豚ヒレ肉は生の状態で肉繊維を確認でき、弾力性、色では構造的に従来の肉と同様だったという。焼く過程では、従来の豚肉と同様の風味、収縮、焦げ目、カリカリ感などが確認されたという

Foodnavigatorの報道によると、3D Bio-Tissuesの培養豚ヒレ肉の生産期間は1ヶ月となる

3D Bio-Tissuesは培養肉の販売に関心のある食品メーカーやスーパーマーケットとの協業に向けて取り組んでいる。ブランド製品の展開に注力するのではなく、培養肉企業に向けて技術や培地を提供したいと考えている。

同社はまた、皮膚細胞を使用することで、ファッション業界に向けた皮革も開発できるとしている。

 

参考記事

3DBT Says it Has Developed the First Truly 100% Cultivated Meat Steak. Here’s Why.

Behind the ‘world’s first 100% cultivated pork steak’

The First Cultivated Pork Filet Debuts In the U.K.

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:3D Bio-Tissues

 

関連記事

  1. 【2024年】培養魚企業レポート販売開始のお知らせ
  2. 【世界初】TurtleTreeが精密発酵ウシラクトフェリンでGR…
  3. 米Liberation Labs、Viviciと製造パートナーシ…
  4. シンガポールの研究チームがウナギ細胞株と植物血清の開発に成功
  5. 米Upside Foods、水面下で培養甲殻類の特許出願──Cu…
  6. 連続細胞培養技術を開発する英CellulaREvolutionが…
  7. 英Multus Biotechnologyが約12億円を調達、増…
  8. 培養細胞を原料とする食品、「細胞性食品」を基本名称に──「培養」…

おすすめ記事

電気で塩味を強化|キリンが「エレキソルト カップ」新発売、減塩スープで試してみた

新発売された「エレキソルト カップ」(左)とリニューアルされた「エレキソルト スプーン」(右)F…

Aleph Farmsと三菱商事が日本での培養肉導入に向けて協業

イスラエルの培養肉スタートアップAleph Farms(アレフファームズ)と三菱…

ドイツの培養脂肪Cultimate Foodsが約1億円を調達、植物肉用の脂肪提供を目指す

ドイツを拠点とする培養脂肪スタートアップのCultimate Foodsがプレシ…

イスラエルのDairyX、精密発酵技術で自己組織化するカゼインミセルの生産方法を開発

2022年に設立されたイスラエルのスタートアップ企業DairyXは今月、精密発酵…

米と麹で“食”と“エネルギー”問題の解決へ──アグロルーデンスが挑む、米の新たな価値創出【セミナーレポート】

入本慶宣氏(Foovo佐藤撮影)日本の伝統技術である「麹」を用いて、新たな発酵タンパクの国産化に…

植物性ハチミツの米MeliBioをスイスのFoodYoung Labsが買収──精密発酵技術は買収対象外

2025年5月30日更新ミツバチに依存しないハチミツを開発する米MeliBioが、スイスの食…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(10/05 16:04時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(10/06 02:28時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(10/06 06:06時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(10/05 22:04時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,980円(10/05 14:02時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(10/06 01:20時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP