地球が直面する食料危機、気候変動に対応するため、世界中で研究開発が進む培養肉。
培養肉は、温室効果ガス、土地・水の集約利用、動物感染症など、畜産が抱える問題の解決に寄与すると期待されており、100社以上の培養肉企業が設立されている。世界で唯一販売が認められているシンガポールでは、2020年末より一部のレストランで培養肉が提供されている。
動物を犠牲にしない未来の食として期待される培養肉だが、動物細胞を培養して肉を作る新しい方法に対して不安を感じる人々もいるだろう。そんな人におすすめしたいのが、2023年6月9日より公開される映画『ミート・ザ・フューチャー』(原題:Meat the Future)だ。
心臓専門医として活躍していたウマ・ヴァレティ博士が、子供のころから抱いていた食肉生産への疑問を拭えず、医師としてのキャリアを手放し、アップサイド・フーズ(Upside Foods)というベンチャー企業を立ち上げ、食料システムの改革に挑む歩みを、創業当初から追ったドキュメンタリーだ。
ヴァレティ博士と彼のチームに5年間密着し、1ポンド18,000ドルの世界初の培養ミートボール発表から、培養肉の商用化を目指すアップサイドの歩みを詳細に描いている。
なぜ培養肉を開発するのか。味や食感をどこまで改善できているのか。安全性に問題はないのか。表示をどうするのか。何が使用されているのか。消費者は受け入れるのか。培養肉に漠然とした不安を感じる人が見れば、理解を深められる内容になっている。
製品をまだ販売していない小さな会社が、米国で食品を管轄するFDAとUSDAによる公聴会開催を実現するなど、業界関係者とともに丁寧に議論を重ねてきたことがうかがえる。
培養肉に期待を寄せる人が見れば、差し迫る未来の食への興奮で鳥肌が立つだろう。
ドキュメンタリーが追ったのは、2020年まで。映画のなかで課題として言及されていた動物成分の除去や、建設中の工場は、すでに現実のものになっている。培養肉を知る人にも、知らない人にとっても、開発の初期から振り返ることのできる貴重な作品だ。
『ミート・ザ・フューチャー』はYEBISU GARDEN CINEMA、アップリンク吉祥寺で6月9日より上映される。
関連記事
アイキャッチ画像の出典:meatthefuture.com