バイオ3Dプリンターで培養肉を開発するイスラエルのMeaTechは、3Dプリンターによる培養シーフードの共同開発でシンガポールのUmami Meatsと基本合意書(MOU)を締結したことを発表した。
Umami Meatsは、気候危機、乱獲、消費者需要の継続的な高まりにより供給不足が懸念されるシーフードを細胞培養で開発する企業として2020年に設立された。具体的にはニホンウナギ、キハダマグロ、タイの3種を開発しており、今年3月にプレシードラウンドで240万ドル(当時:約2億7000万円)を調達している。
MeaTechが培養シーフードのUmami Meatsと協業
MeaTechとUmami Meatsの協業は、二社のアジア市場、特に、現時点で培養肉の製造販売を唯一認可しているシンガポール市場への参入に弾みをつけるものとなる。
プレスリリースによると今回の合意は、代替タンパク質分野で他社プレーヤーと協力し、多種多様な種の開発、3Dプリントに自社の技術的な柔軟性を利用するというMeaTechの戦略の1つとなる。
MeaTechはUmami Meatsとの協業により、開発中の牛、豚、鶏製品のポートフォリオにシーフードを追加できるようになる。
Umami Meatsにとっては、MeaTechの「産業用の生産速度でピンポイントに複雑な肉製品を生産できる革新的なバイオ3Dプリンティング技術」を活用することで、構造化された培養シーフード製品の改良につなげられると考えられる。
MeaTechは自社ブランドの構築よりも、培養肉の工業的な量産に焦点をあててきた。バイオ3Dプリンティングを組み合わせた培養肉生産プロセスで他社とライセンス契約を結び、他社をサポートしたいとの考えを示しており、Umami Meatsとの協業はそうしたMeaTechの最終的なゴールへの第一歩だと考えられる。
培養肉業界では今回のような協業がほかにも報告されている。
ドイツの培養シーフードBluu Seafoodは4月、3Dプリンターを使って培養豚肉を開発する中国のCellXと戦略的パートナーシップを結んでいる。二社は、原材料の調達、生産施設の建設、販売パートナーなどバリューチェーン全体で互いをサポートしていくことを計画している。
欧州のパイロット工場は来年スケールアップ生産を開始
MeaTechはアジア市場のほか、欧州でも上市に向けた準備を進めている。
同社子会社のPeace of Meatは今月、安定した独自の鳥類細胞株を樹立したことを発表した。Peace of Meatは生産プロセスでマイクロキャリアを使わずに培養肉製品を開発する企業であり、2021年には培養鶏脂の生産に成功している。
Peace of Meatはベルギーに研究施設を併設したパイロット工場を建設予定で、2023年にはスケールアップを開始する予定だという。
今年5月には、マイコプロテインのENOUGHと培養ハイブリッド肉の共同開発で提携している。ENOUGHのほかにも、食肉メーカーや代替タンパク質企業との協業を通じた培養ハイブリッド製品の上市を目指している。
欧州での認可取得には時間がかかると予想されることから、今回のUmami Meatsとの協業により、MeaTechがアジア市場への参入を一足先に実現しようとしているのは間違いないだろう。同社はアジアに焦点をあてた培養肉コンソーシアム「APAC-SCA」にも参画しており、アジアにおける培養肉のルール形成の促進にも関与している。
MeaTech創業者兼CEOのArik Kaufman氏は「シーフード部門に参入することを嬉しく思います。これによって、アジア全体さらには世界中の新たな市場へ参入する道が開かれるでしょう」とコメントしている。
参考記事
MeaTech 3D Announces Collaboration with Umami Meats, a Singaporean Cultured Seafood Company
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アイキャッチ画像の出典:Umami Meats